第73話 最終回 呪いじみた縁 死がふたりを分かつとも

 其れから幾年月。

 彼岸に旅立った陽希はお盆に帰って来ない事から、恐らく早くも輪廻転生して現世に居るらしいが、こうなってしまうと追いかける事も出来ないので其れなりに寂しい、神と言えど自分の事と身内の占いは出来ないので、次の生を無事生きている事を祈る事しか出来ない。

 あ奴の今生はアメーバかのう? ミジンコかのう? 蛍なんかでも良いかのう? そんなライフサイクル短めの生き物を思い浮かべて苦笑を浮かべる。

 まさか仏門入りして居る訳でも無いから、死亡後の布教用坊主派遣で異世界入りする事も無いだろうし、あの世に居ないのなら現世に居るぐらいの予測しか出来ない。よく陽希とチームを組んでいた保は仏教式の葬式で大々的に死後の世界に送り出された様だが、陽希はそっちでは無いので一安心かのう?

 そう言った益体の無い事も考えて見たりもする。

 孫と一緒に駅前のコーヒー屋で極甘のコーヒーブレンドを注文して、外の席でぼんやり人混みを見つつ時間を潰す。

「見つけた! 葛様! 結婚してください!」

 思わずきょとんと目線を上げ、きょろきょろと声の主を探す。

 聞き覚えの無い声だが、人違いか? と言うには、はっきりと名指しで、此方を真っ直ぐに見つめている、年の頃は6歳ぐらいの小さな可愛らしい少年が居た。

 得意気に言い切ったぞと胸を張る少年。

「あれ? おじいちゃん?」

 一緒に居た孫の方が先に反応した。

 輪廻転生で再び出会うのは万に一つ位の確立だ、いくら縁が有っても早々出会う事は無い。

「そんなアホな?」

 落ち着く為にコーヒーを一口飲みつつ、内心でいくら何でも早すぎるとツッコミを入れつつ霊的に【視る】、記憶にも有る、呪いじみた縁がこんがらがった小指が真っ先に目に飛び込んで来た。

 ぶふぅっ!

 思わず噴き出した。

「全くお婆ちゃんは・・・・噴き出すならせめてブラックにしてよ・・・・」

 ベタベタする・・・・と、孫がブツブツ言いながらテーブル供え付きの紙ナプキンで後始末を始めた。

 確かに輪廻の際、記憶やその他は漂白される、肉体の記憶に由来する物は先ず持ち込めない。だが魂に刻み込まれた業(ごう)や呪いは洗い流され切れずに、来世に持ち越される事も有るのだ。つまりこやつは・・・・

「お久しぶりです! 約束通り! 今生でもお願いします!」

 子供らしい後先考えない微妙に舌足らずな言い回しで続けて来た。

 少し離れた所で、今生での陽希の両親らしい2人がいきなり何を言い出すんだこの子はと言った様子でオロオロしていた。

「わははははははははは!」

 思わず腹を抱えて笑う、笑い過ぎてお腹が痛い、泣くほど笑える。

 周囲の視線が集まるが気にする事も無い。

「10年早いわ!」

 そう言って小指を立てて突き出した。


 当然のように小指と小指が絡む。

 今度約束違えたら、今度こそ本気で1000本飲ませるからな?

 拳万でミンチにするからな?

 寧ろちょん切るからな?

 そんな意味を込めて笑いながら睨み付ける。

 通じたのか、縮み上がった様子だ。

 嘘を付いたおかげでも有る縁だが、其れは其れだ。



 キャラ解説

 孫

 人と狐のF1雑種は人の形質が顕性もしくは優性、F2雑種から隔世遺伝で狐の形質が出たり出無かったり(劣勢もしくは潜性、メンデルの法則のしわしわ扱い)。

 この孫は、まるっきり銀孤としての形質を継いでいたので、人よりは神仙よりの仙狐、若しくは霊狐として育てる前提で葛様が引き取った。

 見た目はまるっきりちび葛。

 又、霊孤や仙孤は神の一歩手前の段階なので、寿命はほぼ無限。

 同時に、そう言った前提なので成長は遅め。



 後書き

 これにて、神と人の凸凹コンビな話は終了です、噴き出して笑って小指を突き出す一連の流れの葛様がお気に入りです。

 長々とお付き合いありがとうございました。


 因みに、陽希の前世で葛と合っているとした場合。前回あんな事言ってましたが、刀の手入れが板に付いていたのを手掛かりとして、三条宗近の弟子(西暦1000年代)として子狐丸の時に一緒に鎚を振るっていたとすると辻褄が合います。

 三条宗近の弟子はいっぱい居るので整合性的には大丈夫。

 三条宗近本人では、あの人は神に成っているので、輪廻転生はして来ません。

 更に晴明の親父(西暦900年代)の生まれ変わりが其の弟子だとすれば、晴明が報告受けて笑っていたのも納得されるかと。

 そうすれば、刀のお手入れ中に葛様が興味深そうに見ていたのも納得で、期間として1100年も一途な葛様が出来上がります。

 但し、一回でも口説かないと相手してくれないので、此奴だから無条件にって訳じゃありません。其処等辺割と古風です。

 ついでに、其の来歴なら咄嗟でも子狐丸を問題無く抜けたりすると思われます。

 巫女服の裾縛って鎚を振るってトンテンカンしていたとか、汗が浮かんでたとか、最後の仕上げで研いでたのを横で興味深そうに見てた前世の出来事とかそんなのとかです。

 陽希の童顔は、戦国時代の頃の前世、他の作者の作品ですが、コバルト文庫の「姫神さまに願いを」に引きずられていますが。そっちの影響が有った場合、能力も呪いと祝福引き継いでエライ事に成ります、流石に其処までパクってられません。オチの関係上、元ネタでは無く影響を受けた物ですね。


 感想、応援、評価の☆☆☆、レビュー等、気軽にお願いします、読者の方々が思っている以上に影響がデカいのです。


 そんな訳で。裏ネタ語ると切りが有りませんが、この辺で終わります。どっとはらい。

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