第246話 グリーン

 時代を考えたら第二次世界大戦の武器でもチートだろうけど、三百丁で三千もの兵を圧倒することはできないか。サブマシンガンのトンプソンのほうがよかったかな?


 十発も弾が入らないからすぐに弾切れ。すぐに弾を込めるが、練度はバラバラ。連携もへったくれもなかった。


 まあ、撃てるだけマシか。聖王国の兵士はばったばったと死んでるしな。


 何回かの弾交換で左右の軍が崩れ、一人が逃げ出したら陣形が瓦解してしまった。


 樽爆弾で中央軍の後方は火の海。左右の軍は瓦解。初戦にしてはまあまあだろうよ。


「ガイオーグ。一旦退いて」


「好機じゃないか?」


「まずは死体と負傷した聖王国の兵士を片付けて」


 死体は資源。野望の糧となるんだから新鮮なうちに集めないとね。


「まずは初戦の勝鬨をあげて兵士を鼓舞して。統制が取れる範囲で」


 脳内ドーパミン出しすぎて敵陣に突っ込ませないでね。


 戦った時間は一時間もなかったけど、精神的疲労は二日分に匹敵するぜ。


「聖王国の動き、しっかり見てて」


 オペレーターに任せ、作戦室を出て風呂へと向かい、たくさんかいた冷や汗を流した。


「……胃が痛いよ……」


 自分が生きるためなら他人の命を奪う覚悟はしたし、オレの命を奪う者に容赦もしない。だが、人が死ぬところを見るのは気分は悪いもんだぜ。


「ゲスならなんとも思わないんだがな」


「珍しいわね。リンが愚痴を吐くなんて」


「オレだって人だってことだよ」


 人らしく生きたいのなら人らしい感情はなくせない。まったく、ケダモノなら心も痛まないのによ。


「命令で動く立場は中途半端で嫌になるぜ」


 オレ的には命令で動く兵士はグレーゾーンに入っている。人でありながら人でないところに入ってるのだ。


 まあ、だからって情けをかけてやる気持ちは微塵もない。殺さなければ殺されるのだ、敵として葬るまでだ。


 気持ちも体もすっきりさせ、白の庭へと向かった。


 そこには捕獲(?)したワイバーンがいた。


「食費がかかりそうだな」


 廃村で見たけど、またこうしても見ても食費の心配が先に出るとか、ほんとオレって苦労性だよな……。


 ザイフルグ王国にワイバーンを世話できる者はいないが、オレの優しい弾丸により忠犬ハチ公より大人しくしている。


「リン様! これはどうしたらいいんでしょうか?」


 いきなりワイバーンが降りて来て守備兵が驚いている。うん、無理もないわな。


「ザイフルグ王国の竜騎にする。あと、イビスが調教師を連れて来るからワイバーンの世話をさせて」


 距離があるので二日くらいはかかるだろうからな。


「リン様。さすがにここでは世話はできません。違うところにしてください。糞まみれになります」


 体がデカい分、出す量も凄いか。生き物を飼うって大変だ。


「わかった。ルジュ。しばらく指揮をお願い。廃村だったバーリン村にいってくるから」


「わたし、寝たばかりなんだけど」


「戦争中にゆっくり眠れると思うな」


 腑抜けたこと言ってんじゃないよ。オレらは常に最前線にいるんだからよ。


「イビス。調教師は廃村だったバーリン村にお願い」


「了解。餌があったからアイテムボックスに入れておいたよ」


「ありがと。助かる」


 そこまで考えが至らなかった。ほんと、餌代が浮いてよかったぜ。


 近くにいたワイバーンの背に乗り、念のため優しい魔法をかけておく。獣はしょせん獣だからな。


 ……熊一匹育てられなかったからな。今度はしっかりやらないとな……。


「シルバー。あなたは幸せになるのよ」


 なんか守護天使が祈ってます。どこかにいった熊より守護対象の幸せを願って欲しいもんだよ。


「今からお前の名前はビオラだ」


「この子、オスよ」


「じゃあ、グリーンで」


「オスにだけ雑じゃない?」


 そう? 色だってカッコいいと思うけど?


「グリーン。飛べ!」


 キィィィンと鳴いて翼を広げると、魔力が噴き出した。


 ……なにか魔法的なもの出したな……?


 まあ、こんなデカい生き物が空を飛ぶんだから魔法を使っていても不思議じゃないか。


「グリーン。あっちだ。いけ!」


 せっかく空を飛ぶ生き物に乗ったんだから遊覧でもするか。このくらいのご褒美は許されるだろう。


「アハハ! 気持ちいい~!」


 空に憧れはなかったが、これはちょっとクセになるぜ!

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