第13話 「誰がために刃を取る?」
その問いに俺は答えられなかった――
答えることはできない。
なぜなら、俺のこれは忌みスキル――その異端さは大陸で共有されたものだ。
この村では徳を積んできたから受け入れられているだけで――
世間的には保持者を見つけたらまず石を投げるのが定石。
そして死刑宣告されるまでがテンプレートだ。
俺と戦争屋はにらみ合いを続け、沈黙が場を支配している。
「……だから言っているじゃないっスか! あいつは<ネクロマンサー>なんスよ!」
それまで無言だった獣人の少女がその沈黙を破る。
「そうだ、俺は<ネクロマンサー>だ。だから何だというんだ?」
ここは敢えて開き直るとしよう。
この切れ者の傭兵団長相手には堂々としていた方が効果的だ。
そして俺は地面に寝転がる村人たちの死体を蘇らせて見せる。
「ハッ! 驚いた! まさか本当にネクロマンサーにお目にかかれるとはな」
「団長、やめましょうよ! ネクロマンサーに関わると命がないっスよ!」
「俺ぁ、ネクロマンサーってやつが死ぬとこが見たくなってきたぜ! ぶっちゃけた話、はなから穏便に済ますつもりなんてねぇ」
「そ、そんな……」
シャルレットの言葉に獣人の子が目に見えて落胆する。
最初から交渉するつもりはなく、俺を殺すのが目的というわけか……。
しかし、腑に落ちないな……。
「俺を殺すだけなら宣戦布告だけすればよくないか? 最初の茶番はなんなんだ?」
「兄ちゃんが本当にネクロマンサーか半信半疑だったからな。俺が戦うに値する相手かどうか知りたかったってだけの話だ。いやまぁ、死者を操れるくせに、領民の命をまっさきに考えるところは、ギャグかと思ったがな」
この男――
とことん人をナメ腐った態度をとる……。
コイツは村だって平気で焼くし、人を殺したってアリを踏み潰すくらいにしか思わない。
おそらく、俺を殺すだけじゃなく、この村も焼くだろう。
こんなやつとまともに話し合いができるわけがない。
――我慢の限界だ!
「最初、交渉ってお前は言ったよな?」
コイツは――奪う側の人間だ。
王族どもと同じ、人の大切なものを平気で奪う人種だ。
俺はこいつらを許さない。
「おやぁ? いまさら平和的解決しようってか? てめぇの命が助かるこたぁねぇよ、諦めな!」
そして今の俺は領主だ。
領民の命を背負っているんだ。
『死』を誰よりも感じ取ることができるからこそ――『命』の尊さを知っている。
俺の守りたい『命』を奪い取ろうとするやつは俺の敵だ。
だから――
「俺からも交渉を持ちかけてやるよ。俺がお前を殺すっていうのはどうだ?」
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