017:世界樹の迷宮

【タイトル】

世界樹の迷宮

【ハード】

ニンテンドーDS

【販売/開発】

アトラス/ランカース

【発売日】

2007年1月18日




◆『君はこのレビューを読んでもいいし、読まなくてもいい』


皆さんは、ゲームソフトが売り切れてて店舗で買えないという光景、見たことありますか?

昔はドラクエなりポケモンなりで色々と起こったものですが、最近はなかなか無いですよね。

ダウンロード販売が出来るようになったこともあって、そもそもソフトをパッケージで買わないという人もいるでしょうし。


あぁ、Switch本体がなかなか手に入らないというのはありましたか。

けど、ソフトの方はどうですかね。

大人気タイトルでも大体はお店で並んでる場合がほとんどではないでしょうか。


私も、最近売り切れで買えなかったゲームソフトというのはなかなか思いつかないですね。

ヨドバシカメラで売り切れ御免の文字を見掛けたソフトといえば、今回の「世界樹の迷宮」が印象深いです。

もともとの出荷数が少なくて、まさかの売り切れ続出になるほどの話題になったソフトです。


あ、そういえばこのシリーズのコラボ作品「世界樹と不思議のダンジョン」(2015年)でも同様に品切れになってたなぁ…

何かと品切れに縁のあるシリーズですね…



「世界樹の迷宮」は、アトラスから発売されたニンテンドーDS向けのRPG。

コンピュータRPGの祖のひとつでもある、ウィザードリィの流れを汲んでいる3DダンジョンRPGです。

というか、「ウィザードリィが生まれた時代に立ってみる」が開発コンセプトだったらしく、随所に懐かしさをテーマにした仕様が為されています。

「〇〇してもいいし、しなくてもいい」というゲームブック調のメッセージとか、古代祐三氏によるFM音源で作られた楽曲とか。


最大の特徴は、タッチペンを使って下画面に地図を描いていくマッピングでしょう。

往年のウィザードリィシリーズのプレイヤーならば、紙とペンを使ってダンジョンマップを描きながら攻略したもの。

自分で地図を描いていくということの楽しさを、DSというハードを活かして現代に蘇らせたのが本作。

マップの壁だけでなく、アイコンやメモを置いて自分だけの地図を作っていきます。

出来上がった地図は、プレイヤー自身の宝物になっていきます。思い出という名の。

「いと、持った?」


また、久々にキャラメイクが出来るゲームとして注目を浴びたゲームでもありました。

プレイヤー自身の手で、パーティメンバー全員の職業を決めていく。

プレイヤーが作ったキャラクター達には人格が特に設定されていないから、プレイヤーに想像を委ねられます。

これも、ウィザードリィの流れを汲んだもので、初代FFなどに見られた要素のカムバックになります。


ウィザードリィと違って、日向悠二氏によるキャラクターイラストはありました。

一部の人には萌え志向だと言われたりしましたが、むしろこれのおかげでファンがついたと言えると思います。

全くのゼロから妄想を繰り広げられるほど、人間って想像力豊かではないんですよ。

というか、加齢と共に妄想力って落ちるものですからね……

ただ、キャライラストという手掛かりがあるだけで、プレイヤーの妄想は格段に広がっていきます。

本作の難易度の高さもあって、ゲーム中の強烈な思い出と共に、プレイヤーは自分が作ったキャラクターに対してついつい色々妄想してしまうものです。

色んなファンアートや二次創作小説が各所に残されていますよ。


こうしたオールドゲーマーにとって引き込まれる要素が多数あったこともあり、往年のゲーマーが買いに走ったんでしょう。

マニアしか買わないだろうという予想を裏切り、売り切れ続出という事態になりました。

それがまた話題になり、興味を持ったゲーマーが増え、多くのファンを獲得していったタイトルでもあります。



◆『そりゃあ、毒を喰らったら死ぬでしょ?』


本作はウィザードリィを意識しているというのは先述の通りですが、それは難易度の高さにも表れています。

キャラクターのロストこそありませんが、油断すればそこらの雑魚敵にもあっという間にゲームオーバーにされるほど。

ドラクエみたいに、「たたかう」連打すりゃ勝てるなんて生易しいもんじゃありません。

むしろ、たとえ雑魚敵だろうがスキルを全力で使っていけという難易度です。

そして、TP(スキルを使うのに必要なポイント。MPみたいなもん)が切れる前に街へ戻れ、引くべき時はちゃんと引け、というバランスになっています。

もうちょっとだけ進みたい……そんな欲をかいて死ぬというのは、このゲームではよくある話です。


ステータス異常が極悪なことでも有名ですね。

特に、毒について衝撃を受けた人は多いでしょう。


RPG作品の毒って、HPの1割くらいのダメージをじわじわ食らうというイメージではないでしょうか?

