第45話 帰りの車の中

紬視点

 無事きさらぎ駅の怪異から生還したが、車に乗せてもらったとたん、いきなり疲れが表面化して、意識が無くなってしまった。

咄嗟に先程迄の命綱であった陽希さんの手を握りしめていたのは、無意識だったのか意識的だったのか・・・・



一三視点

 後部座席で要救助者、紬さんが目を閉じて寝息を立て始めたのを確認する。

「眠りました?」

「ですね」

「良く連れ戻せましたね?」

「この人、紬さんが強かっただけです」

「一般人が異界化した世界出ずにパニックに成らずに活動できたのなら上出来です」

 実際問題、直ぐにパニックになって、手を振り解いて走り去った挙句に行方不明や、振り返らずの禁忌に触れて帰って来れなかった例は枚挙にいとまがない。

 帰って来ても中身が違うや、中身と言うか自我が壊れて抜け殻も同様だ。

「運が良かっただけです、最初から一緒に居られましたから」

「不幸中の幸いですね」

「はい」

「因みに、此処から人里まで車で3時間です、寝といても良いですよ?」

 割と本気で山の中だ。

 更に言うと、管狐を走らせて色々調べさせたが、この二人が歩いていた場所はトンネルから山から禁足地で、人嫌いの神のいる地だ。

 下手に手を出した場合や、下手に気づかれた場合は、無事では済まなかった所なので、本気で九死に一生を得た状態で有る。

「大分遠いですね……すいません、少し眠らせてもらいます」

 陽希が遠い目をした後で、そのまま目を閉じて寝息を立て始めた。

 恐らく、異界化した場所に長く居たせいでかなり体力を消耗していたのだろう。

 しかし、用心深く私が本物か確認したは良いが、その後の動向を寝ずの番出来無いのは減点だろうか?

 このまま私が予定と違う場所に行ってしまったら為す術もないのだから。

 まあ、未だ若いのだし其処まで要求するのも酷というものか。

 そんな事を考えつつ、停まった時にルー厶ミラーで二人の寝顔を確認する。

 どっちがオスやらメスやら見分けがつかない。

 そんな事を考えて内心で吹き出す。

 予め書類を観ていて、女装による双性状態で魔除けと呪い除けをして居ると言う前情報が無ければ、割と間違えそうだ。

 しっかし……

 仲良さそう?

 二人揃って真ん中に向かって倒れて頭と肩がぶつかっている。

 ついでに手も繋いだままだ。流石に指まで絡んでいたりはしないようだが。

 百合カップルモドキ?

 ラブラブモード?

 ドウデモイイデスケドネー?

 内心で呟いて運転に集中する。

 助手席に居る管狐が、ヤレヤレと言った様子で首を振っていた。

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