赤色の国語辞典
@Aqua-Armeria
保管と保存
”ねえ、私の宝物、保管しておいてほしいんだ。”
君が笑って、僕に渡した白い革のケース。
あれから10年が経った。宝物は茶色革のケースになった。
「やあ、久しぶり」
お互いの両親の転勤で離ればなれになった彼女は、僕の前にまた現れた。
一人暮らしのドキドキと一緒に、それぞれの土地から入学を決めた大学の近くへ。
記憶に残る真っ黒な長い髪は、美味しそうな紅茶色に染まっていた。
「はいこれ、預かっていたもの。」
僕は彼女に宝物を返す。色を変えてしまった事を申し訳なく思っていた。
「約束を守ってくれてありがとう。」
「でも色を変えてしまった。」
「保管して欲しかっただけで、保存して欲しかったわけじゃないから大丈夫!」
髪色が変わった彼女は、昔と変わらない素敵な笑顔で笑った。
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【保管】-する (他サ) 他人の物を預かって管理する事。
【保存】-する (他サ) 当面は必要としなくなったものを、後の必要 (活用) を考えて、そのままの状態を保たせて取っておくこと。
―――――――――――――――――――― 新明解国語辞典 第七版 (三省堂) より
赤色の国語辞典 @Aqua-Armeria
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