しかし、このゲームで最初に毒を喰らった時に、HPの8割くらいをいきなりドコォって喰らった時の衝撃のデカさと言ったら……

大抵の人が最初に毒に遭遇するのは、地下1Fの花畑のイベントでしょう。

これはもうシリーズの恒例行事と化すほど、プレイヤーに衝撃を与えたのでした。


実態はプレイヤー側のHPの割合ではなく、敵のパラメータによって毒の強さが決まるというもの。

それがたまたま、8割削るくらい強かったっていうだけです。

そんだけ雑魚敵が強いというだけです。

ちなみに、スタッフがインタビューでこの件について聞かれたところ、「そりゃあ毒を喰らったら死ぬでしょ?」と返したとか。


物語終盤に出てくる睡眠を使った敵も強烈でしたなぁ……通称、「エトリアの悪夢」。

わざわざパーティ全員を眠らせてから、全体攻撃を繰り返すという恐ろしい相手。

何の対策もしなければ、手も足も出ずにあっさり死ぬという凶悪すぎる構成です。



あと、世界樹の迷宮と言ったら、F.O.Eと呼ばれる敵が出てくるのも大きな特徴ですね。

「まっすぐ行ったらF.O.E!オレンジもやもやF.O.E!」


F.O.Eはマップ上で視認できる凶悪な敵のこと。フィールド・オン・エネミーのこと。

プレイヤーが1歩動くたびに相手も1歩動きます。

初遭遇の時点ではまず勝てない凶悪な強さに設定されていて、基本的に避けて進むべき相手とされています。

昨今のRPGにありがちな、とりあえず全部倒していけばいいなんて思考で行くと、1ターン持たずに全滅もあり得ます。

相手の動きは決まっているので、よく観察してうまく避けましょう。でないと死、あるのみです。

鹿型とカマキリ型のF.O.Eは、最序盤に出てくるのにプレイヤーのトラウマ級です。


私個人の目安ですが、オレンジのF.O.Eは大体2つ上の階をクリアできる程度、赤いF.O.Eは4つ上の階をクリアできる程度のレベルでやっと倒せるくらいという認識です。

勝てるようになったら、プレイヤーも強くなったと実感できるものです。



ボス戦もいずれも強烈な強さを誇っています。

毎回、装備もスキルも出来るだけ鍛えて、アイテムもフル活用して倒すような死闘の連続です。

ただ、ボスはある程度時間が経つと復活するので、レベルアップのお供に最適です。

敵が強くて進めない!そんな時は前の階層に戻ってボス相手に修行するのです。

スノドリさんちーっす!



とまぁ、とにかく敵の強さが際立つゲームです。

しっかり戦術を立てて、ヒリヒリするような緊張感のあるバトルを味わえるゲームですね。


発売当時は、ネット上では掲示板が全盛期の頃。

難易度の高いゲームのスレッドに、自分の死に様を書き込んで皆で共有するというのが定番でした。

大抵は「死んだらageるスレ」となるのに、最初にスレッドを立てた人が「hageるスレ」と書いてしまったことから、世界樹シリーズのファンの間では全滅することを「hageる」と言ったりします。

公式にも認識されていて、後のシリーズでは文字入力の予測変換にも出てくるくらいです。



本作はゲーム開始時点で7つの職業のキャラクターを作れます。物語が進むと更に2つ増えます。

もちろん好きなようにパーティを作っていいのですが、クリアを優先するならパラディンとメディックは外せないでしょう。

敵の強さが、パラディンのガードで守ることを前提にしたとしか思えない強さになっていますからね。

あと、回復役のメディックがいると安定感が違います。


そうそう、ゲームオーバーになった時はそれまでに描いた地図を保存するか聞かれますが、このシリーズ第1作に限っては保存しない方がいいです。

描いた地図のデータと、実際に踏破したデータが別になっていて、本作ではゲームオーバー時は踏破データが保存されません。

なので、表面上はちゃんと地図は描いたのに、そこを歩いてないから実は描いてない扱いになってしまうという事態に陥ります。

地図の踏破率がいつまでも埋まらず、一度描き切ったはずの道を延々と歩き回る羽目になりがちです。

後のシリーズでは改善されましたけどね。


君はこのアドバイスに従ってもいいし、無視しても構わない。



◆『想像力を鍛えよ!』


私はといえば、パラディン・ダークハンター・ソードマン・メディック・アルケミストというパーティで最初から最後まで進みましたね。


私は基本、一度エンディングを見るまでは攻略サイト等をなるべく見ないようにしています。

本作でも、表向きのラスボスである第5階層ボスをクリアするまでは攻略情報を仕入れてなかったんですね。

おかげで一度クリアするまで、レンジャーを使った素材採集組を作るという発想に至れませんでした。

どうりで資金難に陥るはずだ。


これもあって、後のシリーズ作品を遊ぶときはとりあえず全職業のキャラをまず作るようになりましたね。

ええ、このシリーズにもハマり、シリーズ作品一通り遊んできております。


ただ、本作はクリア後の隠しダンジョンである第6階層の最後まで到達できませんでした…

地下28階だっけか……トゲだらけの部屋が凶悪すぎて地図を埋めるのが億劫になっちゃったんだよね。

敵もやったら強いしさ……雷しか効かないとか。




ただ、私の中で世界樹シリーズは結構存在が大きいもので。

何を隠そう、本作のキャラメイクがきっかけで色々二次創作を始めたのが、本格的なモノづくりの第1歩でした。

自分だけのキャラを想像する楽しさにハマったんですよね。

本作をプレイして以降、しばらくはキャラメイクが出来るゲームを色々買い漁り、そのたびに色んな妄想をして物語を書き留めたりしてたんですね。


今連載している作品の主人公も、大元を辿れば本作をプレイした時に妄想したキャラが元になっています。

なんだかんだで、主人公チームを5人にしてしまうのは世界樹シリーズの影響がデカいでしょうね。


今でもアイディアが尽きたり、妄想力が無くなったなぁと感じたら、世界樹シリーズをやり直して妄想力を鍛えなおすことがあります。

物書きとしての覚醒を促してもらったシリーズですからね、いつもお世話になっております。

ただまあ、なかなか物書きとしての自信はつかないですが。

舞台設定ひとつとっても、本作を遊ぶとまだまだだなぁって思わされます。


本作の第5階層に到達したときの衝撃はなかなか忘れられないです。

ああいう世界設定を考えるのは、やっぱアトラスだよなーって思います。



…まぁ、〇〇崩壊はアトラスのお家芸ですし。

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