ネオ・ネクタリス (3500字)

 久々に『ネオ・ネクタリス』をプレイ。なぜいまプレイするのかは言うまでもないだろう。有人火星探査が現実味を帯び、その足がかりとして月面基地を作るという話も出ているいまこそプレイすべきゲームである。これほど旬なゲームをPCエンジンminiに収録しなかったコナミは分かっていない。


『ネオ・ネクタリス』は『ネクタリス』の続編で、『ネクタリス』をクリアした者に向けて作られたゲームである。それは本作に『ネクタリス』が丸々収録されていたことからもわかる。

 というわけで、まずは『ネクタリス』について言及する。



『ネクタリス』は、月面を舞台にしたターン制ストラテジーゲーム。『大戦略』などのユニットを生産するタイプのターン制戦術ゲームが流行していた頃に、ユニットの生産ができない戦術ゲームとして登場した。


 月面基地で地球攻撃兵器をせっせと作っているガイチ帝国を打倒するのが目的で、登場するユニットは全て架空のものとなっている。ユニットにはペリカンやアルマジロなど、動物の名前が付いているが、本作最強の戦闘爆撃機はハンターと名付けられている。名前の通りに動物どもを蹂躙する。

 タイトルである「ネクタリス」は、月面にあるクレーターの名前「メア・ネクタリス(神酒の海)」から来ている。これは、このゲームの戦場がメア・ネクタリスであるため。この設定はナチスが月の裏側に基地を作っているという都市伝説から来ていると思われるが、メア・ネクタリスは月の表側にある。


 難度は、一般的な戦術ストラテジーゲームより高いと言えば高い。ただ、必ず勝てるパターンが存在し、それに気づきさえすればクリアできるので、理不尽なところはない。

 よく『ネクタリス』は詰め将棋だと言われるが、詰め将棋ほどシビアではないし、多少ランダム性がある。将棋だと相手の駒に攻撃すれば確実に取れるが、『ネクタリス』では絶対的に優位な状況で攻撃しても倒しきれない場合がある。なので、多少余裕を見て作戦を考える必要がある。


『ネクタリス』の特徴は、敵CPUの思考ルーチンがかなり賢いこと。もしかすると、今でも最も賢いかもしれない。

 普通のゲームのCPUだったら引っかかる作戦の多くが通用しない。見え透いたおとりは無視してくるし、輸送機に歩兵を乗せて敵本拠地を占領しようとしたら守備隊を配置してくる。こちらが絶対攻撃して欲しくないと思っているユニットは執拗に攻撃してくるし、通りたいと思っている道には邪魔なユニットを配置してくる。

 簡単に引っかかるのは待ち伏せで、有利な地形に布陣して待っていれば律儀に突っ込んできてくれる。ただし、悠長に待ち伏せできる状況はそう多くない。たいがいのマップは、むしろこっちがリスク承知で突っ込んでいかなければ勝機がない。


『ネクタリス』はかなり歯ごたえのあるストラテジーゲームで、表裏クリアできれば一目置かれた。ストラテジーゲームの『ロックマン2』みたいなもんである。

 そして、その『ネクタリス』クリア者に対して叩き付けられた挑戦状が『ネオ・ネクタリス』だった。



『ネオ・ネクタリス』は、前作で完膚なきまでに叩きのめされたはずのガイチ軍の残党が、またメア・ネクタリスでなんかやっているので倒しにいく話。というわけで前半の戦場は月面だが、後半は、実はガイチ帝国が火星でバイオ兵器を作っていたことが発覚し、火星で戦うことになる。


『ネオ・ネクタリス』で登場する火星は、現実の火星とは違って元気いっぱいで、火山が噴火していたりする。留まっているとユニットがダメージを受けたりする地形がある。


 ユニットの多くは前作から続投だが、その多くが改修が施された、という設定で、少しだけ攻撃力や守備力が上がっていたりする。多くは大した影響のある強化ではないが、年月を感じさせる演出としてちょっと嬉しい。射程や移動力が増しているユニットもあるので、そこは気をつけなくてはならない。特に『ネオ』から『ネクタリス』に戻ると「昔のギガントって移動力2じゃないか! 1ヘクス届かない!」といったことが起きる。


『ネオ・ネクタリス』のゲームバランスは、『ネクタリス』をクリアした人がプレイすることを前提にしている。そのため序盤から容赦なく、マップも前作に比べると複雑になっている。

