甘露世のユートピア

幼ない頃から

ずっと言い聞かされてきた

ここに居れば

困ったことなど何も無い

この街から出てはならない

もしこの外に

どんな誘惑があろうとも


街から出て

帰ってきた者はいないという

街は平和で

笑顔に溢れている

そうかここは既に

誰もが羨むユートピア

ここにいれば間違いはない

ずっとずっと

そう教えられたんだ

僕は次に何をすればいいのか

全部周りが教えてくれた


そんなある日

街の外からの来客が来た


キミはなぜここにいるの?


それはここがユートピアだから


誰にとってのユートピア?

そんなこと考えたこともなかった


やがて来客は街の皆から

追い出された

僕は街の外が知りたくて

その来客に付いてった


戻れ!戻れ!


聞こえる街の声


街を出ればお前は不幸になる


根拠すらわからない街の声

僕は勢いよく街の外へ出た

しばらく走って振り返ると

今まで見たことがない

僕が居た街が見えた


僕はなんて所にいたんだろう


驚く僕が見た先には

ただ草むらが広がるだけだった

あれをユートピアと言ったのか


ユートピアなんて初めから存在しない

この広大な草原に

道を拓き

街を作るのは

自分自身だった


僕を連れ出した来客は

いつの間にかいなくなっていた

あとは自分次第

さて、どんな道を

どんな街を作ってやろうか


青空を見上げた僕は

ホントの笑顔になっていた

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