The Evil Within(サイコブレイク)

 EPIC Gamesにて"The Evil Within"が期間限定で無料配信されていたのでプレイ。


 本作は、日本版では『サイコブレイク』という名前になっている。PC版は"The Evil Within"というタイトル名で、日本語字幕なし。ただ、日本語化MODは存在する。

 私は日本語化MODを使わず英語でプレイしたが、さほどテキストは出てこないので、多少の英語読解力があれば、プレイには支障ない。


『バイオハザード』を手掛けた三上真司が立ち上げたTango Gameworksの開発したゲームで、そういうこともあってか、システムは『バイオハザード4』に近い。キャラクターの背中がやたらと近いTPS視点で、わざと視認性や操作性を悪くしているアレ。


 さらに、元々は画面の上下にでかい黒帯が入って、さらに視界が悪かったらしい。現在では、この黒帯はコンフィグでオフにできるようになっている。やるなら速攻オフにしよう。ついでに、デフォルトのFPSは30になっているので、60に変えておくことを勧める。

 ただ、本作は最適化がきちんとできていないらしく、フレームレートが安定しない。画面内にキャラクターが増えると酷いカクつきが起きる。



 ゲーム内容は『バイオハザード』をアクション寄りにして『サイレントヒル』風味にした感じ。Tウィルスの代わりに精神病によってゾンビ化した敵に襲われるので、命中精度がやたらと悪い銃とかで倒し、マッチで燃やしながら進めていく。


 ことあるごとに非現実的なシーンが織り交ぜられ、突然変な世界に入り込んでしまったり、さっきまで足を怪我していた主人公が突然走れるようになったりする。

 私は未クリアなので本作のオチはわからないが、おそらく、精神病患者の恐怖が現実世界に影響したことで怪奇現象が起きているとか、そういう話だろうと思われる。


 ステージクリア型となっており、『バイオハザード』みたいに同じ場所をオリエンテーションするのではなく、次々と新しい場所に進んでいくタイプになっている。


 また、キャラ強化の要素がある。ステージの各所には薬瓶が落ちており、それを拾って消費することでプレイヤーキャラを強化することができる。


 全体的な雰囲気はサバイバルホラーだが、木箱をぶん殴って破壊したらアイテムが出てくるという、古典的なアクションゲームの要素があり、雰囲気が台無し。


 ステルス要素があるものの、基本的にはアクションゲーム寄りで、敵を回避して進めようとするとかえって難度が上がる。それよりは、出てきた敵を片っ端から倒して燃やしたほうが簡単。ステルス要素は敵を回避するのではなく、弾を使わず敵を倒せてお得、という位置付け。



 本作は、最序盤に関しては、結構ちゃんとサバイバルホラーしていて雰囲気もいい。チェーンソーを持ってうろうろしている敵を、ロッカーに隠れたり、瓶を投げて気をそらしたりしながらかわして病院から脱出する。


 しかし、銃が撃てるようになった途端、アクション要素が強くなる。とりあえず敵を倒して進めるゲームに。

 それはそれで構わないのだが、問題は、『バイオハザード4』的な、わざと操作性や視認性を悪くした視点と、アクション重視のゲームは相性が悪い、ということ。


『バイオハザード』シリーズは、どちらかというとアドベンチャー要素のほうが重視されている。だからあえて敵を倒したりするアクション要素に制限を加えており、それでも許される(私個人の意見としては、どうあれわざとプレイヤーの操作性や視認性を悪化させるシステムは好きではないが)。

 しかし本作はアドベンチャー要素が薄い。ステージクリア型のアクションゲームである。なのにアクション要素に制限を加えられているのはアンフェアに感じる。


 それに拍車をかけているのが、初見殺しのトラップまみれのステージ構成。とにかく本作ではトラップが多い。トラバサミやワイヤートラップ、死んだふりゾンビ、視界外から突然沸いてくるゾンビ軍団、資源が少なく使い方を誤ると詰む、など。


 本作は一種の死にゲーとなっており、ステージ構成や敵の配置を知った上で、効率よく敵を排除することが求められる。

 しかし、死にゲーアクションゲームという要素は、サバイバルホラーゲームと相性が悪い。


 ホラーゲームは、死ぬのが怖いからホラー足り得る。ホラーをホラーにするには、プレイヤーはすぐ死にそうになるけど、実際にはなかなか死なない、というバランスが好ましい。そうすることでプレイヤーは死ぬのが怖くなって、必死で生きようとする。


 しかし、本作のように何度も死にながらステージや敵の配置を覚えて、攻略を組み立ててリトライすることを前提にしたゲーム構成だと、ホラー要素はゼロになってしまう。死ぬのが当たり前になってしまい、なんにも怖くない。


 そして、死にゲーだと考えた場合、リトライが面倒くさいことが、このゲームの問題点となる。

 このゲームはオートセーブされるが、そのオートセーブされた地点が、リトライに適していないことがしばしばある。弾薬を使い切った後だったり、使えないスキルを強化した後だったり。

