第六話 気持ち悪い四十代男性

さて……ようやく終わったことだし……早く、八峡くんの所に……ん?


「教祖様ッ!あぁ、教祖様ぁ!!」……おやおや、田端さん。私に近づくなと申した筈ですが?


「私は教祖様の為に存在する肉の壁です!」必要ないと言っているんですけどね。


「貴方様の傍から離れる事はありませんッ!」………はあ。四十超えたオジさんが、女子高生にペコペコしている様なんて、見たくなかったなぁ。


「それよりも教祖様ッ!何故今日は三人しか」……キミに言った所で、理解しないだろう?


「もっと御業をッ!」なんでキミに指図されなくちゃならないんだい?


「さすればより多くの信者が貴方を信仰すると言うのに!!」……そういうのは、最近になって、興味がなくなったからねぇ。


それよりも……再三言ったと思いますが、田端さん、私の傍に、寄らないで下さい。


「……何故ッ!?」何故って、分かりませんか?


「私は貴方様の為を想いッ!あなたの為に全てを捧ぐ思いをッ!」そういうのが……ボクは嫌いなんですって。


正直に言いましょうか?田端さん、単純に、貴方、気持ち悪いんです。

一番お金を払ってくれるし、会場や本拠地の改築費用を出してくれた事もありますから。色々と口出す事は止めていましたが……。


けど、それも我慢の限界ですので、言わせてもらいますよ。

気持ち悪いんですよ。会場や屋敷内に監視カメラを取り付けて、トイレや浴場、私の部屋にまで監視カメラを付けようとしましたよね?


「それは、教祖様のもしもの事があればッ!」傍から見れば……ただ女子高生を監視する変態しか映りませんよ?


「私は教祖様の為にッ!」気持ち悪い。気持ち悪い。ああ、この人はロクに鏡も見ないんだなぁ。


「あ、は?」あー、もういいや、面倒臭い。

……今ここで始末しても……「教祖様はそんな事言わない!!」……はあ?


「教祖様はッ!そんな事を!言うはずがない!!」おやおや、妄想が頭の中を侵蝕している様子だ。


「……そう、悪い穢れが取り付いているんだッ!!」……それ、あと何分で終わりますか?


「そうだ……あの男がやったに違いないッ!」……ん?


「あんなに痛めつけたのにッ!まだ教祖様をォッ!」………なんだって?今、誰と言ったんだい?キミは。


「ご安心下さい……教祖様ぁ……悪しきものは」………まさか、そんな。

「……全て、私が消しますので」…………そんな筈はない……や、八峡くん、彼を……ッ!


「あぁ!教祖様ッどちらへッ!?」そんな筈はない。そんな筈はない!そんな筈はない、のに……なんで、こんな胸騒ぎがするんだい。


ありえない、のに。嫌な予感しかしない……八峡くん。


早く、学校に、学校に行かないと。八峡くん。八峡くんっ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る