世界の危機をもくろむ王子様の友人について
仲仁へび(旧:離久)
01
「本気でやるのか? この作戦」
「当たり前ですよ。王子サマ。あなたは英雄になりたいのでしょう?」
「確かにそうだけど」
僕の友人の性格が悪すぎる。
まあ、世界を危機につき落としてから、自作自演で英雄になろうとしてる僕が言える事じゃないんだけど。
それにしたってひどすぎる。
あいつとの出会いは子供の頃の事だ。
王子様としての勉強に嫌気がさしていた僕の前に、あいつがふらっと現れたのだ。
自由いなりたいなら、英雄になって強大な力を手にしろって。
そう言ってきた。
対処はただのたわごとだと思ってたけど、あいつは頭が良いらしくて、妙に具体的な計画を教えてきはじめた。
その内、何度もあいつの話を聞いてる内に、僕の気持ちは変わってきた。
あいつの考える事はどれも完璧で、穴なんてみつからなかったから、もしかしたらできるんじゃないかって、思えてきたんだ。
だから、僕達は共犯者になった。
人には言えない悪い事をたくさんして、自作自演で富や権力や名声を培ってきた。
あいつには感謝している。
あいつのおかげで、もうすぐ僕は夢を叶えられそうなんだから。
でも、それでもやっぱり、どうかなと思う。
だって、あいつ「仲間に告白しろ」だなんて言ってくるんだ。
仲間っていうのは、たまに一緒に行動する女性で、盗賊で犯罪者。
アメリアっていう名前を名乗ってるんだけど、それは本名か分からない。
計画の最期の段階で、アメリアに邪魔されたらまずいから、油断させて背中から切れって。
そのために、偽の婚約指輪まで用意してきて。
僕が言えた事じゃないけど、かなりひどくないか?
愛の言葉をささやいた相手に裏切られるなんて、僕だったら絶対キレる。
おそらくアメリアもかなりキレる。
ひどい事になる。
見かけによらず、職業にもよらず、優しい所がある彼女だけど、さすがに今回ばかりは本気でキレるだろう。
僕は今まで、町を壊滅させる、とか。
そのせいで孤児になった少女を見張るとか。
自作自演で魔物に町を襲わせるとか、色々やってきた。
でも、これはそういうのとはわけが違うと思うんだ。
うまくはいえないけど。
「本当に指輪を贈らなくちゃだめなのか? 何でよりによってこれなんだ」
「女なんてそんなものだからですよ。いくら嫌っている相手でも、好かれていたと思えば、多少はなびきます。馬鹿ですから」
「お前、何か女性に恨みでもあるのか?」
けど、あいつは自信満々だった。
これまであいつの言った事は失敗した事がない。
だからきっと、今回も成功するのだろう。
僕はため息をつきながら、贈り物のそれを懐にしまった。
僕はこれから一人の女性を、罠にはめにいく。
その事実と、文字面の悪さに表情が苦々しくなる。
たくさんの人を死に追いやっていながら、たった一人の人間を騙す事を躊躇うなんて、おかしなものだ。
まさか、僕は本当はアメリアの事を?
いや、そんなわけない。
僕はあいつと分かれて、歩き出した。
でもやっぱり、偶然の事故でポケットに穴でもあいて、贈り物を失くしたりしないかな、とか思いながら。
世界の危機をもくろむ王子様の友人について 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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