第3話 ⑤


高校3年生。

 たぶん今年が今まででいちばん人生路線を大きく変えていくことになると思う。進学先も競技人生も異性交遊も...。今年は将来を大きく変える年となり得る。楽しみだ、存分に堪能しながら修正しまくってやる。


 クラス変動がないから2年の時と同じメンツ。もりまいも里砂ちゃんもⅯ中もいる。オナネタ素材のN山もH後もI尾もいる。色欲(性欲)が満たされる良いクラスだ。

 去年でフラグ種を蒔いておいたお陰で、お気に入りの3人とさらに仲良くなっていく。休み時間は3人のうちだれかと大体は話している。よくここまで来れたものだ。俺もやればできるものだ。

 そういえば昔のこの頃は、ちょっとした面倒事が起きてそのせいで俺は一時期クラス内でくっそ孤立してしまったんだったな。大丈夫、今回はちゃんと対策してるから問題無し。

 というわけでとある面倒事を難なく乗り越えて、3人との仲をさらに深めていく。



 「NNSもユニバの年パス持ってるの?どれによく乗るん?里砂はハリドリによく乗るんよ」

 「俺もハリドリ好きやなー。今年のハロウィンホラーナイトも絶対に行く予定やねん。一緒に回る?」

 「ハロウィン楽しみ!せやな、お互い受験勉強の合間とかにいこっか!」

 「よっしゃ!けどその前に、まずは目先のことやな。女子の4継は近畿狙えそうやな。俺ら男子もマイルには特に力入れてるしな」

 「うーん。準決までは絶対行けると思う。やっぱり私立校で強いとこ多いから決勝行くのも厳しいかも。男子のマイルは大丈夫そうやん。NNSもおるし。お互い頑張ろ!」


 里砂ちゃんとはプライベートのこともよく話す仲になれた。最近はテーマパークの話がブームだ。以前に俺が一人ユニバをしている時に、女子部員たちで遊びに来ていた里砂ちゃんたちとバッタリ会ってしまったことがあった。それがきっかけで後日彼女からユニバのことを聞かれて、お互いがかなりの通だということが知れて、幸運にもトークが盛り上がって良い関係に進展できたのだ。

 大学生時代までの俺はユニバガチ勢だったからな。色々詳しい自信がある。一人ユニバを週に1回は当たり前のようにやっていた。ぼっちを極めた俺にとって一人テーマパークなど公園の散歩に等しいのさ!!

 まぁそういうわけでますます里砂ちゃんと距離を縮めた。性交まで持っていけたら良いけど、こうやって色々話をするだけでも俺は十分満たされている。同年代の...それも好みの異性と心行くまで楽しく会話するのはホントに楽しいものだ。




 「NNSはスポーツ推薦も指定校推薦も受けずに普通に受験して大学行くの?うちは指定校で狙おうって考えてるんやけど...やっぱ夏休みまではちゃんと受験勉強した方が良いやんな?」

 「確かもりまいが狙ってるのは関大やったよな?もりまいの成績ならほぼ確実に推薦は取れると思うけど、やっぱ念のために勉強しといた方が良いかもな。夏休み...たまにで良いから赤本とかセンター試験の情報のやりとりとかせーへん?情報交換とか対策の話合いとかさ、息抜きのつもりで」


 もりまいは本来のルートでも指定校推薦で関西圏の難関私大に受かってたな。俺も一時期は彼女と同じ考えで私大に受かろうと考えていた。けどそうしてしまうと今までの勉強に費やした時間が無駄になるのでは...と変な考えが出てきてしまって、普通に受験しようという考えになった。それで確実に取れたであろう1つしかなかった指定校推薦枠を自ら辞退してもりまいに譲ったのだ。

 卒業式前の時には、彼女から感謝されたっけ。俺が指定校を辞退したお陰で関大に入れたーって。同時に俺が受験を失敗したことを凄く残念がってもくれた。あの時はかなり親身になってくれて、そこにガチ惚れしちゃったなー。

 もちろん今回も指定校推薦は取らない、必要無い。


 「おお~~ええなぁ。また二人で色々情報交換し合ったり赤本の研究とかもしたいなー」

 「ああ。んで、勉強以外にも何か、ヤろうぜ。カラオケの時みたいに」

 「え......もう、しゃーないなぁ......///」


 もりまいとも順調に関係を深めている。胸を触っても拒絶されて嫌われないレベルにまでいっている。股を開いてくれるところまでいきたいものだ!




