第4話 マンドラゴラゾンビ

 今日もおおかみ魔獣をお供にいのしし魔獣狩りだ。


 おや、あれはマンドラゴラじゃないか。

 植物魔獣として有名なマンドラゴラ。

 引き抜くと運が良ければ気絶。

 悪ければ即死だ。


 村を渡り歩いている時に教えられたのは見つけたら茎を全部刈れという事だ。

 茎を刈るとしばらくすると死ぬ。

 ただし死んだマンドラゴラには薬効が無い。

 生きたまま引き抜かないと価値がないのだ。

 茎と葉がついたマンドラゴラは高値で取引されていた。


 群生地があるな。

 なんで群生したんだろう。

 良く観察すると骨の残骸があった。

 魔獣の屍骸が肥料になって群生したのだな。

 これは質の高いマンドラゴラが手に入るかも。


 アンデッドに引き抜かせるのは悪手だ。

 マンドラゴラを引き抜くと魔力的な叫びを上げる。

 引き抜いた者に魔力が伝わってその者が被害を受ける訳だ。

 アンデッドは術者に魔力で繋がっている。

 当然叫びの魔力も術者に伝わる。


 俺は一株のマンドラゴラの茎を全て刈った。

 死んでしまうが問題ない。

 なぜならこの後アンデッドにするからだ。

 武器としての効果は期待しない。

 死体術士が込めた程度の魔力では威力のある叫びは上げられないからだ。

 何をするかって勿論食うためだ。


 俺はホクホク顔でマンドラゴラを掘り出しにかかる。

 苦悶の表情を浮かべたマンドラゴラが掘り出された。

 急いで帰りマンドラゴラを良く洗う。

 そして、皮を剥き塩とアンデッド化。

 水につけ幾分塩を抜いたら、酢と砂糖で再びアンデッド化。

 出来上がりだ。

 マンドラゴラ漬けはどんな味かな。

 シャキッとした歯ごたえに甘酸っぱい味。

 美味い。美味すぎる。

 生きたマンドラゴラほどでは無いが薬効もあるようだ。

 体がぽかぽかしてきた。


 このマンドラゴラの漬物はこの辺の村では良く作られている。

 だが、こんな美味い物じゃなかった。

 じゃりじゃりした歯ごたえに腐ったような味。

 植物とはいえ死んだ魔獣を食うのだから当然か。

 アンデッドは半分生きているから美味いのだろう。


 よし、マンドラゴラを見つけたら魔獣から作った肥料を与えよう。

 群生地にも肥料を撒いて様子見ようすみだな。


 俺は群生地のマンドラゴラを半分ほど漬物にして村長宅に持ち込んだ。


「今度はマンドラゴラ漬けですか。辺境の名物ですな。しかし、名物に美味いものなし。今まで美味いマンドラゴラ漬けを食った事がないのです」

「まあ、だまされたと思って」

「そうですか」


 半信半疑で村長は切られたマンドラゴラをフォークに刺して口に運んだ。


美味うまーーーーい。これは革命ですぞ」

「聖水漬けもこれも漬け方に秘密があるのですよ」

「そうですな。試しに貰った肥料で大根を育てましたが、聖水漬けには及びません。生で食べた味はサクタさんの大根に負けないのですが。そうですか、漬け方にも秘密が」

「それに少し薬効があるようなのです」

「そういえば、ぽかぽかしますな」

「持って来たマンドラゴラ漬けは村の人で召し上がって下さい」

「ありがたく頂きます」


 後日、村に行くと。


「サクタさん、お婆ちゃんが立てるようになったの。きっとあの漬物が効いたんだわ」

「それは良かった」


 他にも古傷が痛まなくなっただの声が聞かれた。

 これは、高級路線で行くべきだな。

 名前を付けたいな。

 祈りの声漬けなんてどうだ。

 即死するマンドラゴラの声が祈りの声なんて傑作だ。


 少し改良しよう、苦悶の表情は良くない。

 マンドラゴラの口を動かして、微笑みの表情にしよう。

 これで類似品が出て来ても、表情で違いが一目瞭然だ。

 微笑だとこれはこれで不気味だが、前よりはましだと思う。


 一月ほど経ちマンドラゴラの群生地に行く。

 うわ、気持ち悪いほど増えているな。

 群生地が最初の時に比べて三倍になっている。

 どこまで増えるんだろう。

 また肥料を撒くか。


 重たい肥料の袋を担ぎ村に行く。

 このところ毎日何回も村と往復している。

 二日に一回は村に肥料を運んでいた。

 毎日、肥料を運んでくれだと冗談じゃない。

 魔力の回復のために空いてる時間を全て肥料を運ぶのに使うべきだろうが、肥料は金にならない。

 村に着くと見覚えのある馬車がある。

 やったボルチックさんだ。

 鎧は運んできてくれたかな。


「こんにちは」


 勝手しったる他人の家という具合に村長の部屋のドアを開ける。

 やっぱりボルチックさんが居る。


「いらっしゃい」

「お久しぶりですね」

「鎧、中古の鎧は手に入りましたか」

「手に入りましたよ。馬車に積んであります」

「感謝します。これでポーターが作れる」


 全身鎧も手に入り魔獣の骨からスケルトンナイトが誕生した。

 これで重たい荷物を担がなくて済む。


 祈りの声は村の特産品になった。

 そりゃそうだろう。

 美味い上に薬効がある。

 商人が祈りの声求めて押しかけるようになった。


 俺が運んだ肥料で数々の美味い野菜が出来て、商人は祈りの声の代わりにこれらを買って行った

 聖水漬けも大人気だ。

 大根は今、村の物を使っている。

 俺の職業レベルも一人前と言われる20を越えた。


 20で新たに作れるアンデッドはグールだ。

 性能はゾンビと変わりない。

 何が違うのかといえば消化機能があるだけだ。

 まったくもって使えない。


 最近は教会に一矢報いる策を考えてる。

 だが、まだ早い。

 今は雌伏しふくの時だ。

 職業レベルが英雄と呼ばれる50を越えたら行動に移る。

 そう決めた。

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