雨某の声
誰かが流した涙で出来た
小さな小さな幻想が落ちていた
それはとても冷ややかで
直ぐに温めなければと
手を伸ばしたら消えていた
探さなきゃ
僕が温めなきゃ
誰が温めるというんだ?
よく探さなきゃ
下を向いて
ぽたぽたと落ちてくる雨
もう諦めようか
まだだ
諦めるもんか
必ず手に入れたいんだ
そうすれば
僕はきっと幸せになれる
雨は次第に強くなり
僕へ突き刺さるようになった
だけど絶対諦めない
必ずどこかに落ちている
冷たい雨が重くのしかかる
もう諦めろと言っているようだ
雨があがり
蒸し暑い日差しが照りつける
ジリジリとぼくの身体を蒸していく
もうダメだ
でも諦められない
冷たい雨に打たれ
厳しい日差しに蒸され
ついに動けなくなった
その場に倒れ
空を見上げた
みつけた
あの空に浮かぶ
大きな大きな幻想
あれだ
僕は最期の力を振り絞り
必死で手を伸ばした
届きそうか?
いや
遠すぎる
どうして逃げるんだ?
僕はただ
幸せを望んだだけなのに
最期の最期まで
あの幻想がなんだったのか
知ることはなかった
ただいつも
あそこからは声が聞こえた
温かい声が
それを聞いたら
涙が流れて
そうか
あの小さな幻想は
僕の涙でできたのか
あの幻想の中の声は
きっと僕だったのかな
幸せになれた僕の
その声にはもう
どんなに手を伸ばしても
届くことはないんだ
そう思うと
最期の涙が流れた
そうして
あの大きな幻想は
僕と共に消えてしまった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます