G県E市A町

@dekai3

 

 百物語の企画という事で、特にオチは無いんですが自分が高校生の時に体験した怖かった事を投稿したいと思います。

 何分、十年以上前の事を思い出しながらになるので、もしかしたらおかしい部分があるかもしれませんが大目に見て下さい。








 あれは高校二年生の夏の日だったはずです。

 当時、自分は地域の子供達を集めて少年自然の家に宿泊するボランティアに参加しており、そのボランティアで知り合った三つ隣の市の山奥にある友人の家へ遊びに行った時の事です。

 その町は自分が住んでいる町から三つ隣の市にあるのでバス-JR-ローカル線で三時間以上かかるのですが、車で直接向かうと時間かからないという田舎あるあるの距離感の場所です。

 電車でこれだけ時間がかかる原因はローカル線がめちゃくちゃ遅い事で、田舎の山の景色を見せる為にわざと遅く走っているのが売りだそうです。ぶっちゃけ自分も山奥の民なんで(いいから早く着いてくれ)とずっと思っていました。

 今では景色の他に地元名産のお弁当が出る食堂車が走っているらしいので、そっちはちょっと興味あります。


 又、この町はとある戦国武将の出身の地として有名なので、もしかしたら武将ファンの人は訪れた事があるかもしれません。他にも大正時代に関連する施設もあるという中々ディープな山奥の町です。





 家を出たのは朝でしたが、見てもしょうがない景色を見つつローカル線に一時間もかけて終点である目的の町に辿り着いた時は昼を過ぎており、ちょうど昼食を終えたばかりの友人に駅で出迎えて貰いました。

 友人は町の中でも外れに住んでいて、駅から友人の家までは歩いて30分以上かかると言われた為、それならばとせっかくなので道中にある戦国武将所縁の場所や、大正時代に関連する施設や、何か面白い物の案内をして欲しいとお願いをしたのです。

 実はこの時、自分はPCゲームの月姫やひぐらしの鳴く頃にハマっていた時期でもあり、面白そうなネタを手に入れてノベルゲーでも作れないかと思っていた事も有案内をお願いした理由の一つです。今でもノベルゲーを作りたいと思っていますが、フラグ管理面倒くさくて手付かずです。


 そして、一番最初に案内されたのが、なんと真っ黒い何かを全身に塗りたくられた飛び出し坊や。

 足の先ぐらいしかまともな部分が無く、粘度のある黒いなにかで染まっていました。ペンキよりも粘度が高そうな感じです。

 今もあの町あるのかはわかりませんが、かなり驚くのでもしも行くことがあれば地元の人に聞いて見に行ってみるといいでしょう。


 次に案内されたのは大正時代に関する歴史資料館だったのですが、なんと正面入り口は閉まっていたので、隣の喫茶店の店員に話して開けても貰うという身内パワー。

 ここは特に面白い物は無かったのですが、皇族の写真が使われている皇族カレンダーはちょっと欲しいなと思いました。売り物じゃなかったですけれど。


 で、次に案内されたのがお寺の無縁仏の群れ。

 これは正確にはわざわざ案内されたというよりは友人の家に行く途中にあったからついでに寄っただけなんですが、ここから色々とおかしかった。

 ここの無縁仏は戦国時代に行き倒れになった落ち武者を供養する為の物らしいお地蔵さん(看板に書いてあった)なんですけど、ここにあったお地蔵さんの半分以上が、頭が無いんですよ。

 最初から頭を作らなかったのではなく、何者かが首から上を折ったという感じで頭が無い。

 そして無縁仏ってあんまり見た事無いんですが、一か所に物凄く集中して雑多にお地蔵さんがいくつも置かれているってのは普通じゃないですよね?

 一応は無人の寺の敷地内にあるので適当に置かれている訳じゃないと思うんですが、例えるならエノキダケが生えているみたいな感じで、足の踏み場が無い感じでずらっと円になって置かれているんですよ。それも向きは不揃いで。

 もちろん友人に『なんで首取れてんの?怖っ』と聞いてみたんですが、『古いからじゃない?』という適当な答えが返ってきた上に、『近くの川でカモノハシの首が切られる事あったし、閉まっていた蔵から首の無い猫のミイラが出てきた事もあるから、この辺りでは普通だよ』との事。

 いや、全然普通じゃない。

 というか、G県でカモノハシが居たって聞いたこと無いんですけど?それ絶対他の動物と間違えてるよね?しかも詳しく聞くと三匹居たとか言ってるし、どういう事なんだ…


 と、この時はそんな話をしながら無人寺を過ぎて川べりを歩いていたのですが、丁度良く川の上流から結構大きい死んだ鯉が流れてきました。

 かなりびびりました。

 多分これはトンビかなんかの仕業だと思うのですが、無縁仏を見た後に動物の死体を見るのはちょっと心に来るものがあります。たとえそれが魚であったとしても。


 そこから暫く歩いて田んぼを突っ切り、杉林の横にある友人の家に着いたのですが、この杉林もちょっとおかしな場所らしく、友人が言うには『この辺りは落ち武者の処刑場だったらしくて、あの中にある途中から二股に分かれている杉は処刑の為に使っていたらしいよ』との事。

 実際にその二股の杉を見に行ったのですが、杉林の中に入らなくても同から見える距離にあり、約2mぐらいの高さからまるでサスマタかの様に二つに分かれてまっすぐ伸びていました。

 杉林なので薄暗くてしっとりとしていたのですが、先ほどの友人の説明のせいか、自分には何やら恐ろしい者が居るような感じがして杉林の中には入れませんでした。


 ここまで来ると話が出来すぎな気がしてならないのですが、落ち武者というのは農民からしたら『殺して首を持っていけば報酬が貰える上に鎧や刀を奪っても良い』というボーナスの対象で、特にG県やN県では落ち武者を『だいこうさん』と呼んで有難がっていた歴史があるんですね。


 そして、この町の名前にも使われているAという姓の付いた武将は、農民の落ち武者狩りに会って死に、首を落とされたと言われています。





 となると分かりますよね?

 地蔵や、カモノハシ(仮)や、猫のミイラに、『首が無い』というのはどういう事なのか。




 断片的な物を繋げただけなので単なる妄想のレベルですが、自分はこの時に(この町はヤバイ)と思い、その日から訪れた事はありません。

 なので、最初に書いた黒い何かを塗りたくられた飛び出し坊やが今もあるのかはわかりませんし、歴史資料館がまだやっているかどうかも分かりません。

 しかし、このAという武将は今まさにブームの真っ最中であり、NHKなんかではよくこの町の名所の映像が映ったりしています。

 その度に自分はあのうっすらと暗い杉林の事を思い出してはじっとりとした汗を掻きます。


 こうやって文章にするとあんまり怖さを伝えられなかったと思いますが、当時の自分にとってはかなり怖い体験でした。

 ちなみに、E市は他にもいくつかの心霊スポットがあるらしく、旧トンネルや橋なんかは有名です。

 特にこのA町に行く途中の橋では飛び降り自殺がよくあるそうなんですが、その死体がどうしてか首が外れており、橋の向こう側に体、橋の手前側に首という形で見つかる事があるそうです。

 気になる人は調べてみるといいかもしれません。地元の人なら直ぐに分かる情報ばかりなので、特に苦も無く辿り着けるでしょう。




 ちなみに、この友人に関する事で怖い話が他にもあるんですが、それはまたの機会にします。

 思い出しながら書くのって思ったより疲れますし、何より、近所(田舎感覚で)の事なので身バレしたら怖いですしね。

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