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この世界における二〇一七年は、関東情勢を決定的に変化させる不可思議なことが起こった。
千葉県を中心とする関東地方の東側が、一夜にして消失したのである。
六月一五日の早朝、人々が目覚めるときには、既にそこは太平洋の一部分と化していた。
ここで消失した地域を大体ではあるが、紹介したいと思う。
まず、旧千葉県域。
・安房・上総と、下総の大部分がこれに該当。
・京葉工業地域での化学産業が供給されなくなったことを筆頭に、日本の貿易面から大きく影響を与えた。
次に、東京都域及び埼玉県域の一部。
・下総の範囲であった隅田川東岸部分。
・この範囲には、中央区や江東区の東京臨海部なども含まれていたため、残された首都圏の経済は混乱に陥った。
・特に豊洲にある日本最大級の市場を失ったことは、関東のみならず全国に波及するほどの大打撃であった。
・そして埼玉県でも、三郷や吉川などの市町村を失った。
・しかしこちらは東京臨海部ほどの影響を与えることはなかった。
そして最後に、旧茨城県域。
・専門家の間では、香取や取手の飛び地や、旧葛飾郡の領域がが原因ではないかといわれている。
・古河市を通過していた東北本線及び東北新幹線が分断され、こちらも混乱を増幅させる要因となった。
結局、残された本土ではこの現象を、発生した二〇一七年に因んで「丁酉事変」と呼んだ。
あまりにも唐突な出来事であった上に、手掛かりが何一つ残されていない状況で、政府もついに匙を投げたことも手伝って、二〇一九年にはこの事変は歴史の闇に葬り去られることになった。
そして、人々は東京都の東には太平洋しか存在していないというのが常識となり、各地に残された橋は謎の建築物という扱いを受けた。
こうして、そこに「千葉」という土地があることなど、国民のほとんどが忘れてしまっていた。
そんな現在の状況を打破するために、たった数人の青少年グループを中心として一つの蜂起がおこったのだが、それはまた別のお話。
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