第1話「俺は小学生時代をやり直す」


 デン デデデデーン ↑デデデデーン ↑↑デデデデーン デン!


 目覚まし時計が鳴っている。しかもこの音は...初代ウルトラマンの姿を模した形の目覚まし時計じゃん...。そういえばのクリスマスの時に、母さんが買ってくれたんだっけ。

 目を覚ましてウルトラマンのカラータイマーボタンを押すと音は止んだ。懐かしいなー。


 これがあるってことは......どうやら俺の希望通りの時代に来れたみたいだ...!

 まず自分の体を確認する.........手ちっちゃ!立ち上がる.........床が近い!この頃の俺ってこんなに小さかったのかー。それもそうか、なんせ今の俺は......“7才児”なんだもんな。



 時は...西暦200×年。平成もまだ十数年目の時代だ。

 そう。俺は小学1年生からやり直した。ここから始めるんだ...「強くてニューゲーム」を。


 部屋のスライド式の扉を開ける、そこにはリビングがあって、

 

 「おはよう NNS 」


 そこには俺の母さんが朝食の準備をしている姿があって、俺に挨拶をした。因みに俺の名前表記は仕様だから。


 「おはよう」


 声を発して気付く、俺の声が高い。ガキだから声変わりしてねーんだ。つーか懐かしいな何もかもが。あの食器棚も、ソファーも、椅子も、洋タンスも、勉強机も。

 テレビに至っては...アナログ放送でブラウン管型じゃねーか。2020年代からしたら絶滅種も同然だぞおい。録画なんかもこれ...ビデオカセットじゃねーか。これなんかもジャンク店かオークションでしか手に入らない絶滅種だ。この頃はこれらが主流なんだっけなー。日本の文明はやっぱ随分進化してたんだなー。


 などと色々思いを馳せつつ朝食を食べる...母さんと、この頃は同室だった姉と三人で。もうこの時点で普通じゃねーわ。大学卒業後は数年間ずっと...独りで飯を食ってたからなこの状況既にが今の俺にとっては普通じゃねーんだよな...。

 かといって別に感傷に浸ったり懐かしさのあまり涙を流すなんてことはない。「ああこの頃はこうやって3人で食事してたなー」ってだけで、それ以外の感情は湧かない。俺はドライなんだ。

 食事が終わったらまた布団で寝そべる...ことはしない。今の俺は7才児。そんなことは許されない。

 ―――今から小学校へ行くんだ。

 


 で、その小学校だが...いや~どいつもこいつもチビだな!今の俺もチビだけど。コナン君もこういう気持ちだったのかなー。舌足らずなせいか、ひらがな口調だよ全員。

 それよりも俺が気にしていることは...この俺の身体能力についてだ!

 あの神的な何かが言っていたことが本当なら、体格はこれでもパワーやスピードが25才の俺のまんまなのだとしたら...。


 因みに25才だった俺の身体能力についてだが。100mを11秒後半で走り、握力が70㎏、ストレート打ちでのパンチ力201㎏を記録、走り幅跳びが6m前半...といったところだ。まぁ一応トレーニングしていたからなぁ。高校生の全盛期には劣るが、運動していない一般の連中よりはできる男だ。

 都合良く今日は体育の授業がある。内容は...50m走。7才児だとまぁ速い奴でもギリ9秒といったところなのだが、俺はというと...


 「NNS君、8秒9...!?あれ?計測ミスかな?」


 先生が戸惑いの反応を示して、クラスのガキどもは俺を凄い凄いと囃して持ち上げてくる。

 当然本気で走ってはいない。せいぜい6割程度で走った。もの凄く力を抜いて走ってこの記録だった。

 俺は確信した...ちゃんと引き継がれていると!

 放課後帰宅してから大規模の駐車場へ行って、自分の今の全速力を確認してみた。

 同じだった、大人だった自分が最後に全力で走った時と同じ速度だった。

 間違いない。見た目は子どもだが、身体能力は大人レベルだ...!

 さらにその場で、この頃は全く出来なかった倒立をやってのけ、その体勢のまま歩行することもできた。

 バウンディングも、軽快に跳ねて前へ前へ進んだ。力を入れて跳んでみると小学生低学年とは思えない跳躍ができた。

 すげぇすげぇ!自分のことながら信じられないぜ!大人ならこの程度は大したことないだろうが、7才でこれはヤバいだろ。

 だから、当面は人が見てるところではなるべく本気を出さないことにする。かといってこのまま何もしない生活を送るのか。


 答えはノーだ。これからは習い事のスポーツで下積みをしていく!

 まず一つ目、これは既にやっている水泳。ベビークラスから始めていたらしい俺は一応水泳歴7年だ。まぁ水泳は10才で辞めたんだが。とにかく水泳はこのまま続けよう。やって損はないことだし。

 二つ目は...サッカーだ。これはまだ始めていない状態で、今から大体3ヵ月後に始めることになっている。

 今すぐ始めよう!後で母さんにサッカーやる~とか言って頼もう。

 そして三つ目...格闘技を習おう!これは本来は一切関わらなかったジャンルで縁も無かった。だが今の俺は違う。習いたいんだ、技を。相手を正確にぶん殴って蹴る方法を...!


