ヤンデレに愛されて仕方が無い第四話
「あー、やっと終わったか」
地下施設にて八峡は一日間の検査の末に開放される。
日は登り太陽が真上に浮かぶ。時刻は昼頃だ。
「これで自由な訳だが……暇だ」
「未だ術式も使えないし」
「訓練も任務も無い」
検査はしたが呪いが解けたわけではない。
なので八峡は未だ能力の使えない一般人と言った所だ。
腕を組んで寮へと歩きながら考える。
「………良し」
「遊びに行くかっ」
そして結局遊ぶ事に決める。
「一日中我慢して検査してたんだ」
「今日くらいはパァっと遊び尽くしてやらァ!」
ガラケーを取り出す。
登録されたアドレスはこの学園の祓ヰ師が殆どだった。
「つー訳で……誰か誘うか」
「一人で遊ぶのも寂しいしな」
「つか一人になると絶対自慰しそうだし」
適当に電話番号を選択する。
連絡先は怨霊遣いの
通話ボタンを押して携帯電話に耳を付ける。
「もしもーし」
『誰だ』
「オンガ―?俺俺」
『八峡か、何だ藪から
「遊びに行こうぜー」
『悪いが任務中だから
「マジかよ」
仕方が無いので他の友人に電話を掛ける。
次に電話したのは同期で最強の祓ヰ師の
「おいチビスケ、おい」
通話が繋がるや否、暴言を吐く。
『なんだ貴様』
「遊ぼうぜ」
『遊ぶ?そんな事よりも鍛錬を積―――』
「あー急に切ちまった仕方ねえなー」
と言うが八峡の指先は通話終了のボタンへと伸びていた。
続いて八峡が電話したのは全身の九割が絡繰機巧で出来た祓ヰ師・
「サルナキか?」
『どうした、やかい』
「暇でよぉ、遊ぼうぜぇ」
『………すまない。これからめんてなんだ』
「なら仕方ねぇな……」
通話を切る。定期的なメンテナンスをしているらしい。
仕方無く八峡は大本命の男へと連絡する。
「イヌ丸ー」
『どうした我が友よ?』
「暇だかんよー、遊ぼうぜぇ」
『分かったすぐに行こう』
即決。
永犬丸と八峡は仲が良い。
「流石だわイヌ丸ゥ」
「じゃあ何処に行く?」
と意気揚々に会話を弾ませる八峡。
『ん?ちょっと待ってくれ』
「あン?どした?」
数秒程、永犬丸の声が遠くなる。
そして再び声が聞こえてくると。
『……悪い、我が友、急用が出来た』
と、断りを入れる。
八峡は束の間の喜びから一気に残念そうな声を出す。
「マジィ?お前と打ち上げの話もしようと思ってたのによぉ」
『本当に申し訳ない。だが代わりに我が妹を誘ってみてくれ』
と、永犬丸統志郎は代替案を出した。
「あ?お前の妹?」
永犬丸統志郎の妹。
統志郎と士織の二人は八峡に懐いていた。
『どうした?何か不都合でも?』
「いや、男同士のじゃれ合いがしたかったんだけどよ」
女と遊ぶのも良いが、何かと気苦労がある。
何気なく男達と馬鹿をやりたかった様子だ。
『済まない、だが、我が妹も我が友と遊びたがっていたぞ?』
其処まで言われて嫌とは言えなかった。
「んー。分かった。誘ってみるわ」
『あぁ、我が妹をよろしく頼む』
「おう、じゃあな」
それを最後に通話を切る。
次に八峡は永犬丸士織へと電話をする。
『―――はい』
「よーワン子」
と永犬丸士織と通話を始める。
『あ、先輩、どうかされましたか?』
「今日遊ぼうぜぇ、無理か?」
と率直に伺った。
『行きます行きます』
少し考える素振りも見せず。
永犬丸士織は頷いた。
「んじゃ、喫茶店にするか、あの、あそこ。お前の働いてる店」
『〈雨の日の午後〉ですね。分かりました』
それと集合時間を決めて電話を切る。
今日の予定が決まった八峡。
軽く伸びをして再び歩き出す。
「さて、一旦戻って着替えるか」
そう言って、八峡はあさがお寮へと向かうのだった。
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