第3章 ヴァンパイアから始まる塩漬け肉
第14話 スライム
「♪~、ヴァンパイアにする生き物は決まった?」
昨日、服を買ってやったのでジュサは上機嫌だ。
買ってやったドレスを着て、鼻歌交じりに尋ねて来た。
「ああ、スライムにしようと思っている」
スライムはこの世界でありふれた魔獣以下の存在だ。
中心に3センチほどの核を持ち、主に生ゴミを食らう。
どこの家でも二三匹飼っている。
攻撃力など殆んど無い無害な生き物それがスライムだ。
「なんか微妙な選択ね。あまり
「攻撃は屋外なら、細菌兵器、
「じゃあ何を基準に選んだの」
「飼っていても目立たない。案外強い。つまみ作りに役立つ」
「美味しいつまみは大歓迎」
「では早速。スライムの核よ、ヴァンパイアになって
核が青から赤に変わる。
そして、コロコロと転がって、机から落ちた。
「元気な奴だな。もしかして元気が有り余っているのか」
「きっとお腹が減っているのよ」
「ヴァンパイアに食事は不要だと思ったんだがな」
抗議するように俺の足に体当たりする。
「そうか要らないか」
さらに激しくなる足への体当たり。
「悪かった血をやろう。昨日採って来たオークの血だぞ。お前の名前は
俺が核に血を掛けると、核は血の体液をまとってスライムと呼べる形になった。
ヴァンパイアの特性は回復能力だ。
血を吸うと回復はさらに加速する。
ヴァンパイアが恐れられるのはこの回復力が原因だ。
「うわ、どす赤いスライムね。美しくないわ」
「こいつには肉の調達をしてもらう」
俺達は狩りに繰り出した。
森の奥へ行くとオークに出くわした。
ちょうど良い。
出てきたオークに
滅茶苦茶に暴れスライムを剥がそうするオーク。
だが、意識が
ふらふらしたと思ったらバタンと倒れた。
「よし、よくやった
「これが美味しいつまみ。そのまま生肉を食えって言うんじゃないわよね」
「まさか、これからさ。オークゾンビ後をついて来い」
俺達は家まで戻って、木組みにオークを掴まらせた。
「よし。解体だ」
「私見ないから、食材になったら教えて」
青い顔してジュサは家に引っ込んだ。
血が全て抜き取られているとは言えグロテスクだよな。
五年も異世界の農家を手伝えば、家畜の解体経験は何度となく訪れる。
オークゾンビを切り分けると、
「仕上げだ。オーク肉よ、塩とハーブに調和して塩漬け肉ゾンビになれ。【メイクアンデッド】」
よし、塩漬け肉ゾンビができたぞ。
問題はこれからだ。
生だから焼かないと食えない。
薄切りしてフライパンで焼いてみる。
肉の焼けるいい匂いが辺りに立ち込めた。
「いい匂いね」
ジュサが匂いを嗅ぎつけ家から出て言った。
「よし、試食だ」
フォークに刺してまずは匂いを嗅ぐ。
むっ、腐った匂いがする。
「何よ腐っているじゃない。がっかりだわ」
同じくジュサも腐臭を嗅ぎ取ったのだろう。
眉をしかめて文句を言った。
何がいけなかったのだろう。
塩漬け肉の匂いを嗅ぐが腐臭はしない。
調理方法に問題があるのか。
「あー、ゾンビは火にも弱いのを忘れていた」
「駄目じゃない。生じゃ食えないわ」
「かといって干肉にしてからゾンビにすると質がかなり下がっちまう」
「闇魔法使いの暗黒の炎で調理してもらえばいいんじゃない」
「それじゃ売れない」
そうだ、俺はぽんと手を打った。
薪アンデッドを燃やせば良い。
「薪よ暗黒の炎を出して燃える、薪ゾンビになれ。【メイクアンデッド】」
よし、これで焼いてみるぞ。
薪アンデッドは赤黒い炎を出して燃えてフライパンを熱した。
じゅじゅう焼ける音がして油がパチパチ音を立てた。
肉が少し反り返る。
よし、焼けたな。
フォークに刺して匂いを嗅いだが腐臭はしない。
勇気を出して
「美味いぞ。油と肉汁がジュッワと染み出てきて、もの凄く美味い。肉の甘さと塩とハーブが絡みあって至福だ」
「ほんとよね。ゾンビを闇属性の薪で焼くと美味いなんて、信じられない。それに、一切の臭みがない肉なんて、初めて食べたわ」
そうなのだ。
アンデッドは闇属性に属する。
光属性の物に弱い。
普通の薪は太陽を沢山浴びて育った木だから、光属性を大量に含んでいると考えられる。
これは高級路線で行くべきだろう。
理由付けをどうするかな。
特別な薪で調理して下さいと説明に書くのはいいけれど。
理由が必要だ。
光属性に対して腐るし溶ける。
そんな現象がどこかで見たな。
そうだ、炎天下の凍った食材だ。
氷は火や太陽の光に弱い。
氷属性って事にしちゃおうか。
肉は氷属性だから、光属性を当てると溶けるし腐る。
薪も特別な氷属性ですってな。
あくまで神聖な肉とイメージさせよう。
誤魔化せるかこんなので。
ばれるのも時間の問題だと思うが。
それまでに稼げるだけ稼いで最終決戦にそなえよう。
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