第3話 今明らかになる衝撃の事実

 どこまで行くんだろう? 遠いのかな?

 長い廊下を歩きながら、ショウは恐る恐る先を行く芽里に声をかけた。


 「あのぅ」

 「何?」

 「目的地? 遠いんでしょうか」

 「この廊下の突き当りの大会議室までね、ちょっとかかるわ」


 遠い? まだ時間あるのか、それなら、と今度はシュウが口を開く。

 「あのぅ」

 「何!?」

 「あの、俺、前からギモンに思ってたいんですけど」

 「何を?」

 「俺、シェイバー名乗ってますけど、実際には削りに行ったりしてないですよ。こいつはセイバーだけど、俺たち、実際にはやってること、一緒ですよね。なんででしょう?」

 「あら、知らなかったの? 昔はちゃんと分担があったのよ。魂を増加させる、削減させる係がね。だけど、この増減業務は、随分前にほぼ自動化されてね」

 「「自動化??」」

 「そう、知っていると思うけど、魂の増減は一定のルールに従って、本人のもとに出向かずに行われているわよね? この増減作業を行えるシステムが、何十年か前にできたのよ。以前はねえ、条件書と首っ引きで、それぞれの人間の魂の増減量を決めて、それに基づいて、増減を分業で行っていたの。

 システム導入後は、条件入力さえしておけば後はお任せ、機械が自動で魂を増減させるようになったの。だから、今、残っているのは、魂増量者への特典付与告の仕事だけ。そうなるとセイバーもシェイバーも、やること同じになるわよね」

 「自動化…による業務の削減…だと?」


 「本当に、合理化が喫緊の課題だったの。何しろ人間が増えて、作業量が半端なかったからね。あのシステム導入は、本当に画期的だったのよ。これでもう毎日残業しなくていいって、多くの先輩たちが感涙に咽び泣いたんだから。報告書のみでいいだなんて、楽すぎるって」

 「ええ? じゃあ、自動化以前は、魂の削減は本当に手作業だったんですか?」

 「もちろん手作業だったわよ。『削り7年、足し10年』なんて言われていてね」

 「「は!?」」

 「どうかした?」

 「え? いえ…。それって、“足し”のほうが難しいってことですか?」

 「そりゃそうよ。削るのは単に減らすだけだけど、増やすときはもともとの魂ときちんと融合させなくちゃだもの」

 「はぁ~…」

 「だったら、特典を与えに行くあの仕事、2人で行かなくても、セイバーが1人で行けばいいんじゃ?」

 「それじゃ俺の仕事がなくなるだろが!」

 「まあ、そうなのよね。1人でもいいんだけれど、でも、なんて言うか、慣習?」

 「慣習ですか(そこは合理化しないの)」

 「それに、1人だと、問題が起きる可能性もあるから。手心加えちゃったりとか」

 「…なるほど」


 「さ、着いたわよ。そっちに座って。静かに聞いていてね」

 「「はい」」

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