第54話 距離感が近い二人

 ぱちりと目が覚めた、現在地は自宅の自室、今日は土曜日で休み、昨日は大分すごい雨が降って居たのだが、雨音が凄すぎて逆に良く眠れたようだ。

 一緒の布団には、裸同然の葛様が寝ていた、相変わらずと言うか、最近距離感が更に近い、髪色が白で耳がはみ出して居る辺り、かなり油断している状態だ。

 思わず耳に触れる、軟骨系の感触と、滑らかでふわふわする毛の感触が心地良い。

 さわさわと撫でていると、逃げる様に耳が移動して行くので、追いかける様に撫でて行く。

 気が付くと、葛様の目が明いて居た。

「何やっとるんじゃ?」

「もふもふしてます」

 それ以外何をやって居るのかと言われても困る。

「そうか・・・」

 呆れた様子で返して来た。

「楽しいのか?」

「かなり」

「まあ、良いがな?」

 堂々とし過ぎてツッコミが来ない、拒絶されないのを良い事に、耳をはもはもして見る。

「どんな方向の奇行じゃ?」

 流石に呆れられた様子だ。

 暫くされるがままに成って居たが、そろそろ限界だったらしい。

 少し身じろぎするようにして態勢を整えている。

「いい加減に・・・・」

 がしりと腕を掴まれた。

「朝飯でも作って来い!」

 ぐるんと投げられたので、素直に投げられつつ受け身を取って着地する。

「はい! 少しお待ちください!」

 そう返事を返して台所に向かった。

 因みに、最期にちゃんと手元に引っ張ってくれたので、受け身はとても楽だった。


 朝食を終えて、適当にTVをつけてニュースを聞きつつ、食器を洗う。

 ニュースでは昨夜の大雨の結果として、各地で洪水一歩手前の状態で大変だったとか、地下大神殿が活躍したとか、川を見に行った人が流されたのか行方不明に成ったとか、そう言った事を延々と流して居た。

「所で、今日は如何するんじゃ?」

 洗い物を終えた所で、葛様が今日の予定を確認する。

「土曜で休みで、特に仕事も入って無いんで・・・・」

 少し貯めて。

「デートでもしませんか?」

 切り出して見た。

「ん?」

 葛様がキョトンと此方を見る。

 儂と、お主で? と言う感じで葛様の指が動く。

 はい、と、頷く。

「何処に行くんじゃ?」

 ウキウキと言った様子で尻尾が揺れていた。

「ちょっとお買い物で、町に」

「ん? 米でも買うのか?」

「いえ、そっちは毎日の買い物で間に合ってます」

 学校の帰り道で10キロの米袋を買ったとしても、特に困ることは無い。

「遠出か? 車でも出すか?」

 ウキウキした様子で移動手段を提案してくる。

「いえ、其処まで遠く無いです」

 脳裏に、サプライズとか隠して後からとか基本迷惑なだけだからと、昨日琥珀と紬に説教された事を思い出す。

「揃いの指輪でも買おうかと」

「ん?」

 ああ、そかそか、と言った感じに納得した様子で頷かれた。

「其れだったら、安めの石無しので良いぞ?」

 そんな事を言いながら、スマホで店の候補を探し始めた。

 何だかんだでノリノリである。

 喜んでくれそうで何よりだなと思って居た所で。

 ピピピピピピ

 不意にスマホが鳴った。

 メールを確認すると、リクジンからの緊急呼び出し要請の文字が浮かんでいた。

 文面を確認すると、今日、今直ぐで、スマホのアプリをお仕事モードにした時点で迎えに来ると言う事らしい。

「あの・・・・・すいません・・・・・・・」

 葛様に思わず謝りつつ、自分のスマホの画面を見せて、メールの内容を伝える。

「ああ、其れならしょうがない、デートはまた今度じゃな?」

 あっさりと納得した様子で引き下がる。

「すいません・・・・」

 思わず平べったくなる。

 其れを合図に、スマホのアプリをお仕事モードに起動して、身支度を整える、何時もの戦闘服、活動的なミニスカートで、髪の毛をポ-ニーテール状にまとめて、歯を磨いて、カラーリップを塗る。

 モノの10分ほどで支度を終え、外に出ると、丁度迎え、一三さんの運転する車が到着した。

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