本編
Prologue
照りつけるお日様と透き通った青い海が砂浜に打ちつけている情景をただただ見続けていた。
あー 私も海に呑み込まれそう。ううん、呑み込まれたい。
海の底はどうなっているんだろう。
暗い?明るい? 私は海に入ったことがないから分からなかった。
だけど、綺麗で透きとおった海だから美しい気がする。
美しい魚の群れが優雅に泳いでいるのを想像してみた。
そこはまるでどこまでも続く巨大な水族館みたいで魚のキラキラ光る鱗が目立っていた。
魚は自由なのか不自由なのか魚になれないからイメージでしか分からないけれど、
羽ばたくかのように冷たい水にゆらゆらと命が尽きるまでの長い時間泳げていたなら 私はもっと輝いていたのかもしれなかった。死にたいとは思わなかっただろう。
私はとある人を精神的に酷に傷つけることもなかったし、
私は自分に罪悪感を覚えることも
鳥になってみたい欲望で苦しむこともトラウマを抱えることもなかったはずだ。
ガラス越しではない美しい世界。一度は見てみたかった。
けれど現実はそんな綺麗な世界ではないことを知っている。
死に刻々と近づいている私に綺麗な海が優しく誘う。
「こっちへおいで」と波が呼んでいる。
「友達になろーっ」と沢山の海の生き物たちが叫んでいる。
嗚呼、飛び込んでしまいたい。飛び込んでしまいたい。
海に溶け込んだ私はどれほど美しいのだろうか。
だれか見ていてくれないかな。
もう我慢できない。
"ヒューッ ザブンザブザブ バシャッ" 激しい音がした。
飛び込んでしまった。私の
私が生きた時間は自分が止めてしまった。そう、この気持ちがそうさせたのだ。こうなるとは思っていなかったが。
私の面影を覚えている人や生きていた頃の私の記憶がある人はいないと思う。
-海以外の全ての場所に呪いをかけてしまったからだ-
私が死ぬ直前に無意識にかかってしまった呪い。
それは〈死〉を連想する全ての存在、物質的な清潔でない存在、人間にショックを与えるコンテンツ、性的なコンテンツ、
地球上の生きている存在を傷つける(目に見えないものを含む)存在全てなどを消してしまう呪いだった。
勿論、ネット上からもそれらは排除された。
当然、いじめ、無差別テロ、犯罪など存在しない。
連想もできなくなっている。
悪影響を及ぼす生物・人間も生まれず、生まれる前に死んでしまう。
純粋なこの世界を良く思う人もいれば悪く思う人もいた。
平和主義者はようやく理想の世界が生誕したと感激していたし、
とある国では戦争が終わり、多くの人々に笑顔が戻り、
あの子は「素晴らしい!」と言い、嬉しそうにしていた。
残酷主義者は刺激が足りないと残念がっていて、他にはここまで綺麗すぎると頭がおかしくなるという人がいたり、
有名な哲学者は光があるから闇が良き存在として存在し、闇があるから光が良き存在として存在する。
それなのにこの世は不自然だ。お互いが役割を果たすことで、均等を保ち、
初めて平和な世界が生まれる概念が長年、正しいと思ってきたのにそれを覆すとでもいうのか!?
この世界は間違ってる!偽りの世界で狂っているのに美しいとは思えん!と怒っていた。
やはり、人によって見え方・感じ方が違うようだ。
あなたは何もかもが美しい世界をどんなふうに思うかしら?
それじゃ、姉が自殺してから2年後の私の学園生活を話すね。
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