EXTRA STORY 2.
開けた扉の中から飛び出してきた女は俺の姿を確認すると迷うことなくその胸へと飛び込んできた。
そう表現すれば、この状況はロマン溢れる映画のラブシーンのようだった。
だけど俺は「心優しく正義感に厚い主人公」といったタイプにはとてもなれなかったし、多分腕の中の女にもそんな
本来なら特に好意を持っているわけでもない女に縋り付かれても迷惑なだけだと思わなくてはいけないのだろうけれど、怖かった、ありがとう、と繰り返し言い
俺は少し困りながらも、その哀愁の念に負けて彼女の身体に手を回して安心させるように後頭部と背中を撫でてやった。だけど、痩せていて固そうに見えたその身体は思ったよりもふわふわと柔らかくて、首筋からは何やらいい匂いがした。
そのことに少しだけ
ああ、俺も結局男だな。
▽
御陵先生のSOSを受けて彼女の家まで救助にやってきた俺は、胸に縋り付いて泣きじゃくる先生を一度自分の車の中へ誘導した。彼女の泣き声を聞いてアパート内や近隣から野次馬がちらほらと出だしたからだ。恐らく先生自身はそのことに気付いていないのだろうが。
俺は並み居る
そこからしばらくはお互いに無言だった。俺は適当に車を流しながら先生の様子をうかがう。彼女は最初こそぐずぐずと鼻を啜っていたが、そのうちに車の揺れに誘われたのだろうか、うとうとと眠そうにしだした。そういえば彼女の目の下には薄黒く
「眠いんだったら、寝てても……」
「え、いえっ! 大丈夫です!」
寝ててもいいけど、と言おうとした俺の言葉を途中で
……ああ、なるほど?
「じゃあ、何があったのか……聞いてもいいか?」
俺の問いかける声に、彼女は身をぎゅっと小さく丸めて覚悟をするような間を設ける。そして、俺を見ることはしないで真っ直ぐ前を見ながらぽつりぽつりと語り始めた。
それは、俺にとっては単なる答え合わせだった。彼女の話を聞く限り、俺にとって
彼女は一通り話し終えると、また泣き出しそうな顔でようやく俺を伺うように見た。
「こんなこと、話しても信じて貰えるか解らないですけれど……本当なんです! 今もまるで車の窓に何かが張り付いていて私を監視してるんじゃないかって思うくらい……視線を感じるんです」
彼女の必死の主張に、俺は目を伏せがちに前を見据える。道の緩やかなカーブにゆっくりとハンドルを切りながら、今後のことを考えた。さて、まずはどうしたものだろうか。
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