第2話 輪廻転生 前世の記憶を持ったまま、聖女になれってどういう事?
「ゲーム?」
思わず私は聞き返してしまっていた。
だって今『次の転生先に乙女ゲームの世界はどうですか?』と聞こえてきた。
『ゲームと言っても、本当の世界ですよ。乙女ゲームの中には、私たちが関わっている物があります。主に瘴気が濃くなった世界に、聖女を召喚する為なのですが』
「はぁ」
『今回もこの乙女ゲーム『聖なる乙女の伝説 ~いにしえの竜魔王との戦い~』をプレイしている女性を召喚しようとして、うっかり違う女性を召喚してしまって』
「良いんじゃないですか? ああ、良くは無いか……気の毒ですね。間違えてだなんて」
光の玉は、沈痛な面持ち(多分)になっている。
『女性の方は、召喚後も嬉々として行動してますが』
「なら良かったのでは?」
『本来なら、誤差の範囲で女神の祝福を受ければ聖女を務められるのですが、彼女はいじめっ子なのですよ。性格がものすごく悪い、中学時代には彼女のせいで自殺者も出たくらいですからね』
あらま、それはそれは……。
『ですから当然、女神の祝福を受ける事の出来る聖女の条件は満たしてませんし、本来地獄行だった彼女がなんであの世界にいるんだと叱られまして』
「まぁ、そうでしょうね」
自殺者まで出すような性格の悪い『聖女』なんて。
というか、光の玉を叱る人(?)がいるんだ。
『そこで、あなたです』
「へ?」
『夫と政略結婚させられて妾の面倒まで見て、立派に本妻としての役割を果たしただけでなく。戦後の混乱期には、孤児の面倒まで……』
いやな予感。
『ぜひ、間違って召喚されてしまった主人公を排除し、あの世界の救世主になってください』
「いや、排除って……」
『して頂かないと、あの世界が滅びてしまいます。……ああ、排除が気に入らないのですね。では、あの国が彼女に取り込まれてしまうようなら、見捨てましょう。単に、瘴気が生まれる場所に一番近い国というだけの位置づけだし、私としては、世界を救って頂ければ良いのですから』
私は何やら呆然としてしまった。だって、次の人生こそのんびりとって……。
『のんびり過ごされて、構いません。あの世界で、聖女として天寿を全うしてくださるだけで良いのですから』
私の心を読むように、光の玉が言ってきた。
『もちろん特典も付けます。聖女の能力、言葉の自動翻訳はもちろん、アイテムボックス。武器への付与魔法。他には……』
「じ……常識ソフトも欲しいです」
私は思わず、言ってしまった。
『わかりました。あの世界のありとあらゆる常識が頭に浮かぶだけでなく。体現出来るようにしましょう。後は乙女ゲームにありがちな、身分制度の緩い世界です。身分の高い方々の中にいても、気負わず過ごしてください』
それでは、良い人生を……。
私はポンと押し出されたように、その白い空間から消えてしまっていた。
ふんわり空間を落ちていく私の頭の中を、乙女ゲーム内での私、マーガレット・レヴァイン公爵令嬢としての16年間が駆け巡る。
政略結婚の相手を、本気で好きになったところなんて私にそっくり。
努力しても報われず、婚約破棄されてしまうのね。
だけどいいじゃない、私の夫は婚約破棄も、離婚もしてくれなかったのだから。
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