また、夢を見ていた。昔見たテレビ番組のようだ。家族が好きな、超常現象を最新の科学で説明する番組だ。黒髪をぎちぎちに七・三に分けた神経質そうな物理学教授が語っている。


「最近の研究では、幽霊について新しい解釈が生まれています。人間が感知できる感覚、これを五感と言いますね。


視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚。実はついこの間、五感に一つ感覚が加わったんです。なんだと思います? 」

出演者はなんだろう、と首を捻る。


「とても意外なものです。ちょっとわかりづらいかも知れませんが。すなわち、『磁覚』です。要は磁波、磁力ですね。


磁力というと磁石や、家電製品やスマホなどのイメージがあるかも知れませんが、実は違います。無機物だけでなく、有機物、生き物も含めて、この世界の全てのものは、微細な磁波を発しています。


バクテリアなどは磁力を感知する器官がありますね。このことは、以前から物理学や生物学の世界では知られていました。驚くべきは、人間にもそれを感じ取れることがここ最近の研究で明らかになりました。


それがどんな形で、どんな風に感じられるかはまだ解明されていませんが、磁力を感じると人間の脳波に動きがあるんですね。


それがどんな意味を持つか、今の時点ではわかっていませんが、きっと今後の研究で明らかになるでしょう。


この番組でよくおられる、いわゆる霊感を持つ人、というのはもしかしたら磁波を感じ取れる能力が強い人なのかも知れませんね」


正直、怪しい話だ。そもそもこの教授が言っていることは本当なのか? だが、何かが引っかかる。この夢はきっと俺の本能が鳴らす警鐘だ。


あの、行き交う人々全員から見える怪しいモヤ。あれはもしかしたらこの教授が言っている磁波なのか? それがこんな風に、カラフルに目視できるというのはいささか都合が良すぎるが。


だがきっと、それはこのループから抜け出すためのヒントに違いない。夢の中の俺は教授の言葉を反芻  すうしていた。


白いモヤと黒いモヤ。あの一人と一匹にしか見えない無彩色のモヤ。それにはきっと、意味があるはずだ。もし次またループがあるのなら。もっと、もっとよく観察しよう。

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