風の刃

 レッドは商人から買った個人用ヘリコプターに乗り込んだ。ゴツマの古い屋根がどんどん小さくなる。目指す山はゴツマの西側にあり不気味な崖が切り立っている。


 すると突然、青い光の玉がレッドのヘリコプター目掛けて襲い掛かってきた。




「来やがったな」




 レッドはギリギリ青い玉を交わすと、それ以降玉は飛んでこなくなった。サンガオーが呼んでいる、とレッドは思った。険しい山肌の中に薄暗い中世の城が現れる。不気味な城の入り口にレッドはヘリコプターを止めた。




「ここか」




 薄暗い廊下が見え、その奥からとてつもない邪気が放たれている。




「なんか嫌な感じだな。まるで邪気が僕を追い出そうとしているようだ」




 人々を恐怖で支配し、魔法で怪物にして楽しんでいるサンガオーの邪気はどんな悪党よりも強いのだろう。




「僕はオズカシ村の剣士レッド。サンガオー出てこい」




すると不気味な声が響いた。




「家畜がしゃしゃり出てきたか」


「家畜だと?」


「ああ、お前らは家畜だ。そして俺が王だ。なぜならここは魔法使いの国だからだ」


「お前は……」


「なんだ? 見たところ剣士みたいだが、まだガキだな。無様に死ぬか、死んでから無様になるか選ばせてやる」


「ふざけるな!」




 レッドは剣を抜くと




「赤竜巻斬り!」




と叫び、刃が光を帯びたかと思うと、途端に強い風が吹き荒れ、サンガオーの城を粉々に破壊した。




「やったか?」




レッドの予想に反して、煙に巻かれた城跡から人影が姿を現した。




「やるじゃねえか。見事な技だ」




 レッドは驚いた。この技は自分の周り一帯をすべて斬りつける技。岩をも粉々にしてしまう。だがこの男には利かなかった。




「俺様が、サンガオーだ」




 サンガオーは小柄な人間の男で、深緑のスーツに身を包んでいた。端正な顔立ちにホージロが言った通り引っ搔き傷がついている。




「魔法使いと手合わせしたことはあるかな?」


「ない。お前こそ剣士と戦ったことはあるのか?」


「ふっ馬鹿め。いくらでもあるぞ」




 レッドはサンガオーに剣を向けた。




「じゃあ、風の刃と戦ったことは?」




 レッドの剣は赤く光り小刻みに震えている。




「ほう、見せてもらおうか」


サンガオーは不気味に微笑んだ。

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