 「部活に休みがあったら陸上部の応援しに行っても良い?大阪IHなら行けると思うねん」

 「マジ?是非来て欲しい!応援の数が多いほど力が増すのはホンマやからな。来てくれたら嬉しいわ!」

 「オッケー。私NNSが出てる公式のレース観たことないから観たいからな。休みあったら絶対行くねー」

 

 Ⅿ中が応援に来てくれるとかテンション神上がりだ。もしかしたらとんでもない記録が出そう。


 「俺もソフト部の試合に応援に行って良い?たぶん都合がつくと思うからさ」

 「うん、来て来て!試合で勝てたら何か褒美ちょうだい!」

 「はっはっはー。ええよ。その時は尽くしてやろうではないかー(君のお体に快楽という名の褒美を与えてやろう!!)」


 イイ感じにⅯ中とも良好関係を築いている。

 今年は一気に多くのヒロインとイイコトが出来るかもしれない。ヤってやるぞ...!



 高校3年生も、かつては失敗ばかりしてしまってきた。それも...取り返しのつかないクソな失敗をだ。

 部活では、新学期が始まる頃には何とかケガを完治させることができたものの、冬季でロクに練習を積めなかったせいで試合で泣く羽目に遭って無様に散って個人チャレンジは終わった。悔し涙を滲ませながら帰ったあの時間は今でも鮮明に思い出せる。それだけ納得がいかない、最悪な最後だったからだ。

 陸上競技は高校時代ではちっとも楽しむことができなかった。成長した喜びなどほとんど感じられず、クソみたいな結果しか残せなかったクソ野郎だった。本来の俺は、そんなしょうもないつまらない弱っちいゴミ競技人生を3年間送っていたのだ。

 勉強...受験もロクなものじゃなかった。

 1年の頃からずっと無駄に時間を費やして席次1位を保持し続けてきた。学校内の勉強が出来るからって実力があるってわけじゃない。俺の学力は所詮は付け焼き刃のものだった。ハリボテだった。ほぼ毎月に模試を受けては毎回クソな結果が返ってきて下を向いて頭を抱えるばかり。

 「学年内トップ成績だったから俺は皆よりも偏差値が高い大学へ行くんだ」などと謎のプライドが当時にはあった。それで躍起になって身の丈に合わないレベルだとも認めないで、受験勉強を毎日長時間し続けた。親に予備校の受講料や入試費用を大量に払わせておいて本命は全滅。

 あの時の自分の何が許せないといったら、滑り止め大学が受かった時点で大人しく受験勉強・本命大学の入試チャレンジを止めにしなかったことだ。滑り止めとは言っても、「産近甲龍」と言われているそれなりに有名な私大に俺は受かったのだ。秋の公募推薦入試で受かったというのに、何故潔く受験を終わらせなかったのだろう。

 あの時の俺はこう思っていたのだ。「上の大学に入っておけば就職が有利になる」...と。


 大学卒業してからの3年間で学んだ俺が結論を教えてやろう、そんなわけないだろボケが。

 偏差値低い大学出身の奴でも富士通とかに入ることは出来るんだよ。要は人間性や社交性が問われるだけなんだよ社会ってのは。

 そこを完全に勘違いしていた愚物の俺は、上の大学へ行こうと時間と金の無駄だとも分からずに勉強に全てを費やして......失敗したのだ。


 くだらない。しょうもない。愚かだったにも程がある。


 あの時の自分をぶん殴って殺してやりたいと、今も強く思っている。よくも貴重な高校時代の時間の大半を無駄に使いやがって...!もう二度と、取り返せない過去だというのに。

 学校や受験の勉強なんか所詮は役に立たない無駄知識ばかり。そんな下らないものなんか程々にしといて、もっとゲームとかアウトドアとか、高校生らしい遊びに現を抜かすべきだったのだ。

 嫌いな勉強をし続けるなんて身の丈に合わないことをした 俺の受験チャレンジは失敗を犯して終わった。

 文武ともに俺は高校では大失敗しかしなかった。実に下らない3年間だったのだ。3年生がいちばん酷かったな、やっぱ。




 少し、過去の自分について回想し過ぎたな。まぁそういうわけだった。


 だから、この年は全力を尽くして思いのままにやり直してやる。勉強ばかりして出来なかったことを今回はやりまくってやる。

 実現出来なかったことを実現しまくってやる。例えば陸上競技で全国入賞あるいは優勝、さらには日本選手権にも出る。大学受験なんか勉強しないで受かってやる。そして女子高生とのエッチもだ!!




 まずは陸上競技。3度目のインターハイシーズンが始まる。過去の俺は...個人では地区IHの予選レースで無様に散って終わった。だが今回はそうはならない。今年の俺はメチャクチャ速いんだ!

