『孤児院。そして3年後』

「大丈夫かい?しっかりしな」

 先程の閃光で目がまだよく見えない。だが誰かに呼ばれて肩を揺さぶられてる。

「うっ……」

 光で目が痛い。

「ここは……?どちら様?」

 目の前に知らない光景が広がり女の人がいる。

「記憶がないんかい?通りすがりの孤児院の職員よ」

 職員の方は質問に答えれた事にほっとしたように答えた。

「本当に生まれ変わったのか。ゼウスさんありがとうこざいます!」

「何言ってるんだい。所であんた親はどうしたんだい?」

 確かにそうだ。親が居ない。

 周りを見ると市場近くの裏路地付近に俺は居るみたいだ。

「わからないです」

「分からないって困ったね……。しょうがない着いてきな」


 10分程歩き、ひとつの年季が入った木造建ての家屋敷に着いた。

 屋敷と言っても豪邸でも広い庭とかがある訳でもないっぽい。適当に木の家建ててここに孤児を放り込んどけ。そんな汚い大人の考えが頭に浮かぶ。


「親が居るならここに来るはずだい。まあ来なかったら12まではここに居ていいから。お風呂に入ってきな」

 職員のおばさんは手に持ってた食材をどこかに運び姿を消した。




 お風呂に入れって言われても場所がわからん。

 そもそもここはどこなんだ?多分孤児院であってるだろうけど。

 すると、

「きゃきゃ」と子供特有の高い笑い声がこちらに近付いてくるのがわかる。


 少し止まると予想どうり3人の子供が走って来た。

 3人は俺に気づくと足を止めた。

「君は誰?悪い人?」

 3人のうちの1人が聞いてきた。

「悪い人じゃないよ。今日からここに入ることになったらしいんだ、よろしくね」

「よろしくな」

「来んな消えろ」

 1人が冷たく怯えたように言った。


「まあまあそんな事言わないの。ごめんね」

「あはははは。気にしなくていいよ。君たちってお風呂の場所知ってる?」

「ここをまっすぐ行って曲がった所にあるよ」

 端に居た女の子が答えた。するとさっき暴言を言ってきた子が「チッ」舌打ちをして「いこうぜ」2人を連れていった。





 言われた通りの廊下を歩いていると、すぐにお風呂についたので浸かった。

 そこでさっきのことを思い出す。


「(なんだったんだ?やけに怯えていたような。新しい人を怖がってるような……そもそもこの世界はどんな世界なんだ?基礎情報が少なすぎる……。後で調べてみるか」


 お風呂から出ると先程の職員のおばさんが何やら揉めていた。

 バレないようにそっと見ていると鎧を来た男が数人玄関前に立っている。

「お願いします。本当にお願いします。どうかどうか彼らをここに戻してやってください。そんな横暴はあっていいはずありません」

「うるさい!これは領主ゲブタール様の命令だ。貴様ら庶民が意見していいはずがない」


 よく見ると1人は槍をもう1人は剣を。そしてもう1人の手には縄を持っており、その先には先程の子供達が結ばれていた。


「領主様なら庶民の意見を聞くのも仕事のはずです!彼等は孤児。たった9歳にしてひとりぼっちなんです。なのに……もう散々辛い経験をしてるのになぜさらにさせたがるのですか?」

「孤児は使い勝手が良いからな。使えなくなればその辺に捨てても誰か文句を言わない。こんな良い道具他にあるか?ないよなー!ヒャハハ」

 クズみたいなセリフを吐き高笑いをする一人の男。

「おいその辺にしておけ。ここにはたった3人しか居なかった。このままだと我々の首も危うい。とっとと他の孤児院にも行くぞ」

「そうだな。おいおばさんよ。今回は命は見逃してやったんだからさ、次来る時までに沢山のガキ達を集めとけよヒャハハ」

 3人の男は子供たちを連れてどこかへ消えてしまった。


 あぁそうか。わかった。わかってしまった。確信してしまった。たった5分足らずのこの一場面だけでも確信できた。

 この世界も前の世界も何も変わらない。

 弱者と呼ばれる人間は強者と権力者に狩られてしまう共通ルールがあるんだな。

 この世界も終わっている。

 俺は弱者だ。だから弱者の気持ちが痛いほど分かる。

「(なんだろ。この湧いてくる気持ちは。どこか胸が痛い。目頭が熱くなってくのを感じる。奴らに狩られるだけの人間になりたくない!奴らを倒したい!)」

 初めての感情に困惑していると、わかった。

「(これが怒りの感情か)」

 初めての感情だから分からないことの方が多い。でも分かることもある。それは奴らのようなクズ共に怒っていることただひとつだ!




