新戦国御伽草子 〜魔道具使いの侍達〜

児鳥だよ

第1話 侍


「おい、なんだテメェは!?」


無精髭を生やした大男を前に

華奢な身体をした、まだ若い青年が独り言の様に喋っている。


「こいつで間違えないんだな?

 任務を遂行する。」


「はぁん??

 なんとか答えろや!!

 文句あるならやってやらぁ!!」


大男は腰に携えた刀に手を抜き

若者に襲いかかる。


ドン ッ 



その大男が踏み込んだそのままの勢いで

倒れていく。




カシャッ ン。


納刀の音だけが響いた。



〜神山流 風の書 第一之技〜

『 鎌鼬 』(かまいたち)


納めたのは若者である。


いつの間にか若者が刀を抜いていた。

誰の目にも止まらぬ速さで。



「任務完了。

 はぁー。。。

 こんな仕事ばっかりだなぁ最近。

 まぁ楽に終わるからいいか。

 じゃあ戻るぞ!」


そう言って若者はこの場を後にするのであった。



ここは大和ノ国。

時は新戦国時代と呼ばれ、200年近く続いている。

その名の通り人々は自分の私利私欲の為に争いを繰り広げている。

強き者が全てを手に入れられる時代である。

それならば数がモノを言うのではないか?

そう思う人も多いだろう。

だが、それは正しくもあり、正しくはない。

数百年前に魔道具というものが発掘された。

そこからの世の中は今までと全く違う世の中へと変貌したのであった。

魔道具には五行の力であったり、それこそ超能力が使えるものもある。

そしてそれを武器に仕込む人もいる。

それにより今まで以上に激しい争いになり貧困の差も激しくなっていた。


その中で三種の神器と呼ばれるものが出てきた。

まだ一つしか見つかっていない。

そしてそれが何なのかは未知の部分がある。

しかし、それらを全て手に入れたものには

この世の全てが手に入るという伝えが広まっている。


そして現代、三種の神器はまだ一つしか見つかっておらず、その一つすらその時の最大権力者であった「織田延永」が部下の謀反に会い神器と一緒に燃え尽きたという説が有力である。


神器の存在をまだ諦めていない人達もいる。



そして私たちもそれを巡る戦いに巻き込まれるとは知る由もなかった。



「彩奈、戻ったぞ。」


「お帰り、ソラ。」


ソラと言われたのは先程の青年だ。

本名は真田 空  18歳。

身長は175cmほど。

顔は整っていて髪型は黒髪でややショート。華奢な身体をしていて和服で腰にはボロい鞘の刀をぶら下げている。


彩奈と言われた女性は

160cmほどでスタイルがとても良い。(自称)

本名は神楽坂 彩奈でソラと同い年。

茶髪でセミロングだが普段は後ろで縛っている。

目はくりっとしていて、鼻もスーッと筋が通っている。

彼女は白地にピンク色の花柄和服を着ている。


むしろこの国の人の普段着は和服である。



「本当すごいわよね。こんなイヤリングをするだけで離れているのにイヤリングを通して会話できるなんて。」


「あぁ。さすが魔道具なだけある。」


先程の独り言のようなモノは会話であった。

お互い耳につけるだけである程度の会話は出来るため重宝されている魔道具の一つである。

彼女が安全な所から確認して指示をだす。

それをソラが実行していた。と言うわけである。


「いやぁ〜ソラも慣れてきたわね。

1ヶ月前くらいに会ったばかりの時は

 『俺は侍だ。何でも屋なんかやらねぇ!』って言ってたのに。」


笑いながら彩奈はソラに話しかける。


「俺だって本意じゃねえよ?

 師匠から学んだ剣術をこんな事に使ってるし、、、」


「でもそれもどうかわからないでしょう?

 ちょっと前まで記憶喪失だったんだから。」



ソラには一部の記憶が全くない。

目を覚まし、気付いた時には滝のすぐ側に倒れていた。

何故そこにいたのかや、人の記憶は残っていないが、常識的な事、彼の剣技はほぼほぼ覚えていた。


そこを通りかかった彩奈がたまたま拾い

仕事を一緒にするようになったのである。

彩奈自体は色々と顔が効く。

その中で彼らは何でも屋をするようになったのであった。



「そっちこそ、俺が居なかったら

 コソ泥にしかなれなかっただろう?」


ソラは鼻で笑いながら彩奈を小馬鹿にする。


「私は1人でも何でもできましたー!

 ただ可哀想だから一緒にやってあげてるの!」


彼女は割と意地っ張りである。

彩奈は何かを思い出した様にポケットへと手を伸ばす。


「でも、これ気になるわよね。」


薄暗く鈍く光る石を取り出す。

この前の依頼で手に入れた宝石の中に入っていた。

売りに行ったが、これだけ値付けがつかないので持って帰ってきたそうだ。



「明日は依頼もないし、隣村に行って鑑定して貰うわ。」


そう言って彼女はポケットに仕舞うのであった。


 

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