 地区IH...21秒中盤で走って余裕通過。補足をつけるが、俺は今年も200mのみにした。他の部員たちに100mや400mの出場枠を譲ったのだ。試合に出られない悔しさは俺が一番理解しているからな。躊躇なく譲った。


 続いて大阪IH...難無く1位で近畿へ進出。21秒20台と自己ベスト更新だ。他にもマイルリレーでも近畿へ駒を進めることができた。過去と違ってメンバーには俺も入っていた。ラップは48秒台が出た。Ⅿ中は部活がカブって応援に来てはくれなかった。まぁ良いや。

 さらに近畿IH。この大会に個人で出るのは俺ともりまい、T橋の3人だ。さらにリレーで男子マイル、女子4継が出場する。女子の4継は本来だったら大阪の準決で敗退していたのだが、今回は何と大阪6位で近畿へ進めた。俺が好き勝手に修正した影響なのか。まぁ良い方向に影響が出たみたいで良かった。里砂ちゃんのあの喜んだ顔は可愛かったな。


 で、近畿にはあのライバルがいる...柳生だ。彼はこの年の5月に100mで10秒01というぶっ飛んだ日本高校新記録を樹立している。彼の伝説の歴史の一つがこれに当たる。彼が国中で有名になった瞬間だ。

 さらにこの近畿IHの200m決勝で、彼はとんでもない記録を出すことになっている。そして今回もやっぱり、「あの記録」を決勝で出したのだった。


 20秒41。約2年間、日本高校記録となるバケモノ記録を近畿の決勝、しかも雨の中で出したのだ。10秒01も凄まじいものだったが、俺は200mの方が衝撃的だった。雨の中で自己新・日本高校新。外環境が良好だったならもっと凄い記録が出ていて、2020年代も彼が記録保持者になっていたかもしれない。


 しかし、俺もこの時は彼にくらいついてやった。それほど負けてはなかった。

 20秒50。この日で俺が出した記録だ。俺も、この時は絶好調だったのだ。今日が凄い記録が出るって知っていたから、それによって俺の気分も昂揚して何か凄い力が発揮した。もしくは、ここに来て超成長したのかもしれない。

 あとこんなに速く走れた要因はもう一つあった。


 「NNS、ファイト!!」

 

 Ⅿ中が応援に来てくれた。それがさらに力となった。きっとそうだ。

 しかしまぁ...チート使ってもまだ届かないか。やっぱ凄いわアイツは。けど、大学では、きっと俺が勝ってる。このチート成長はたぶん大学時代にもやってくる。見てろ、俺が日本一になってやる。

 俺は個人は200mで、さらにリレー種目...マイルリレーでも全国行きを決めた。

 かつてのこの年でもうちの学校はマイルで全国を決めたからな。チートで速くなった俺が入れば当然今回も行けるさ。俺は1走で爆走してしっかりバトンを繋げた。順位は以前より上がって5位。記録も3分15秒と速くなっていた(単純計算すると、全メンバーの400mラップが48秒70台である。つまりこの時のメンバー全員もクソ速かったのだ)。

 因みにT橋も、三段跳びで優勝して全国を決めた。15m中盤も跳んでた。スゲェ。



 さらにその約2週間後、俺は東京で行われる日本選手権への出場権が認められ、200mに出場した。高校生でスプリント種目に出場する男子は俺と100mで決めた柳生くらいだった。

 流石は大人も交えた中での日本一を決める大会だったな。出場する選手全員がトップクラスの猛者だ。100mでは当時は大学3年生だった谷縣遼人たにがたりょうとや富士通の深瀬魁ふかせかい、北京オリンピックの銅メダリストである、同じく富士通の堀原直人ほりはらなおとなどがいた。

 俺が出る200mにも、もの凄い選手たちがいた。

 ミズノの飯井塚秀太いいつかしゅうたにゼンリンの藤平謙造ふじひらけんぞう。二人とも後に世界陸上のリレーメダリストになる男だ。200mの自己記録も20秒10台を持っているトップスプリンターだ。

 さらには堀原と同じ北京のメダリストである富士通所属の高原寛治たかはらかんじ、後にオリンピックで4継リレーの銀メダリストとなる、日大生のゲンビレッジ隼人はやとなどもいる。当時はこの200mはマジでハイレベルなレース展開だった。そんなレベルの中で走ることが出来る俺は幸せだよ...!


 で、本番レースだが。予選から完全燃焼ダッシュせざるを得なかった。手など抜けるわけない。周りは全国各地のインカレや実業団でトップを獲った奴らしかいない。俺は死ぬ気で走って予選を通過した。20秒60だった。

 そして決勝。飯井塚・藤平・高原・ゲンビレッジに加え、100mでは3位だった深瀬などといったトップスプリンターたちが集う人生史上最もハイレベルなレースに挑んだ。

 スタートして上体を起こした時には内側レーンから深瀬に抜かれ、コーナー終わりには藤平にかわされて、直線の半分走った時には飯井塚はかなり前を走っていた。

 予選と変わらず死に物狂いで走ったが、結果は20秒65の7位。ゲンビレッジに僅差で敗れた。

 順位はあまり良くはないが、日本のトップスプリンターたちとこうして走れただけでも俺は満足気味だった。優勝した飯井塚としっかり握手してもらって藤平とも健闘を称え合って軽く自己紹介もしておいた。世界陸上の切符はつかめなかったが、まだ次がある。俺はまだ成長する気でいるからな!



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