第5話 酒ゾンビ
懐もかなり暖かくなった昨今。
潤いが欲しくなった。
彼女でも欲しいところだが、付き合うと俺の秘密がばれる。
酒だ。
こんな気分の時には飲まなくちゃやってられない。
「ういー、女なんてのはね。別に居なくてもいいんですよ。居るとあれこれうるさい。でもそれがなんか嬉しいんだよな。うがー、職業の馬鹿ー。ちくしょう、潤いを求めてやる。酒だ、酒、持って来い」
酒を飲みながら考える。
魔獣の肥料で育てた麦の
そうと決まれば今日は祝杯だ。
「ゾンビの益々の発展を願って乾杯」
あれ、昨日は何か思いついたような。
そうだゾンビで酒を造るんだった。
村に行って俺の肥料で育てた麦を分けてもらう。
そして、家に帰り、麦を濡らして芽を出す。
普通ならこの後、切り取って乾燥させて、粉にするんだが。
麦芽を切り取ったら、乾燥させずに水とゾンビにしちまおう。
鍋に麦芽と水を入れた。
「麦芽よ、水の衣を纏え。【メイクアンデッド】」
アンデッドを作る時に美味い酒をイメージした。
おお、酒の匂いがする。
後は濾せば良いだけだな。
さて、お味はどうかな。
「まろやかー。すっきりした後味。ほのかな甘みとまろやかさ。今まで飲んでたのが何なのかっていうぐらい美味い」
後はそうだなホップを加えたり、リンゴを加えたりだな。
それには合成アンデッドが出来るようにならないと無理だ。
蜂蜜酒っていうのもあったな。
蜂蜜の質を上げるには花に魔獣の肥料を撒かないと駄目だろう。
養蜂をやっている村人にも声を掛けてみるか。
「こんにちは」
「おや、サクタの旦那。蜂蜜がご入用で」
「俺の肥料を草花に撒いたら、良い蜂蜜ができるんじゃないかと思って」
「それなら、もうやってますぜ」
「どういう事」
「嫌だな野菜ですよ。村の野菜は今殆んど旦那の肥料で作ってます。その野菜の蜜を蜂が集めるってことですぜ」
「それは良い。じゃ、蜂蜜を分けてくれ」
「承知いたしやした。俺が食っていけるのも旦那のおかげですぜ。俺の蜂蜜は凄い値がつくんでさぁ」
「いいのか。そんなに高い物を」
「かまやしません。旦那の肥料で野菜が育ちまくるものだから、蜂も頑張っていやがるんでさぁ。前の二倍も収穫がありやがる」
「それなら遠慮なく頂くよ」
俺は蜂蜜を分けて貰い酒造りに取り掛かる。
「蜂蜜よ、水の衣を纏え。【メイクアンデッド】」
おお、黄金色の輝き。
味は甘口の上品な味わいだ。
これは売りに出したくないな。
どうせ、売ってもしまい込み、魔力を切らして味を悪くする人間が続出しそうだ。
俺の楽しみのためだけに酒を造ろう。
そもそも、
後は葡萄の酒とか。
もろこしの酒とか作りたい。
この殆んど小屋の大きさの家も拡張しないとな。
元が猟師小屋だもんな。
村には今、猟師は居ないが、復活すると面倒だ。
いっその事、森の奥に拠点を作るか。
教会が攻めてきても持ちこたえられるような奴を。
仲間が欲しいな。
痛烈にそう思った。
拠点作りに参加してもらえなくても、この美味い酒を一緒に飲んで職業の事も話せる仲間がほしい。
禁忌の職業は死体術士以外にもいる。
有名なのだと闇魔法使い、魔獣使い、呪術師、霊術士があった。
闇魔法使いは精神に作用する魔法が使えるので嫌われている。
魔獣使いは魔獣を滅ぼすべしという教会の教義に反しているとか。
呪術師は呪いを掛ける事ができる。
もちろん呪いは魔獣にも掛かる。
使い方によっては便利だと思うんだけどな。
霊術士は魂からアンデッドを作る。
それが教会の人間には気に食わないらしい。
過去にいた人間の知識を利用できるのだから、便利だと思うんだけどな。
そういう奴らと接点持てればな。
ボルチックさんなら情報を持ってそうだが、なんと言って切り出したら良いか。
神もいいかげんだよな。
禁忌の職業を作っておいて支援しないなんて。
でも、預言士が禁忌の職業を持っている人間を告発した事は一度もないんだよな。
昔、魔王と呼ばれた魔獣使いが出現した時も預言はなかった。
預言士はだいたい大災害とか
俺はなんとなく教会の教義には
実は職業に神が決めた禁忌なんて存在しないじゃないかな。
人間が全て考えた事なんじゃないかなと。
教会と戦うすべが見えた気がするな。
ボルチックさんには教会のためになる事がしたいと言おう。
そのために禁忌の職業を持っている人間を逮捕したいのだと。
それなら、なんとなく大義名分が立つな。
実際、禁忌の職業持ちの中にはどうしようもないクズもいると思うから、そういう奴はどんどん捕まえよう。
そして、ひっそり平和に暮らしている奴は俺が支援するんだ。
なんとなく計画が立った。
森の奥に拠点を作り、そこに禁忌の職業を持った奴を集める。
そしてゆくゆくは職業に
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