 となると、チャプターの最初からやり直したほうがいいことになるわけだが、これが面倒くさい。死にゲーなら簡単にリトライできる方が望ましい。



 私はチャプター4までプレイしたが、そこでやめた。理由は、ゲームデザインに一貫性がなく、勝手にルールをころころと変え、それをプレイヤーに伝えようとしないから。


 本作は、チャプター1では、チェーンソーを持った敵を相手に戦わず、ステルスして逃げる。どうやら倒す方法もあるらしいが、基本的には逃げ隠れしながら病院から脱出するようになっている。


 ステルス基本のゲームなのかな、とプレイヤーに思わせておいて、それが一転、チャプター3では、ステルスして敵を回避し、倒さないでいると、ボス戦が始まった時に、いままで倒さなかったザコが全員襲ってくるようになる。当然死ぬ。チャプター1では逃げ隠れして敵を回避するようにプレイヤーに教えていながら、チャプター3では逃げ隠れしたら死ぬゲームに変わるのである。

 この時点で私ははまあまあ腹が立ったが、まあ、武器を持っていないチャプター1だけ特殊なステージだったのだろうと我慢し、ザコ敵を全滅させてから、チャプター1でも出てきたチェーンソー男をぶっ殺した。


 で、チャプター4では、またボスっぽい敵が出てくるのだが、めちゃくちゃ頑丈で、いくら攻撃しても死なない。

 私はそこで行き詰まり、なんで倒せないのか、攻略サイトで調べた。すると、そのボスは不死身だから逃げなきゃいけないんだってさ。

 チャプター3ではチェーンソー野郎のボスを倒さないと進めなかったのに、今度は倒せなくて、逃げないとダメらしい。

 で、馬鹿らしくなってやめた。


 なんでチャプターごとにルールが変わるのよ。なんで、ルールが変わるなら変わるで、プレイヤーに教えないのよ。



 世間的にこのゲームの評価がどうなのか、私は知らないが、私の認定としてはクソゲーである。操作性や視認性を劣悪にし、ルールをころころと変え、それで難度を上げる。こういうのはやりがいがある難しさとは言わない。単なる開発者の自己満足である。私はこういうゲームに時間を割き、最後まで付き合うつもりはない。序盤でこれだけ酷いのだから、この先もっと酷くなるのは目に見えている。

 10年くらい前のゲームなので、多少の古臭さや洗練されていない部分があるのは仕方ないが、これはそういう問題ではない。


 今なら、このゲームをやるよりは、『バイオハザードRe:2』をプレイしたほうがいいと思う。"Re:2"もそんなにいいゲームかと聞かれたら素直に肯定はできないが、似たようなシステムのゲームとしては、"Re:2"の方がよくできていると思う。



 なお、同じTango Gameworksの開発した"Ghostwire: Tokyo"の方は、ホラー要素があるという点では共通しているが、全然別物のゲームとなっている。アクションは軽快だし、視点殺しや初見殺しもなく、よくできていた。


 "Ghostwire: Tokyo"でも、一部でルールが変わるところがあり、今まで敵をバンバン倒して進めていたのが、突然ステルスを強要されるシーンがある。しかし、それはちゃんとストーリー的にも必然性があったし、プレイヤーにも説明があった。今はバンバン倒せないからステルスで進めようね、と。そして、緊張感がありながらも、そこまで難しいわけでもない、いいバランスだった。同じメーカーが作ったゲームとは思えない。

 もっとも、"The Evil Within"の課題を踏まえて開発されたのが"Ghostwire: Tokyo"だったのだと解釈すれば理解できる。前作の課題を放置せず、ちゃんと解決してきたのだとすれば、その点は評価したい。ただ、それはそれとして、本作がクソだと思う気持ちは変わらない。



 "The Evil Within"は、『バイオハザード』の成功体験に引っ張られすぎたゲームだったのではないかと思える。

『バイオハザード』は名作だが、あれが許されたのは、ハードの表現力に制限があったからこそだと思う。わざと操作性を劣悪にしたり、視界を悪くしたりするのは愚行としか言えない。



[2023.11.04 追記]

 チャプター4でやる気を失い、もう二度とやるつもりはなかったが、"2"をクリアした記念にもう少し進めてみた。



●チャプター5


 透明な敵がたくさん出てくる。ムカつく。透明な敵って、一体何十年前のクソゲーよ。

 "Ghostwire: Tokyo"にも透明な敵は出てくるが、よく見れば風景のゆらぎなどで位置がわかるし、霊視を使えば方位を特定できるなど、対策は簡単だった。いい塩梅のバランス。これぞ良ゲー。

 一方、本作はクソゲーなので、透明な敵はマジで見えない。椅子などのオブジェクトを間に挟んで、動いたら「その辺にいるんだな」とわかる、などで一応対処できるが、リソースが厳しいゲームのくせに対処が難しいので非常に腹が立つ。


