出来損ない勇者は、歴代最強魔王となって妹を救う。~次々に求婚され、魔族っ娘ハーレム状態に!?~
しんみつ
プロローグ
妹は企む①
二十年前の日本に、このような建物はなかったらしい。
IDカードを差し込むと、三番のドアが
ドアを
中央の台座に薄紅色の
そのまま下ろし立ての高校の制服、シャツ、靴、靴下、パンツを脱ぎ、中央の台座に乗せていった。
一糸
頭上の電子パネルの指示に従い、次の部屋に入った。
部屋全体に緩やかな傾斜があり、中央が
天井から
システムが呼吸器の装着を確認すると、四方八方から霧状の洗浄液を噴射した。それと同時に呼吸器が肺の中の空気を吸い上げ、新たな空気を送り込んできた。肺の中も洗浄しているのである。
一通りの洗浄を終えると、用意されたバスタオルで体を拭き、水色の施設着を
ここまでやって、ようやく新型
「
アナウンスで呼ばれたので、俺は五番の受付カウンターに向かった。
対応してくれたのは
「えっと、竜園
琴音とは、俺の妹である。現在は十二歳、三年前からこの施設に入っていた。
貴崎は俺が用件を伝える前に、タッチパネルを操作していた。
「はい、二〇四号室の竜園琴音さんですね。今は屋上に居るようです」
患者は腕輪を
「あー、またあの場所かな。ありがとうございます」
保護施設は三階建てである。エレベーターはあるけれど、物資運搬用である。俺は階段を使って屋上まで上った。
屋上はドーム状のアクリルガラスに
各部屋にも窓はあるが、外気を取り込むわけにはいかないので、当然
屋上の北側に置かれた白いベンチに、見慣れた小さなシルエットが腰掛けていた。
隣に腰掛けているのは友達の
施設着を身に纏っている俺の方が患者のような出で立ちだった。
新型黒死病の発症者は、患者といっても洗浄の行き届いたこの施設内では、健常者と変わらぬ生活を送っていた。
ただ、治療法が発見されるまでは、この小さな籠の中から出られないだけである。
「よう」
「あ、兄さん。今日は少し早いね」
俺が声をかけると、琴音はぴょこんと肩を跳ねさせ、笑顔を添えて振り返った。
「こんにちは」
美潮もぺこりと頭を下げた。
美潮は少し人見知りなところがあったが、今では警戒心の「け」の字も感じさせない人懐っこい表情をしていた。
二人はよく髪型を一緒にして遊んでおり、今日は髪の一部を三つ編みにして、それを後頭部のところで結っていた。
「何だ気付いてなかったのか」
このベンチからであれば、ちょうど高校からこちらへ向かってくる俺の姿が見えるのである。
「だって、同じような格好の人がいっぱい通るだもん」
「
「美潮ちゃんは勉強できるし、きっと着られるよ。四年後なら退院できているだろうしね」
新型黒死病が人類の脅威となって早二十年、治療法は未だに確立されておらず、発症した者は施設から出られないというのが現状だった。つまり、俺の言葉は完全な気休めだった。
かつてコンビニエンスストアよりも歯医者の方が多いといわれた時代もあったが、現代においては新型黒死病の保護施設が群を抜いて多かった。
「はい!」
美潮は無垢な瞳を
「兄さん、日曜日のお食事会だけど、夢海君も呼べるかな?」
「ああ、今度顔を合わせた時に聞いておくよ」
「忘れないでね」
「ところで、その食事会の料理は二人が作るんだろ? 食材の発注とか手伝わなくて大丈夫か?」
「兄さんに任せたら、どんな料理が出るかわかっちゃうでしょ!」
琴音はやや目を吊り上げていった。
「別に俺はそれで構わないぞ」
「ダメったらダメなの! ね、美潮ちゃん?」
「はい。こればかりは秘密の秘密です」
「ねー」
二人は何が
俺は厳荘高校の学生寮に住んでおり、日曜日と祝日以外は朝昼晩と食事が用意されていた。なので、日曜日や祝日は施設を訪れて、琴音たちと一緒にご飯を食べるようにしていた。
施設の食事は外の物と比べると全体的に薄味だが、琴音と一緒に食べているとどのような
ちなみに、琴音が手料理を振舞いたいと言い出したのは、今回が初めてのことだった。
その後、高校の様子や施設での出来事など、他愛ないやり取りを交わしていると、あっという間に学生寮の門限が迫ってきていた。
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