言葉少なに
みなづきあまね
言葉少なに
「ねえ、これ見た?」
彼女は私にレジュメを差し出し、私の名前を指さした。厳密に言えば、その隣にある彼の名前も指さした。
「うん、まあ。」
「笑っちゃったよ〜」
「笑い事じゃないって!」
「ニヤニヤしちゃう。」
彼女は不安そうな私を他所に、笑いながら私を見た。
「まあ、この間も一緒に帰ったけどね。」
「じゃあいいじゃん。仲良しみたいで。」
「でも話が弾むわけじゃなし。」
「あー、確かに一問一答タイプだよね。」
私が好きな彼はリアリストなタイプで、人と話すことはあまり得意そうではない。私も人見知りなうえ、好きな人兼話が上手くはない人と会話するとなると、身構える。
「彼の仲良し君に相談したら、“たしかに饒舌ではないし、自分からは話しかけることはあまりないやつだからね。話しかけて終わって、席に戻ったらほっとしてると思うよ。”って。分からなくもないけど、本当かなあ。」
私がため息をついた矢先、彼女は思い出したように言った。
「そうそう!今週中にやらないといけない今週末のイベント用のチェックあるでしょ?月曜の夕方先輩に仕切りを頼めるか聞きに行ったらさ、同じ部屋に彼もいて、2人で仕事してたみたいなの。」
「結局、先輩は火曜は無理ってことで、別の人が金曜にやってくれることになったんだけど、火曜は私もダメ、先輩もダメ、金曜に引き受けてくれた方もダメ、って話になって、“じゃあ・・?”って先輩があなたの名前を出したわけ。」
「そしたらすぐ彼が、“いや、その日休みですよ”って。今の今まで全く会話に入ってこなかったのに即答、笑。私もあなたの休みくらい知ってたけどさ、普通そこそこ仲良しか同じグループじゃない限り人の休みなんて把握しないだろうに、なんか把握してる〜って内心ニヤニヤしちゃった。」
彼女がまたこちらの様子を伺っている。私は話を頭の中で整理しながら、当時の様子を再現してみて、嬉しいような恥ずかしいような、そしてなんで?!という疑問が湧いた。
「まあ色々人生あるからね、楽しみにしてるよ!」
そんなこと言われても・・全然特別な意味はなく、単純に知ってるから答えただけかもしれないのに。
でも私の知らないところで自分が話題にされたことだけでも嬉しく、結局舞い上がってしまった。
言葉少なに みなづきあまね @soranomame
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