第12話 果実酒ゾンビ
流石に十個の鮮度を保つのは無理だろう。
魔力が持たないのは確実だ。
九個は食っちまおう。
街で酒と砂糖と瓶を買い求めた。
そして、世界樹の元へ実を貰いに行った。
種を抜いた世界樹の実を瓶入れて酒と砂糖を足して。
「世界樹の実よ、酒を
酒が独特の強い甘い芳香を放つ。
魔力はすぐに抜けるんだろうな
頭に鳴り響くファンファーレ。
「レベルが遂に上がったよ。ジュサ、ここで飲んじまおうぜ。レベルアップ祝いだ」
「駄目よ。ここはごろつきもいるから、危ないわ」
「だけど、捨てるのはもったいない」
「ちょっと試させて。かの物の格を下げたまえ【カース】」
「よく気づいたな。これで、魔力の持ちがよくなる」
「美味い酒は美味いつまみで飲みたいじゃない。街に行ったら祝杯よ」
俺達は急いで街まで戻った。
早く世界樹の果実酒が飲みたいな。
まずは世界樹の実の納品だ。
「おお、戻ったか。世界樹の実十個はどこにある」
「それが、漬物に加工するには魔力が必要なのです。持って帰れたのは一個です」
俺は世界樹の実を差し出した。
神官は後ろに控えていた別の神官に実を渡すと、眉を吊り上げた。
「駄目だったのか。では余った世界樹の実は捨てたのかなんと罰当たりな」
「いいえ、もったいないので酒に漬けました」
「ほう、それも買い取ろう」
「えっ、そんな」
「何か問題でも」
「神聖な物から作ったお酒ですので、ご利益があるかなと」
「ふむ、見せてみろ」
俺は
後ろに居るジュサの殺気を感じる。
頼むから呪いは掛けるなよ。
しばらくして酒を持ってった神官が帰って来た。
「大発見です。酒に漬けた世界樹の果肉から最下級エリクサーが出来ました」
「おい漬物屋。これはどれぐらい量産できるんだ」
「飲みたかったなぁ」
「何か文句があるのか」
「めっそうもございません。やはり加工に魔力を使います。一瓶がいいところかと」
「やむをえないな」
「さきほど果肉からエリクサーを作ったとおっしゃいましたよね。漬けた酒はどうしました」
「それなら。研究用に保管してます」
酒を持って行った神官が答えた。
「酒をなんとか手前共に分けてもらえないでしょうか」
「研究用には少しあれば良いだろう。残りは渡してやれ」
「ありがとうございます」
ジュサの殺気が和らいだ。
それから、酒を抱え、
「レベル41を祝福して乾杯」
「乾杯」
ぐっと杯を
いや、この甘さとねっとり感がなんとも言えない。
「ぷはー。格を下げる呪い、さまさまだね」
「もっと褒めなさい。あなたと組めば無敵になりそう」
それから、瓶が空になる頃にはジュサはすっかり出来上がっていた。
「もうのめにゃい」
「飲めないもなにも。もう無いよ」
「そうじゃにゃい。えーもう終わりって意味で言ったの。追加で買ってくるのにゃ」
「はい、はい。お子様はもう寝る時間だよ」
ジュサを
それから、それからは何にもないよ。
だって、機嫌を損ねたら呪いが飛んできそうだからな。
へたれじゃない。
呪いを掛けられたら解除してもらうか殺さなきゃならない。
流石に
そこまで感覚は麻痺していない。
朝になり俺は宿の食堂でお茶を楽しんでいた。
「頭いたーい」
今、起きてきたのだろう。
ジュサが頭を押さえながら現れ言った。
「頼むぜ。相棒。これからガンガン果実酒を作るのだから」
「大声出さないで、頭に響くわ」
「昨日の有様を見せたいよ。あれを見れば酔いも吹き飛ぶだろう」
「そんなに酷かったの」
「流石に脱ぎだそうとした時は止めたけどな」
「うそ、もう飲まない」
「そんな事言っても果実酒を作れば、また飲むのだろう」
「いいじゃない。楽しみがないんだから」
「潤いは大事だよな。よし、今回の件が終わったら服を十着買ってやるよ」
「本当!? 何でも良いの」
「ああ、ドレスでも何でも」
それから、俺達は果実酒を作って運んだ。
格を下げる呪いは案外使えないと判明した。
なんと呪いを解除しても格が元に戻らないのだ。
それだけでなく生の実に呪いを掛けると出来るエリクサーが最下級になる事が分かった。
上手くは行かないもんだ。
格が何か少し分かった。
ようするにレベルだな。
物が持っているレベルだ。
呪いで格を下げるという事は壊すのに等しい。
だから壊すと元に戻らない。
人間に格を下げる呪いを掛けるとどうなるか少し知りたかったが。
人体実験はしたくない。
この考えは眠らせておこう。
何度も果実酒と実を運び。
レベルも49になった。
たぶん、これから世界樹の元に辿り着ければ、念願のレベル50だ。
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