第11話 「シャルレット傭兵団」
死の気配――
この森はそう、嫌な感じがするんだ……。
国籍を問わず、種族を問わず戦場を渡り歩く戦士たち、それが彼らだ。
数百人を内包するシャルレット傭兵団は深い森の中を闊歩する。
「どうした、リルト? まさか、また『悪い予感』がするっていうのか?」
その傭兵団の先頭で馬を進める
「はい、団長。こう、虫の知らせっていいますか。この先には人が死ぬときの嫌な感じがするんッスよ」
「はっ! そいつはぁいいや! 『死』のある場所こそ俺たちにふさわしい! 俺たちの生きざまは『死』と隣り合わせなんだ。俺はぁ、死神に愛されすぎて辛いぜ。あいつはしょっちゅう俺に口づけしようとする。シャレコウベの上に口紅つけてな!」
すると一団は「がははっ」とむさい笑いに包まれる。
「野郎ども! 俺たちの生き方はなんだ?」
「戦! 略奪! そして酒!」
「あと女も!」
「床を共にするのは馬だがな!」
再び一団に笑いの渦――
「安心しろ、てめぇら! 俺はぁ、死神に好かれてるが、それ以上に勝利の女神を娶ってるんだ! 俺のかみさんはおっかねぇからよぉ、死神だって逃げちまうさ!」
シャルレットの下で常勝を誇る彼らにとって、団長は絶対に信頼できる存在だ。
「でも、団長っ! 今回はガチのマジっつうか、今までにないくらいの悪寒がするんスよ。ほら、あたしの耳の毛とか逆立ちっぱなしっスよ?」
団長と共に息巻く一団をよそに一人不安げなリルト。
「レルトぉ……、お前の斥候としての勘は当てにしてる。だがなぁ、この近辺にいるのはみみっちい地方領主ばかりだ。おまけにゲシェ連から報奨金ももらえると来た。こんなおいしい話を逃す手はねぇ」
彼らはベルジア王国と敵対する国家、ゲシェルビア協商連合の依頼で、王国の辺境を略奪するべく行軍しているのだ。
「天下に名だたる我らが『シャルレット傭兵団』の名を聞いただけで、チビッて逃げ出すだろうよ!」
「やった、
と傭兵団。
数多の戦場で首級を上げてきた歴戦の傭兵である彼らにとってここは狩場なのだ。
そこが自分の死に場所となるなどと考えるはずもなかった。
ただ一人、獣人の少女リルト・ムーゲティを除いて――
「この森を抜けた先が俺たちの戦場だ! 川沿いの村を片っ端から荒らしまわるぞ!」
――ベチュア伯爵領の村にて
俺がこの村に来てから2週間が過ぎようとしていた。
俺は朝からリヴァイアサンの顎だったもの――(リヴァイアサン・ブレードと命名した)で案山子を斬る。
初めはモーションが大振りになりがちなこの大剣を使うのに苦労したが、今はだいぶ使い慣れてきた。
まあ、この呪われそうな見た目には慣れないが……。
「た、大変だー!」
ん?
最近めっきり聞かなくなっていたセリフだが、やれやれ……、また屍者が異臭騒ぎでも起こしたか……。
「街に作物を売りに行ったやつらが……! 道中で賊に襲われた!」
「なんだと!?」
「ハンスが……、おらの息子が矢で射抜かれてしまったんだ!」
この周辺に特に盗賊団とかもなく、比較的平穏な地域だと思っていたが……。
安全ではなかったということか……?
「落ち着け、ヨハン。お前も街に行っていたんだよな? 賊は何人だったか覚えてないか?」
「それが、あいつらはおらだけをわざと逃したんだ!」
『お前のところの領主に伝えろ。シャルレット傭兵団がやってきたってな』
それが賊の伝言だった。
シャルレット傭兵団――王国で、いや、大陸で知らぬ者のいない常勝の戦闘集団。シャルレットの卓越した指揮と武勇によって、どんな激しい戦いでも――たとえ負け戦でも、彼らだけは(’’’’’)勝ってきたのだ。
そんな連中がどうしてこんな辺鄙な場所に……!?
いや、今は『なぜ』を求めるべきじゃない。
どう対処するかを考えねばならない。
「敵襲だ~! 橋の向こうに奴らが来ているぞ~!」
――!?
速い――
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