第34話 脱出計画
「おそよう」
「ぐっすり寝ちまったぜ」
家のリビングの丸テーブルでお茶を飲んで一服していた所にビーセスが起きてきた。
「おはよう」
「ジュサも起きてきたな」
「おはよう」
「シャデリーも起きてきたみたいだから、少し今後の事を話し合わないか」
「文句はないさ」
「そうね」
「賛成」
「街の様子を見てきたが、検問が厳しい。スキルを使わせて確認している」
「コミュニティのメンバーが心配だね」
「できるなら助けてあげたいわ」
「私もそう思う」
元はと言えば俺達が教会を襲撃したからなんだよな。
まさか領主が教会に
政教分離は日本の原則なのを忘れていたよ。
異世界に慣れたつもりだったけど、俺もまだまだ甘い。
これは俺達が責任持ってやるべきだよな。
「開拓地を森の奥に作っているから、そこに避難させることはできる」
「住む所はそれでいいさ。食料はどうやって
「とうもろこしヴァンパイアを植える事で一時しのぎだな。後は魔獣の肉しかない」
「あたいも狩りをして差し入れるよ。食えるだけでも贅沢ってもんさ」
「最終的には森の奥の開拓地を要塞都市にして教会と戦争したい」
「壮大な夢ね」
とジュサ。
「夢じゃない必ず実現させる。開拓地に食料を輸送する手はずは
「呪術の出番はなさそうね」
「私の闇魔法もね」
「がっかりしなくて良い。開拓地に気づけば、たぶん街は戦力を蓄えて攻めて来る。活躍の機会は沢山あるよ」
「あー、またミディを仲間はずれにしている」
ミディも起きてきた。
「悪い悪い、起こすのも
「いいもん。ゴーストと遊んでいるから」
「そういえばビーセスは魔獣を殺す事に抵抗はないのか」
「魔獣使いとして魔獣に対する愛とかか。そんなもの、ないに決まっている」
「なんでだ」
「だってあいつら
「そうか、そう言えば俺もアンデッドを道具としてしか見てないな。魔法が切れると死体に戻るからだな」
「その気持ちは分かるよ。
「そうそう、魔法で動かしているっていう」
「深くは考えないことさ。考えると魔法を使うのが嫌になる」
「闇魔法使いには無い感覚ね」
「呪術師にもね」
「ミディ、部屋の隅でいじけてないでこっちへ来い。仕事だ」
「なにっ出番!?」
「皆に決め
「えー、難しいよ」
「私はもうあるから良いよ。『私の左手に封印された闇が勝手に』っていうのが」
「私もあるわ。『また、つまらぬ物を呪ってしまった』っていうのがね」
「あたいは……うーん。『行け、猛獣らよ喰らってやれ』でどうだ」
「ずるい。ミディも決める。『眠りから覚ましてごめんなさい』かな。いつも思っているの」
軽い思いつきで言ったんだが、みんな乗りがいいな。
「俺は『解き放たれた死よ蹂躙せよ』だな」
「決め
「仮面も作らないと」
「闇といえば黒。黒い仮面でお揃いにしましょ」
「そうだな。ジュサ作ってくれるか」
「布製でよければ」
「それだとマスクだけど、まあ良いか。ここからは真面目な話だ。街からコミュニティメンバーを脱出させる作戦を練るぞ」
「また門をぶち破ればいいじゃないか」
「今日見た限りではかなり人員が配置されている。それに領主軍に恨みはない」
「なら、穴掘りだね。魔獣でビックモールというのがいる。こいつに掘らせたらいい」
「決まりだな。ビーセス、頼む」
「任された」
「トンネルの補強は必要じゃないかしら。呪術でなんとかなるといいけど」
「古典的な呪いがあるじゃないか。石化の呪い」
「そうね、それがあったわ」
「後はシャデリーにはダークカーテンを使ってもらうとして。ミディには偵察を頼めるか。ゴーストは物をすり抜けるのだろう」
「うん、できるよ」
前々から気になっていたんだが、拷問されたメンバーってのはミディじゃないのか。
それにしては心が壊れた様子がない。
さて、どうやって切り出そう。
「ミディは偵察の他は何ができる」
「ゴーストを憑依させて生き物を操れるよ」
んっ、もしかして。
「自分にも憑依させられるのか」
「うん、できるよ」
「それをするとどうなる」
「体の感覚がみんな無くなっちゃうの。何されても平気。ぶたれても平気だよ」
「もういいよ。悪い事を聞いた」
なるほど捕まったらゴーストを自分に憑依するように教えられていたのか。
光魔法で解除されたら。
その先は考えたくない。
「ミディは普段、どんな仮の職業を名乗ってるんだ」
「動物使い。ゴーストを憑依させると操れるから」
決まりだな。
魔獣使いに間違われて捕まったのだろう。
うっかり魔獣を操っているところを見られたのだと思う。
魔獣は小さい種類もいるからな。
全部想像だが、あながち的外れでもないだろう。
「あたいも気になっている事があるんだ。ネオシンク教の由来ってなんだ」
「ああ、それね。
「『ね、
「そんなとこだ」
「フランダルとシュガイには聞かせられない話だね。これを話しの種にいつか、からかってやろう」
さてと脱出作戦の始まりだ。
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