第18話 辻斬の噂
おれはヴァンパイアになったチンピラに話を聞き始めた。
「
「本部は教会の本山にあると聞いてやす」
「この街にも支部があるんだろう」
「ええ、ごぜいやす」
「
「そんなこたぁ、ありません。せいぜい
「その
「
「なるほどな
「そのとおりでやす」
「お前は
「いいえ、手前共はみんな
「水魔法使いは
「ええ、
なるほど、シャデリーを仲間に加えるつもりだったのだな。
来たのがチンピラで良かった。
鑑定士を連れてこられたら、シャデリーが禁忌持ちだとばれてややこしい事になっていた。
危機一髪だったな。
さてと、大体の所は聞けたし、残りの死体もヴァンパイアにしてしまおう。
ここで一つ問題がある。
水魔法使いを含めたチンピラは七人いるんだが、全員をヴァンパイアにすると魔力が持たない。
ここは
荒事を考えると心もとないが、仕方ない魔力は有限だ。
トゥルーヴァンパイアが作れるように早くなりたい。
チンピラをぞろぞろ連れて店に戻る。
「あんた、裏切ったのね。暗黒の炎よ燃え盛れ【ダークフレア】」
「ちょっと待った。このチンピラはヴァンパイアだ。味方だよ、味方。よく見てみろ。青白いだろ」
シャデリーは怒りを納めたようだ。
「あんたの事、信用した訳じゃないから」
「それよりお前、まずいところだったぞ。こいつらお前が火魔法使いだと知って、秘密結社にさらい洗脳するつもりだったようだ」
「えっ、いくらチンピラでも殺す事はないと思っていたけど、こんな奴らどうなっても構わないわ」
「そうだよな洗脳は非道だよな。教会の闇ってところだろう」
「闇を馬鹿にしないで、闇は友達よ」
「そうか悪かった。教会の悪事って事だな」
「それでどうするの」
「こいつらには今まで通り暮らしてもらう。もちろん街の人に迷惑は掛けられないから、ショバ代は全部を俺が出す」
「それじゃ、長く続かないわよ」
「ああ、情報を集めたら秘密結社の支部をぶっ潰す」
「トカゲのしっぽ切りになるんじゃない」
「支部の偉い奴をヴァンパイアにして本部の情報を集める。そして、最後は本部をぶっ潰す」
「そんなに上手くいくかしら」
「もう事態は動き出したんだ。止める事はできない」
「そうね。ところで
「おい、お前らの仕業か」
「いいえ、しりやせん。ですが、被害にあった人間はショバ代を拒んだ奴です。
「そうか、お前らは普段通りに生活して、情報を集めろ。他の店のショバ代も俺が出すから後で取りに来い。それとオークの血があるから飲んでいけ」
「へい」
悪いなお前らの餌を取ってしまって、チンピラの用事が済んだら復活させてやるからな。
俺は雑貨屋に行く事にした。
「邪魔するよ」
「おお、あんたか」
「チンピラとは話がついたから」
「ほんとかい」
「ああ、お金は一銭も払う必要はない」
「手間をかけたな。そうだ今度、町内会で夕方に
「そうだな、俺は通いだけど用事ができたのでしばらく街に毎日来る。その間だけでいいのなら」
「おう、それで良い」
俺は夕方まで待って、見回りに同行する事にした。
「怪しい奴はいないかねー。ピンと来たら警備兵」
そう声を掛けながら近隣を回る。
ある店の前を通りかかった時。
薄暗い中で灯りも点けないで、座りこんでいるフードの人物を見つけた。
「おい、お前。何をしてやがる」
雑貨屋が喧嘩腰で声を掛けた。
「皆さん警備兵を呼んで下さい」
俺がそう言うとその人物は懐に白い軌跡を描かせ何か物を仕舞った。
あれはナイフじゃないか。
「ちっ、邪魔が入ったか」
声は若い男だった。
むっ、どこかで聞いた覚えが。
さて誰だったかな。
俺が
俺はポケットに忍ばせていたネズミのゾンビを放った。
これでヤサが突き止められれば良いのだがな。
チンピラのヴァンパイアに
翌朝。
漬物を作り、今日も配達しに街へ行く。
店に帰ってこないネズミを昼まで待っていたが、我慢できなくなって別のネズミを放った。
やっぱり、やられたかな。
しばらくして後から放ったネズミは帰ってきた。
ネズミは少し興奮している。
何があったんだろう。
ネズミに案内されて路地裏に行くと細切れにされたネズミのゾンビがいた。
何も細切れにしなくともな。
追跡に気づいた男はまずネズミの手足を切り飛ばしたらしい。
ネズミはアンデッドなので追跡を諦めなかったみたいだ。
そして、胴体を細切れにされたと。
町内会には今後も俺が同行したほうが良さそうだ。
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