ヤンデレに愛されて仕方が無い第四十八話
屋敷に案内された二人。
出された食事を楽しみ、風呂へ入って寝巻を着込んで床に就く。
「流石に同じ部屋では無いんですね」
襦袢姿の永犬丸士織は襖を開いて八峡の部屋に顔を出す。
「流石に同じ部屋はアイツも許さねぇだろうしな」
そう言って八峡は布団の中で天井を見上げていた。
「けど、大丈夫なんですか?」
「なにが?」
「私達、このまま寝ても……」
屋敷の周囲は東院家の人間が寝ずの番をしていた。
客人として迎えられたとしても、東院家には関係の無い事件である。
中々に気が引けてしまうと永犬丸士織は思った。
「気にすんな」
「雇った以上はアイツも仕事として活動するだろ」
能天気にそう言った。
そう言われてしまえば、もう何も言う事は出来ない。
永犬丸は他の話題を口にする。
「あの人たち、一体何者なのでしょうか?」
「何故先輩を狙っていたんでしょう……」
「俺が聞きてぇよ」
永犬丸士織は考える。
八峡義弥は考える事を放棄した。
「電気消すぞ」
そう言って八峡が電気を消す。
辺りは闇に包まれて、二人は静寂の中、眠りに付いた。
深夜の二時。
東院屋敷に数十人の人間が押し寄せる。
「八峡義弥が此処に居る」
「見つけ出して教祖様の元に」
信者たちが殺気立っている。
八峡を捕らえて教祖に謙譲する。
ただそれだけを考えていた。
時間の消耗は、彼らの苛立ちを加速させる様なものだった。
「屋敷の者は全て殺せ」
「構う事は無い。我々には教祖様が居る」
そう言い放ち、信者は屋敷の門の前に立つ。
厭穢を使い、門を破壊しようとした最中。
「貴様ら如きが、俺の屋敷に触れるな」
傲岸不遜な声が天から降り注ぐ。
信者たちは一斉に上を向いた。
重力に反する様に、東院一が宙に浮いている。
減滅術式で重力を削りながら調節する事で空中浮遊を可能としていた。
「なんだ貴様はァ!」
信者が吠える。
八峡は眉を潜めて指を振った。
空間内で自在に発生出来る虚が信者の鼻を削る。
悶える様に地面へと倒れる信者は鼻から溢れる血を両手で抑えていた。
「貴様?この俺を知らぬとはとんだ不届き者だ」
「良いか、貴様らもこの業界に足を突っ込むのならば覚えておけ」
「決して相手にしてはならない存在が居ると言う事を」
片手を上げる。五指を開いて地に降ろす。
それだけで十匹以上の厭穢が虚に呑まれて消滅した。
「ひ、ひぃ!」
力を目の当たりにして信者達は戦意を削がれた。
踵を返して逃げ出そうとする者も居る。
だが東院は逃げ出す信者の前に虚を発生させ地面を削る。
「貴様ら弱者には逃げる選択肢すら無い」
「圧倒的強者の前に、貴様らが出来る事は唯一つ」
「この俺に、
殺意に溢れる眼が信者を恐怖に陥れた。
最早、彼らに敵意は無く。怯える小動物の様に縮こまるだけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます