笑わない数学者

◎閉鎖場所でのミステリー

◎人物が面白い


 森博嗣さんのS&Mミステリーシリーズの第三作目(実際に書き起こしたのは二作目)。

 プラネタリウムもある数学者の変わった家で、クリスマスパーティーが開かれる。そこへ招かれた犀川助教授と西之園萌絵が、発生した殺人事件の真相に迫る。


 僕はトリックに凝った古典的なミステリーが、あまり好きではない。ただこの作品はとても面白かった。トリックもシンプルで良かったのだけど、それよりただちょっと変わった人物の犀川さんの行動を逐一追っていくだけで、その様子を描く文章を読んでいくだけで、すごく楽しかったのだ。たぶん、僕は普通の読者さんとは作品に求めるポイントが異なっている。

 元大学助教授という肩書きを持つ作家の森博嗣さんだが、彼が書く文章は全然硬くなくてとても面白い。日本の小説家の中で僕が一番好きな人物である。小説家というより、人として面白い。家の庭に鉄道を走らせるような人物ですからね。


 余談ですが、僕が少し前に書いた『眠らない空想家』という作品のタイトルは、この『笑わない数学者』を参考にしました。ちなみに内容はまったく違います。

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