第44話 お迎え

 先程迄とは違う、明るい廃線の上を歩く、視界の隅を白いオコジョの様な物が追い抜く様に走り去っていった。

「コレで帰れます?」

「異界は抜けたね」

 何処かほっとした様子だ。

 ビー ビー

 車のクラクションの音が響いた。

 音の出所を探すと、廃線の横を並行するように道路が通って居て、其の道路に一台の白い商用車が停まって居た。

「知り合いですか?」

 恐る恐る聞く。

「迎え呼んでたから、多分それ」

 陽希さんが多少足早に近づくと、車の運転席の窓が開いて、女の人が顔を出した。

「お久しぶりです、三門陽希(みかどはるき)さん、一緒に居るのは結城紬(ゆうきつむぎ)さんで間違いなく?」

 黒いスーツを着た女の人だった、何故かハンドルと一緒に竹筒を握って居た。

「はい、お久しぶりです、一三(かずみ)さん」

 どうやら知り合いと言うか、仕事上の付き合いのある人らしい。

「所で、今何時だと思います?」

 少し棘のある調子で時間を確認しろと促して来る。

「えっと・・・」

 陽希さんがスマホを取り出す、因みに、私のスマホは既に電池切れでウンともすんとも言わない文鎮状態だ、陽希さんのは一足先に電波遮断にしてライトだけしか使って居ないので、ある程度電池が残って居るらしい。

「ありゃ?」

 画面を見比べて変な声を出した。

「巻き込まれて丸一日、連絡から一晩経ってます」

 若干棘のある調子で解説してくれる。

「すいません、お待たせしました」

 陽希さんが平身低頭と言った調子で頭を下げた。

「ええ、結構待ちました、まあ良いんですけどね?」

 先程から刺々しいが、此方に敵意は無さそうだ。

「これ以上遅れたら、二重遭難扱いで、救援呼ぶ所でしたから、下手するとあの柱(ひと)が出てくる所でしたよ?」

「間に合った様で何よりです」

 二人で誰かを怖がっているのか、苦笑を浮かべて居る。

「まあ、二人共ご無事で何よりです、学校の方には交通事故に巻き込まれて検査入院して居ると言う事で連絡してあります。ご安心ください」

 安心らしい、どこら辺が安心なのかアレだが、学校で言い訳しなくて良いのは楽で良いかと納得する。

「所で、私達の活動内容的に、一般市民の理解は得られませんので、SNSでの公表等は止めて頂きたいのです、貴方の書く薄い本のネタとして元ネタ無し扱いのフィクションとして書く分には良いですけどね?」

「はい、其処は弁えています」

 内心でギャーバレテルと叫びつつ。弁えていると頷く。

「そんな訳で、後で色々書いてもらいます、陽希さんも報告書お願いしますね?」

「「はい」」

 つい二人で返事が被り、顔を見合わせてくすりと笑った。

「では、乗ってください、今度こそ人里に帰りましょうか?」


「っと、その前に失礼します」

 車に乗る前に、陽希さんが手に持った胡桃を一三さんの頬に押し付けた。

「何です?」

 流石に空気が凍り付いた。

 イラっとした調子で動きを止めている。

「本人ですよね?」

「今更何やってるんですか?!」

 思わず叫んだ。流石に失礼だ。

「この怪異、初代は車で連れ攫われるまでセットだそうなので、念の為」

 確かに其処まであると話した。

「気が済みましたか?」

 ぴきぴきとして居るが、流石の大人らしく、理性的に対応して居る。

「はい、失礼しました」

 陽希さんが手を引っ込めて、深々と頭を下げる、大丈夫らしい。


 こうして、私達は無事人里に帰って来た。



 追伸

 マヨイガも付けるか迷ったけど、既に結構長いのでこの辺で決着。

 前回からちょろちょろしてるのは一三の管狐、見た目的には赤い眼をした冬毛のオコジョ、この人はクダ使い、戦闘系では無く情報処理援護系、見鬼のスキルも管狐由来、いざと言う時は切り離しも出来るので、こう言った危険地帯でも使用可能。ワンクッション置けば大丈夫理論です。管狐のイメージは地獄先生のアレに引きずられました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る