第18話 久しぶりの学校
日が昇り朝を迎えた週の始まり月曜日。この日は体がすごく疲れていた。当然と言えば当然だろう…何故なら昨日は紗雪と遊園地デートに行って歩いて乗り物乗ってからかわれて色々と疲れたのだ。
だが蒼は以前無断で学校を休んでしまった為、今日は学校を休まず行くと決めていた。
朝食を終え、歯磨き、洗顔をして制服に着替え準備万端。
蒼はいってきますと母、真弓に挨拶をし学校へと向かった。
慣れ親しんだ登下校の道を一人で歩いていると、後ろからこれまた慣れ親しんだ声が聞こえてきた。
「あぁぁぁおぉぉぉいぃぃぃ!!」
久しぶりの登場、蒼汰だ。改めて説明しよう。
中島蒼汰、彼は蒼の小学生の頃からの幼馴染で蒼の一番の理解者。蒼が本当に心の底から友達も思える人だ。
蒼汰はいつも登下校中に蒼を見かけるとこんな風に名前を呼びながら飛びついてくる。正直恥ずかしい。
久しぶりに蒼汰と会った気がした蒼は少し嬉しかった。恐らく球技大会以降だろう。蒼汰も久しぶりに会った訳か、いつも笑顔だかこの日は特に笑顔が輝いているように見えた。
「よっ!うちのチームの陰の暗躍者、中村蒼君っ♪」
「なんだよその呼び方、球技大会はもう終わっただろ」
いつも通りのくだらない会話で一日が始まる。
蒼と蒼汰は話していると、いつの間にか学校に着いていた。久々の登校だと蒼は心の中で呟く。
教室に行くとワイワイしていた。この日も紗雪の周りには人が集まっていた。やはりいつでも人気者だ。
だが、最近一緒に居たから分かるが、蒼といる時と他のクラスメイトといる時とで蒼は何か違和感を感じた。素を出せているのか出せていないのか…。
まぁ、紗雪のことだから他人がどう思うかは関係ないと思い蒼は自分の席に着く。
蒼汰は美古都と輝かしいオーラを放ちながら楽しそうに話していた。美古都の顔もすごく幸せそうだ。
二人は付き合う前からとても仲が良く、付き合ってからはそれ以上に仲が良くなっている。ラブラブのリア充だ。
“リア充”は蒼にとってはとても遠いモノだ。
だが自分で言うのもあれだが、最近は俺もリア充だったんじゃないかと蒼はピンッと何かを感じた。
よくよく考えるとかなりリアルが充実していた
――リア充だ。
紗雪と過ごした約一週間は他の男子から見たら羨ましいどころでは済まないくらいの贅沢なことだ。
むしろ蒼はリア充の先の高みへ辿り着いていたのかとしれない。
そう一人で心の中で話していると、隣に座る紗雪が話しかけてきた。
「おはよう、蒼君」
「おう、おはようさゆ…ゴホッゴホッ…くっ…白崎さん」
蒼は昨日ずっと下の名前で呼んでいたため、そのまま下の名前で呼びそうになり慌てて咳払いをして誤魔化し普段通り苗字で呼び直した。
紗雪はニヤリと紗雪スマイルを浮かべていた。
恐らく下の名前で呼びそうになって誤魔化した蒼を見て面白がっているのだろう。小悪魔だ。
時刻は八時半を回り、担任の加藤先生が教室に来た。
「皆さん、おはようございます。今日は…全員揃いましたね。先週の振替休日の次の日は白崎さんと中村君が休みだったから心配だったけど、今日は来てくれて嬉しいわ」
蒼と紗雪はおはようございますと会釈をした。
「さて、球技大会も終わり落ち着いた頃だと思っている人もいると思いますが、実は3週間後の今日は三日間に渡る中間テストがあります」
中間テストという言葉を聞いた瞬間、クラスメイトは全く同じタイミングでほぼほぼ全員が同時に大きな溜息とテストに対する嫌悪感を剥き出しにして愚痴をこぼしていた。
蒼はテストはそこまで苦じゃないので軽く頭に入れて済んだ。紗雪もスーッとした表情で聞いていたため、やっぱり頭も良いんだなと蒼は思っていた。
蒼汰は頭を掻きむしりながら全面的に嫌がっていた。そう、蒼汰は顔と運動神経と性格はかなり良い。だが、頭だけは決して良くないのだ。いや、もうバカ正直に言おう、バカなのだ。
そのため、蒼汰は大学進学はスポーツ推薦を第一候補として頭に入れているらしい。蒼汰の部活動での成績ならスポーツ推薦も伊達じゃないだろう。
美古都は頭もそれなりに顔もスタイルも性格も頭もそれなりに良い。だが何故か蒼には中々の毒舌を叩き込んでくる。
頭もそれなりに良いこともあり、美古都も軽く聞いておくといった表情を浮かべていた。
「期間は残り三週間、赤点だけは絶対取らないようにテスト勉強に励んでくださいね。もし、赤点を取ったら……補習が待っていますからね」
加藤先生はニヤつきながら、まるで悪魔のような笑みを仕向けていた。
そして朝の連絡事項等が終わり十分間の休み時間。一時間目は英語だったため、蒼は教科書やノート、参考書に電子辞書を用意しトイレに向かった。
蒼が心地よく放尿していると、蒼汰に続いて三人のクラスメイトがトイレに入ってきた。
蒼は蒼汰と目が合った瞬間、蒼汰が何を訴えてくるかが目に見えた。
「あおいぃぃぃ、頼むから勉強教えてくれぇぇ」
予想的中。蒼汰はいつもテスト前になると蒼に勉強を教えてくれとしがみついてくるのだ。
「分かった分かった、教えるからちょっと離れてくれ。小便ぶっかけるぞ」
蒼汰はすぐさま蒼から離れた。
「サンキューな蒼!お詫びに飯でも奢ってやるよ」
蒼汰はそう言って友人と教室へ戻った。
溜まりに溜まった尿を出し切った蒼も手を洗って寝癖を少し直して教室へ向かった。
――キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン
一時間目のチャイムが鳴り、英語の先生である櫻井先生と、外国人教師のイギリスから来たチャーリーが教室へと入ってきた。
こうして蒼と紗雪の久しぶりの学校生活が再開したのだった。
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