 理由はただ一つ、喧嘩で勝つ為!

 今のうちなら、たとえ相手が高学年だろうと中学生だろうとこの筋力があれば余裕で勝てるだろう。だが高校生以上の年代が相手になるといつか俺より喧嘩が強い奴が出てくるだろう。そいつらにも勝てるよう今から下積みをするのだ。

 「強けりゃいい」って神心会空手館長のオジサンも言ってたからな。

 青春時代じゃあ喧嘩が強い奴が上に立てるのさ!!


 というわけでサッカーと同時に格闘技もやらせてくれと頼んだ。結果許しを得られたので早速その二種目を習い始めた。

ただ格闘技だけは年齢で弾かれたので今回はダメだった。仕方ないから当面は水泳とサッカーで体力とさらなる筋力増強に図るとしよう。

 さぁ下積みするぞっ!!

  

 冬...クリスマスの日。俺は親に頼み込んで(本当にガキだった頃もすごく頼み込んだ、泣き喚くくらいに)、GBAとポケットモンスタールビーを手に入れた!俺が自分の物で始めて遊んだポケモンシリーズがこの第三世代ルビー・サファイアだった。まだ初心者だったせいでプレイングがクソ雑魚で、しかもレアポケモンを倒したり逃がしたりとかしてたからなぁ。まずはここから歴史を修正していこう。俺はゲーマーにもなりたい!

 第三世代はまだ育成とか厳選とかの環境が全く考慮されてなかったからなー。せめて性格と技構成くらいはガチになろう。あと...今年観に行ったあの映画で配布されたチケットでラティ兄妹の片割れをゲットする!あの時は...倒したんだよなぁ。何てことしたんだ当時のクソガキだった俺!

 というわけで無事ゲット。性格も厳選。これで一つ、過去の過ちを修正できたぜ。

 ゲームキューブとかゲームボーイSPとかも欲しいところだが、ウチはゲーム事情には中々厳しいとこがあるから全部は買ってはもらえなかった。

 だからああいうものは全部、俺の金で買うことにする!

 今の俺はガキだからバイトとかはできないし(というかしたくねぇよ労働なんか)、賭け事も当然不可だ。だから今買うのは諦める。貯金するんだ。

 高校生くらいまでは親から毎月お小遣いを貰っていた。小1である今の俺が貰える金は精々50円程度。進級するごとに貰える金は増えるのだが、ゲーム機を買うにはかなり時間がかかるだろう。


 ではどうするか?簡単だ......一攫千金作戦しかないだろう!!

 幸い当時の俺は金をあまり使わないでいるガキだったからそれなりに小遣いが貯まっている。300円は余裕にあるようで良かった...。

 これなら、宝くじが買える!

 そしてここで、神的な何かから貰ったあの能力を使う!今は年末だから、大金が狙える年末ジャンボがやっている。

 そこで一等を当てて億万長者に......は、今はならない。残念ながらなれない、今は。

 考えれば簡単なこと。自分の口座すら持っていない小学生のガキが何億円とか当ててみろ。即親を連れてこいとかになって面倒になる。下手すりゃ将来貯金だとかでせっかく当てた金が消えるかもしれない。学費とかで消えそうだ...。 

 よって今回は一等は狙わない。せいぜい...1万円狙いだ。残念だけどな。



 というわけで能力...「過去のことなら何でも分かる」だっけ?を使って無事一万円を手に入れて、今回はゲームボーイSPを買った。ゲームキューブは据え置きだしな、母さんが何て言うか...。残念だが諦めた。まぁポケモン輸送に使えるからSP買ったのは正しいだろう。当面金はあまり集まらないかもな。本格的に稼ぐなら...高学年なってからだ。




 二年生に進級して8才になった頃、ようやく格闘技を習う機会が訪れた。とりあえず最初は空手から始める。正拳突き、中段蹴り等々、ド基礎である技の習得から始めていく。

 ド基礎とは言ったが、格闘技ド素人の俺にとってはこの段階で既に色々学ばされた。腕だけで放つのではない。体幹と腰、下半身にも力のパスを意識させて、全身を使って放つ!

 これだけでも威力が今までのと全然違っていた。意識を変えるだけでこれだけ変わるとは!やっぱり格闘技を習うと決めて正解だった。これなら正確にしっかり力を込めて...人をぶん殴れる!!

 小学生時代、特に低学年の間は筋トレとかはほぼしないようにする。そもそもする必要が無い。ガキのうちは走る、とにかく走る。泳ぐも良し、技を磨くのも良し。ガキのうちにすることはとにかく体力づくりだ。筋肉なんて後から勝手につくしつくれるからな。何よりもまず鍛えるべき要素は俊敏性・瞬発力・持久力だ。つまり誰よりも速く走って泳いで、誰よりも長くかつ速いペースで長距離を走って泳ぐのだ。ガキなんてそれだけで大体強くなれるさ。


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