 3年後



 俺は多分12歳になった。正確な歳が分からないのはこの世界に転生したのが、何歳だったのか分からないからだ。


 そして、この3年間この国、この世界について調べに調べた。

 1万を超える書籍を読破し、その全てを知識として身につけた。

 9歳だった少年がたった3年で1万札を読み、全てを頭に入れるなど、不可能に近い。そんなの誰もが思うだろう。

 無論俺自身もそう思っていた。だが、思い出した。

 ゼウス様に転生する時に『頭のめちゃめちゃ良い人にしてください。』そう言ったのを思い出したのだ。そしてゼウス様本当に叶えてくれていたから、この年でこの期間で、1万冊以上を読破し全てを身に付けることに成功したのであった。


 そして、この世界について、知ったことを順に説明していく。


 1.この国はクリシュナ王国といい、現王で3代目となる歴史ある国だ。

 先代の王と血縁関係にあり、従兄弟関係である領主が、敵国の挑発にのり、鉱山を奪われたことで王族に批判が多少向いていること。


 2.クリシュナ王国を含み世界は戦争で満ち溢れている。

 クリシュナ王国も例外ではなく、この3年でも、戦争があり多くの人が戦場に向かっていった。

 本によると戦争によって落とす命は世界で毎日1万を越えると言われている。


 3.クリシュナ王国は国土こそ他国より少し広いが農地に使える土地は少なく、伝統工芸品なども少ない。

 そして、唯一世界に誇れる鉱山も先代の王の従兄弟によって敵国に渡ってしまった現状だ。


「(こりゃ批判されても仕方ないわな)」

 自分のまとめたノートを見ながら思う。


 4.クリシュナ王国は弱い。

 クリシュナ王国は戦争でほとんど勝った歴史は少なく、よく今の生活ができ、植民地状態じゃないなと感心するほどに弱い。

 今、冷戦状態だがいつ負けてもおかしくない。


 5.獣人、アンデット、ブラッドハウンド、ハーフエルフ、エルフ等人外も多く存在しており、共存している国や迫害し人間だけの国、魔物だけの国等、様々な国が世界には存在しているということ。

 ちなみにクリシュナ王国はアンデットなども含め、大体の生物が共存している。そこに差別はなくみな平等に過ごし、戦争に望んでいる。


 6.魔法使いが少ない。

 5.の他に魔法使いと言う人間も居るのだが、戦いに使えるレベルの魔法使いの出生率は世界ワースト1位だ。

 それがこの国の弱さの理由である。


 7.絶対王政、貴族制度を使っており、王と貴族がほぼの権利を握っている。

 それが弱さの原因という勇気ある学者も存在しているが影で迫害されかけているらしい。


 8.世界レベルの戦争が色んな所で行われている。そしてその戦争には普通にはない特殊なルールが設けられていた。

 それは陣地制度。次に紹介する戦争の長期化が原因で作られたというこのルール。各国は3つの陣地を指定しそこは敵国からのみ光ってみえるようになっている。

 そこの3つを制圧したらその時点で制圧した方の勝ちが決まる。

 もちろん従来のルールもあり相手が負けを認めればその時点で勝ちとなる。


 最後これは公に出てる1万冊以上読んでも詳しく載っていた本は存在しなかった話。

 それは

 約1000年以上前らしい。神々が争い何が目的で何を得るために、何人……何人と表すのが正しいか分からないが、多くの神が不死の命を落としたという。

 とある神は海を割り、またとある神は神を蘇生し、都市伝説レベルの話だが現実らしい。


 今、俺が知っているのはこれくらいだ。

 今まで孤児院で過ごしていたが明日からは違う。

 俺……ラムエアは明日から大学生だ。

 この天才な頭脳で初等教育、中等教育、高等教育を飛ばし大学生となった。

 教育なんて受けられる人が少ない中で大学に行けることを拾ってくれた孤児院のおばさんに感謝している。


 こんな戦争ばっかりなクソみたいな世界だが今日ばかりは期待を胸に硬いベットに横になり薄い布をかけて眠りについた。




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