10
「こんな方法で呪いをかけてやろうとしても、所詮殆どの場合はオカルト止まりで呪いなど一切発揮されないものです。ですが、例え呪いなどかかっていなくても、こうしてヒトに見立てた物を痛めつけてやれば、それを見てしまった人間に精神面で多かれ少なかれダメージを与えることができます。それが特定の誰かを指し示しているものならば、猶更です。どうですか? 穴があけられた辺りが痛む気がしませんか?」
「知らないわよ」
不調の真の箇所を探るために、いくらか鎌をかけたつもりだったが失敗だったようだ。
「おそらく夢の原因はこの人形だけではありません。次は神社です。辿り着かなければ困りごとは解決しないかと思いますが、歩けますか?」
「……行けますよ」
「箱は僕が持ちます。その様子だともはや持って歩けないでしょうから。いいですね?」
紅色は箱を背負い、二人は神社に向かった。
石碑の場所から、さらに十分程。夜は更け、街の灯りが益々届かなくなる。二人は住宅が立ち並ぶ土地の一角に鳥居、奥に十数段の急な石段と小さな社が建てられた神社に辿り着いた。
入口には鍵がかかる柵が設置されていたが、夜間にも関わらず開いていた。首領が手配して開けさせたのだろう。その前で一旦足を止める。
(――いるな)
ヒトが潜むのを察するのは紅色には難しい。だが、そうではない何者かであれば、今までの経験と『箱』の中身が持つ性質から、存在に気づくことはできる。
紅色は箱を静かに下ろし、箱を控えめに開け、それを包んだ布を剥いだ。静寂の中に姿を現したそれは――太刀だった。
「刀? ちょっと、そんなもの出したらヤバいでしょ?」
関内が動揺した様子を見せるが、紅色は意に介さずに太刀の緒を手早く腰に結わえ付ける。
「むしろ出さない方が色々と危険です。これからは絶対に離れないようにお願いします」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます