第63話 神様式ドーピング移動

 

「じゃあ、偶には戦闘モードで行くとするかのう?」

 葛様が深呼吸を始める、深く呼吸するのに合わせて、臍下丹田に氣力が溜まり、其処から全身に循環して膨らんでいく。例の蜂蜜酒を飲んだおかげか、氣の循環が良く見えた。

 最期に少し呼吸を止めると、今度は肺に氣が溜まって行く、大きく吐き出すと、葛様の身体が靄に包まれる、靄が晴れると何時もより成長した葛様が居た。

「どうじゃ?」

「ええと・・・・格好良いです」

 良い感じの誉め言葉が出て来ない。

 何時もは子供っぽさは成りを潜め、手足はすらりと長く、大人っぽい。

 服装は何時の間にか紅白の巫女服に成って居た。

「小股の切れ上がった良い女と言うのじゃぞ?」

 にししと言う感じに笑みを浮かべる。其の笑顔は魅力的だが、表現は古いと思う、と言うツッコミは止めておいた。

 因みに、手足のすらっと伸びた良い女と言う意味だと言うのは如何にか判ったが、やはり古すぎて何とも言えない。

「其れじゃあ、行って来る、帰り道の確保は頼んだぞ?」

「はい、ご武運を祈ります」

「行ってらっしゃいませ」

 軽い調子の挨拶に、一三さんと部長が応える、骨は拾ってやるから行って来いと言う感じの、何とも言えない表情が浮かんでいた。

「いあ いあ はすたあ くふあやく ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん ぶるぐとむ あい あい はすたあ」

 葛様が囁くように唱える、ハスターの呪文?

 周囲の空気が渦巻き、葛様が風を纏う。

「行くぞ?」

 次の瞬間、小脇に抱えられた。

「え?」

 呆然とした一言しか浮かんで来なかった。

「口は閉じて置け、舌を噛むぞ?」

 悪戯っぽく言われ、次の瞬間、葛様が虚空に一歩踏み出した。

 全身の内蔵が置き去りにされるような衝撃と、ふわりと浮かぶような感触だった。

(ひいええええぇぇぇ!?)

 内心で良く分からない叫び声を上げる。

 何十メーター単位の凄まじい跳躍だが、島までは届かない、岩場も無い場所に落下する。

 水面に落下する瞬間、葛様が符を投げると、水面に符が一瞬張り付き、海面が凍り付く。

 凍り付いた水面と符を踏み付けて足場にして、次の一歩を跳躍する。

 小脇に抱えられてがっくんがっくんして居る内に無事島に到着した。

 時間にして10分もかかって居ない筈だが、永劫にも感じられるほど長い時間だった。

 とさりと砂浜に降ろされる。

 視界が揺れる、余りの速さに後ろに滞った血液が巡り始める。

「これぐらいで音を上げるな、まったく、未だ未だ修行不足じゃな?」

 やれやれと言った調子で言われた、無茶を言われて居るのは良く分かる。

 が、男の子として言われっぱなしになる訳にも行かないので、必死にやせ我慢して起き上がった。



 追伸

 神様にしても、八百万の国ですので、割と信仰フリーダム。

 蜂蜜酒のドーピング分で氣を練ってエクトプラズムに変換して化けで身長を伸ばしてます、別に其処まで身構えなくても、蜂蜜酒無しでも時間はかかりますがこの化け変換は出来ます、ぶっちゃけ戦闘用と言うより気分と、陽希抱えて跳ぶのに引きずりそうだからです。

 そもそも小狐丸だったらこの人に限って言えば、来歴の関係上身長関係無しに振り回せると言う。

 対してハスター使う場合は蜂蜜酒必須なので、ぶっちゃけ移動用。

 最近では似た様なシチュエーション、ヴァイオレットエヴァーガーデンで傘持って風に乗ってふわふわしてましたけど、この人にかかるとこの通り、ゴリゴリの力押し。

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