 マップが広く複雑になるとCPUの状況把握が甘くなることが多いが、このゲームではあまりそうはならず、楽できないのが辛いところ。

 ただし、マップ制作者の根気は尽きたらしく、後半の広いマップになると詰め将棋感が甘くなる。攻め続けないと勝てないマップは減り、じっくりと布陣して戦えるようになるため、かえって難度は下がっていくように感じる。


 このゲームの目玉はバイオ兵器だが、このゲームでは質より数の方が重要なので、バイオ兵器がそこまで強力というわけでもない。また、CPUはあまりうまくバイオ兵器を使えていない。

 バイオ兵器をうまく使うには、成長させることと、楽な敵と戦わせて経験値を稼がせ、こまめに回復すること。完全に成長した上で経験値も最大になると、いくら質より数のこのゲームでも、さすがにめちゃくちゃ強くなる。

 しかし、CPUは育ちきっていないバイオ兵器を前線に出してくるし、あまり大事にもしない。適当においしい囮を用意すれば、すぐにバイオ兵器を前線に出してくる。そこを一気に殲滅すればいい。逃がすのだけは絶対にダメ。

 一方、こちらがバイオ兵器を使えるマップでは、バイオ兵器の特性を最大限利用して戦える。おかげで裏面の終盤マップの方が楽になる現象が起きたりする。


 結局、このゲームで一番難しいのは、表面の月面最終ステージではないかと思う。ハンターてんこもりマップ。バイオ兵器よりもハンターの大群の方が怖い。裏はハンターもりもりでなくなる分、表より簡単になった気がする。



 そもそも今回再プレイして感じたのは、記憶よりは難度が低くないか? だった。思ったよりCPUの戦術には穴がある。

 考えてみると、私がこのゲームを初めてプレイしたのは中学生のときだった。実は、中学生には難しかったけど、戦術ゲーム慣れした人ならそんなに難しくないゲームだったということなのだろうか。


 当時プレイしたときの一番の思い出は、表の月面最終面で、ハンターを倒すべくホークアイを配備して、その周囲をガチガチにユニットで固めたときのこと。どうせCPUはアホだから、ハンターで周囲のユニットを攻撃しに来るだろう。そしてホークアイは倒しきれないだろう。そしたら次のターンでホークアイでハンターを倒してやろうと思っていた。

 そうしたらCPUは、全力で的確にその防御陣形に穴を開けて、ホークアイを撃破してきたのである。ホークアイが最優先ターゲットだとわかっていなければできない戦術だった。

 あのときのトラウマが、このゲームのCPUの実力を過大評価させていたのかもしれない。


『ネクタリス』にはPS版もあるのだが、私はかつてPS版をプレイしたとき、あまりにCPUが阿呆になっていたのに絶望して、早々に手放してしまった。あのときは、「なんでPCエンジンであんなに賢い思考ルーチンが作れていたのに、プレイステーションで阿呆になるんだ?」と疑問に思っていたが、実は単に私の腕が上がっていただけだったのかもしれない。


 ただ、PS版の新規マップの練り込みが足りないのは事実だと思う。おそらく各マップでCPUがどういう挙動をするのか、ちゃんとテストをとしていないのだろう。ものすごくザルな動きをすることが多い。

『ネオ・ネクタリス』が高い難度を維持しているのは、念入りにテストプレイをして、プレイヤーがCPUの弱点を突きにくいように調整しているからだと思う。


 いずれにせよ、『ネオ・ネクタリス』がターン制戦術ゲームの中では未だに最高峰であることは間違いないと思う。

 ちゃんとクリアできるようになっていて、かつ、レベル上げやアイテムの使用などで楽ができない。やりがいのあるゲームである。



『ネオ・ネクタリス』の特徴のひとつは、BGMがオーケストラによる演奏になっていること。PCエンジンのSuper CD-ROM2のゲームは、やたらとBGMが豪華なことが多い。同じくCD-DAが使えるメガCDはそこまでBGMに力を入れていなかったし、次世代機のプレイステーションになると、音楽データを圧縮して収録することが多くなったため、PCエンジンほどクリアな音質ではBGMを流さなくなった。PCエンジンのゲームをプレイすると、今でもBGMへの異様な力の入れように驚く。

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