コンビニでの盗み
数年前、
渋谷の繁華街を
「ねぇ、そこの君、うちらと組まない?」
急に声をかけられ、
慌てて、帆波は「いいよ」と返事した。
その日から、女子高生らとは一定の場所に集まるようになっていた。
「タバコ吸わない?」と言われ、未成年なのにタバコを吸ったりして、受験勉強の事は忘れ、快感に溺れていた。
そんなある日、いつもとは違う場所に金髪のお姉さんがいたので、走ってその場所にいった。
金髪のヤンキー風のお姉さんの名前は
学校では髪を染めてはいけない為、遊ぶ時だけ家で軽く染めているらしい。
いつもとは違う場所とはコンビニの前である。自転車等が置かれている目の前だ。
帆波がなぜその場所にいるのかと聞いたら、「え?バレずにどれだけ商品を盗めるか試してみたいじゃん?」と返ってきた。
一瞬、驚いたような顔を見せ、予想をはるかに越えた言葉に帆波はその場で立ち
「ビビってんの?正気で?こんなのこの世界では普通だよ」と砂利は言った。
他のみんなも「バレなきゃいいんだよ」とか「捕まんなかったらラッキーじゃね?」とか言ってきた。
その場の流れで帆波は「じゃあ、わたしもやるー」と言った。
帆波以外は全員中学生だ。制服姿で黒いロングスカートを
そして、夜9時を過ぎたら、ヤンキー集団(?)は店内へと入った。
最初に何を盗むか決めておいたが、要領の良さは砂利達に負けた。
帆波はお菓子などをポケットに詰め込み、手でバレるように商品を持ち、レジ側を通って猛ダッシュでコンビニから抜け出した。
砂利らは学生カバンの中に器用に入れていく。当然、コンビニに来る前から中は空だった。滑り込むように落とさないようにカバンに入れていくそぶりは、何かのゲームだったらプロ並みだ。
そして、確実に品数が残っている物には手を付けず、残り僅かな商品を徹底的に狙っていった。
なぜなら、売れ残りが多い商品だとあまり売れない商品かもしれないので、明らかに沢山同じ物を詰めていくとこの日だけまさか!?と疑われてしまうからだ。
それに同じ物を沢山食べるのには無理がある。
せっかくタダで、バレなければ買えるのだから食べないわけにはいかない。
そして、3~5分はコンビニに定住していたが、客も入ってきたので、怪しまれるかもしれないと踏んだのか、砂利達は店から出た。
そして、帆波は店の前で待っていたので「遅かったね」と言った。
そしたら、「もっと盗んできなよ」と言われた。他のみんなも「そうだよ、ランドセルの中、詰めちゃえば?」と茶々を入れた。
帆波はランドセルを
「わたし、ランドセル持ってきてないもん」
「でも、盗むの下手すぎ」と
そんな中、砂利が「このお菓子とかシャーペンとかおにぎりとか菓子パンとかどうしよっかな~」と言った。
「こいつに食わせれば?」とメンバーの一人が言う。
「それは
「まあ、なにはともあれ、たくさん収穫出来て良かったね」
「そうだね」
この時代には防犯カメラが無かった。だから、死角なんて気にすることもない。店員にバレるかバレないかが勝負だ。
だから、この窃盗事件も帆波が中学3年生になった今でも未解決なままだ。
そして、食材や筆記用具や小物品など全て盗んだ物は帆波に手渡された。
「バレたら退学だからねーまぁ、うちも人のこと、言えないけど。補導はよく、されてるし、慣れてるから」と砂利がいじめているような目で帆波を冷やかした。
「受験勉強、頑張ってるんでしょ!こんなことしたら親とか先生に叱られるよ」と他のメンバーも助言する。
嫌みな目で帆波を女子高生全員が見下ろす。
それからというもの、帆波はこのグループには会わなくなった。
でも、盗んだ物を全部、袋に入れてくれた時、帆波は本当に嬉しかったらしい。それがわざと罪を押しつけられているとは知らずに。
盗んだことへの罪悪感も一切無かった。ただ、そこにあるのは達成感と気持ちよさと優越感と喜びだけだった。
それから4年後。帆波は明依や水音や他の生徒らにこの窃盗についてを打ち明けている。
「コンビニでタダで商品買っちゃった~」
「それ、買ったとは言わなくない?」他の生徒は真剣な眼差しで帆波を見つめる。
ちょっとドン引きする生徒や中には先生にチクった生徒もいる。
が、証拠が無いことや過去の出来事だったために注意されたりということがない。
「それでね、お姉さん達、優しいんだよ。盗んだ商品、全部くれたの、うちに。もうあの日は最高な一日だった」
「もう盗んだりしたらダメだよ。本当にね」と明依はそう告げる。
これからは帆波が過去の砂利のような高校生にならないよう自制が必要だ。
そうして高校生になった今も帆波は明依達がいるから、窃盗や喫煙や飲酒など未成年がしてはいけないことや犯罪には手を出していない。
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