 すんげえくだらん上に間違っていたら即死する二択問題を連続で出される部屋がある。ムカつく。

 一応、部屋の落書きをよく見たら答えがわかるが、どうせ二択なので適当に押して、死んだらリトライしてもう一方のボタンを押せばいいだけ。

 開発者はこのクソ二択ゲーが面白いと思ってるのかね。


 チャプター4ではいくら攻撃しても倒せなかった女の幽霊みたいなボスを、今度は倒さないといけない。ムカつく。



●チャプター6


 すんげえ狭いところで延々襲って来くる複数の敵と戦わされる。ムカつく。

 わざと視界も操作性も悪くして、アクションしづらくしているくせに、アクションを要求するゲームにするのはやめてくれないかね。


 なお、"2"にも似たシチュエーションがあったが、"2"は視点位置を調整できるようになった上に操作性も向上しているから、特に不快に感じることはなかった。あと、所持できる弾数も増えているから、複数の敵と戦っても対処できる。

 本作は所持できる弾数がめちゃくちゃ少なく、マッチで敵を燃やしたりする動作がもっさりしているから、複数の敵と戦うのは非常に辛い。難しくても、攻略しがいがあれば楽しいが、本作の難所にやりがいはない。ただ鬱陶しいだけ。


 このチャプターはなんかボスラッシュみたいな感じになっている。何度も言うが、わざと操作性を悪くしているゲームでアクションを要求されるのは腹が立つからやめてほしい。


 そしてまた、間違ったらたぶん即死するパズルがある。パズル自体は超簡単だが、解釈の仕方が二通りあるため、50%の確率で死ぬ事になりそうである。

 というか、こんなパズルいらんのよ。つまんないし。



●チャプター7


 クソみたいな即死罠、クランクを回そうとすると決まって敵が邪魔しにくる、ワンパターンかつ面白くない演出、面倒くさいボス戦。


 金庫頭のボスは、倒すと復活するのだが、その際にいちいち画面がめちゃくちゃ揺れる。すんげえ鬱陶しい。この演出を考えたやつのモニター画面が一生ブレブレになる呪いをかけてやりたい。


 で、ボスがバルブを壊すから、新しいをバルブを拾ってきて付け直さないといけないとかいうクソ展開。なんでホラーゲーって、頭悪そうなイカれた敵が、時々突然賢くなってピンポイントでプレイヤーの邪魔をするのかね。

 肝心な時にエンジンのかからない車とかと同じで、この展開、面白くないのよ。もう21世紀になって20年も経つんだから、いい加減アップデートしてほしい。



●チャプター8


 また二択の即死罠。今度はちょっと頭を使う仕掛けになっているが、まあ、間違って死んだらやり直しゃいいだけだから、頭なんか使わなくてもいい。


 最後に敵から逃げるイベントがあるが、ムービーから何の前触れもなく、いきなりダッシュせねばならず、かつ、いつもと視点が違うから戸惑って一回死んだ。いつもはキャラの背後からの視点なのに、このときだけ前視点になる。


 だから、勝手に、ゲームの、ルールを、変えるな!



●チャプター9


 たまにフード男が出現して、タッチされると即死する。ほんと、即死が好きね。

 出現タイミングは時間でランダムらしく、たまに逃げ隠れするところがなくて詰むことがある。このゲームらしいクソ仕様である。


 それから、いくつか脳パズルをやらされる。脳のどこに針を刺しゃいいか考える。まあ、考える必要はなく、録音テープを聴けば答えを言っているわけだが。

 先にも言ったように、PC版は日本語音声・字幕がないので、日本語字幕MODを入れていない場合、多少、英語力が試されるシーンである。

 このパズルは珍しく間違っても即死しない。ダメージを食らうだけ。

 このパズル自体は、英語読解力さえあれば単純で面白いわけではないが、脳に針を刺すというサイコ野郎の異常行動を疑似体験できるという点では評価できる仕掛けと言える。


 でも大丈夫。ちゃんと即死クソトラップも盛りだくさん! あと、また倒せない敵が襲ってくるから逃げなきゃいけないよ!

 フード男が倒せないのは雰囲気やストーリー上の都合からわかるし、いいんだけど、他の敵はシーンによって倒せたり倒せなかったりするからわけわからんのよ。



 ここまで進めてわかったことは、やはりこのゲームは開発者の独り善がりな内容だということ。

 即死罠だらけだし、しょうもないところで突然ルールが変わるし、パズルっぽい仕掛けはいろいろあるが、どれもつまらない上に間違ったら即死だし。


 もはやホラーゲーというよりは死にゲーのようだが、死にゲーだと考えてもつまらない。


 あと、チャプター4から9まで、特にストーリーの進展もなく、ただひたすら無秩序なレベルデザインの一本道を進んでいるだけで、プレイしていて退屈という問題もある。

 


 しかし、よくここから"2"ができたもんである。"2"は見た目や基本システムこそ本作を受け継いでいるが、本作のダメな部分がほぼ潰されていて、見違えるほどまともになっていた。

 中盤以降のストーリー展開がイマイチという問題はあったが、本作のように延々ストーリーにろくな進展がないまま、クソ即死トラップだらけのダンジョンを歩かされるゲームよりは遥かにマシになっている。


 むしろ、"2"をあれだけまともに作れるメーカーが、なんで本作はこんなにダメだったのだろう。謎である。

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