想いを繋げて

くじら時計

第1話

今日は東京、武蔵野の実家で


荷物の整理だ。


冬の寒い時期に


人気のない家に入ると


より寒く感じる。


「はぁ~、なんで私が…」




それは、昨日かかってきた電話からだった。


「荷物を取ってきてくれないかしら?」


かかってきた電話番号は母からだった。


「急に何?どうしたの?」


「私、施設に入ることにしたの。」


「えぇ!いつから?」


「先月からお世話になってるのよ。家にいても1人だと大変だしね。」


「なんで相談してくれなかったの?」


「私のことだしね。自分で決めれる内に選びたいと思ってたのよ。」


「そうかもしれないけどさ…」


「そうそう、それでね。荷物を取ってきてくれない?持ってくるのを忘れちゃったのがあってね。」


「私じゃどこに置いてあるのか分かんないよ。母さんも来てよ。」


「私も行きたいけど、こんな状況でしょ?施設から出るのも大変なのよ。」


「…また今度でもいいんじゃないの?」


「そうなんだけどね~。でも、早く手元に欲しいのよ。お願いできる?」


「え~。」


「いいじゃない。鍵を持ってるのは貴方だけなのよ。」


「はぁ…分かったよ。何を持っていけばいいの?」


「助かるわ~。二階に置いているのを思い出してね。いくつかあるのよ。また家に行く時には電話かけてくれるかしら。」


「えっ。いくつもあるの?私1人で持っていける量だよね?」


「たぶん大丈夫よ。」


「本当?」


「また家に着いたら電話してもらえる?よろしくね。」


ツーツーツー。





あぁ。


思い出してきたけど、


昔からそんな母だったわ。

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