下(グ)というお祭り

@2138yuichi

今日の夢

 私は祖母の運転する自動車の助手席に座っていた。祖母は町で買い物を済ませた後、ちょっと市の南側に行きたいと言い出した。市の南部は田舎である。

「なんでそんな所に行くの?」

「この時期、下(グ)というお祭りをやっているのさ。古い石橋の下の神様に清水をお供えして、皆んなの家で夜通しお酒を呑んだりして楽しむのさ」

そのお祭りは私は知らないが、とても楽しそうに聞こえた。

「面白そうだね。でも、誰の家に泊まるの?」

「それは、出たとこ勝負だよ」

そう言って祖母は私に笑いかけた。

 しばらく車を走らせて、小さな川の河口についた。海ではなく湖だったのかもしれない。赤茶けた煉瓦造りの大きな鉄橋の下で、霧雨が降っていた。冬であった。

「誰もいないね」

「そうねぇ」

「ここであってるの?この橋、鉄道用だから結構新しいし、お祭りの橋とは違うんじゃない?」

祖母は、少し離れた所にあった大きな岩の向こう側に回り込んだ。私もついて行った。するとそこには、何本も柱状の岩が海から突き出ているのが見えた。

「昔はここでお祭りをしていたんだ」

祖母は言った。しかし誰もいない。私は少し薄気味悪さを感じた。

 すると雨が本格的に降り出した。そこで私達は近くのトンネルに避難した。トンネルは地面も壁もコンクリート造りの、いかにも公道のトンネルだが、電灯はなかった。しかも、50m程まっすぐ進むとL字型に左に切れており、その先から光が漏れていた。

 祖母は奥へ歩いて行った。私もついて行った。曲がり角を左へ曲がると、出口はさらに10m程先にあった。その出口から蒸し暑い熱気を肌に感じた。蝉時雨だ。トンネルの外は真夏だったのだ。

 出口の手前には工事用の看板があった。「坂から下は立ち入り禁止」と書かれていた。トンネル内は坂でないから、出口より向こうに坂があるのかもしれない。

 隣の祖母の方を向くと、祖母は小柄な少女になっていた。少女は「どうする?」と笑いかけてきた。逡巡して元来た方向に目を向けると、入り口には白い軽トラが止まり、作業服を着た男が何人か降りてくるのが見えた。罪悪感を覚えた私は、少女の手を取って出口へ駆け出した。出口の向こうにも何人か、法被をつけた男達がこちらへ向かってくるのが見えた。彼らに何か呼びかけようとしたところで目が覚めた。

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