第205話 迷える子猫たち
バリューサ教改め、バイドラ支部ウェルヴィーア教会が完成しました~! パチパチパチ~!
「バイドラ支部ウェルヴィーア教会って、なにかおかしくない?」
同じ日本人だったデミニオくん。言葉ポリスメンのようです。
「じゃあ、なんならいいのよ?」
「ウェルヴィーア教バイドラ支部教会とか?」
「ならそれで」
「……開祖なんだからもっと拘りを持ちなさいよね……」
まるでリリーのような突っ込み力である。厳しぃ~!
「道具は大切にするけど、愛着は持たない主義ですので」
どう違うかは勝手に解釈してもらえると助かります。オレは説明する気はございませんので。
「……あなた、本当に神に選ばれたの……?」
懐疑的な目を向けるニュー会長のマレイアさん。はっきりおっしゃる老女です。まあ、シスターミレーヌと比べたら断然お淑やかだけど。
「ウソだったらどんなに幸せか。苦労しかない人生なんてノーサンキューだよ」
「ノ、ノーサンキュー?」
「マレイア様。この娘の言葉は話半分に聞いておくといいですからね」
「理解されないって悲しいわ~」
手のひらの創造魔法じゃなく理解者を望めばよかったよ。
「邪神の使徒なら理解してくれるんじゃない?」
被ってる帽子を取って踏みつけてやる。一番理解されたくない相手だわ!
「クソ天使が。デミニオについちゃえ!」
踏みつけた帽子をデミニオに被らせる──が、弾かれてしまった。クソが!!
「不本意だけど、わたしはリンの守護天使なの。誰かの守護はできないわよ。あと、遠くに投げても戻って来るから」
呪いの人形か!? あと、不本意とはこっちのセリフだわ!
「……仲がいいのね……」
ギャーギャーとリリーとの激闘をなぜか仲がいいと解釈するデミニオ。目腐ってんじゃねーの?
「──スズ」
と、久しぶりのミカン(人工知能搭載の万能偵察ポッドだよ)が現れた。久しぶり。
「あの子たちを連れて来たよ」
手のひらの創造魔法が凄いのか、ミカンの学習能力(機能か?)が凄いのか、もう完全に自我が生まれたような感じである。口調もなんかリリーに似てね?
……神がまたなんかしたんじゃないだろうな……?
「ご苦労様。心は開いた?」
完全にミカンに任せてたからあの子たちがどうなってるか知らんのよね。
「程々にはね。ただ、人の多いところだと縮こまっちゃうかな」
獣か。いや、獣人だったな。
教会に入って来た獣人──オルレカと言ったっけか? 猫系の獣人で猫耳とシマシマしっぽがプリティーだこと。
オレはケモナーじゃないが、あのシマシマしっぽはちょっと撫で撫でしたい。どうやらオレは猫派のようだ。
……ジェスたちのしっぽも撫でさせてもらったが、オルレカのほうが撫で撫でしたいと思ってしまうな……。
「こんにちは。ボクのこと覚えてる?」
放置していたオレのセリフじゃないけど。
「……うん……」
六人の中で年長(おそらく十二歳くらい)の男の子が返事をした。
ショタな御腐人がヨダレを流して追いかけそうな美少年だな。他の子たちも美少年美少女ばかり。愛玩として捕まってたのかな?
「ミカンからは自分の立場や状況は聞いてると思う。ボクはウェルヴィーア教のシスターとしてあなたたちを救ったけど、あなたたちの行動を縛るつもりはない。いきたいところがあるなら自由にしていいよ。旅立つための準備はしてあげるから」
もちろん、そうしないのはわかってて言ってます。これはこいつらの自主性を──いや、こいつらに選ばせた形にしたいだけ。自分たちで選んだってな。
「あ、あの、おれたちをウェルヴィーア教に入れてください! お願いします!」
「あなたたちが望むなら神はあなたたちを祝福をもって受け入れます。ようこそ、ウェルヴィーア教へ」
微笑みをもってオルレカの子たちを受け入れた。
「獣人でもいいの、ですか?」
「神の目から見れば獣人も人も等しく同じだよ」
オレらは人として生まれたが、選ばれた中から獣人や亜人に転生させたのもいるはずだ。この世界にはたくさんの種族がいるんだからな。
「あなたたちは神の子。子を守り導くのがウェルヴィーア教の役目。ウェルヴィーア教の信者になったのならあなたたちもそうあるべく行動しなさい。あと、ウェルヴィーア教はケダモノを許さない。人の形をしていてもしていなくてもケダモノには神の雷を降らせるんだよ」
オルレカの子どもたちに聖紋を渡した。
「ウェルヴィーア教の信者なら人として恥じぬ生き方をすること。決してケダモノになってはダメだよ」
ミカンにでも習ったのか、両手を組んで両膝を床につけて祈り出した。
「神の子として人を守り導くことを誓います」
お、そのフレーズいただき。ウェルヴィーア教のお祈りの一つとさせていただきます。
「あなたたちの誓い、きっと神の耳に届いていることでしょう」
リリーの耳を通してな。
「神の子らに祝福があらんことを」
手のひらから謎のキラキラを教会内に降らした。迷える子猫たちをオレの手駒とするために、な。クックックッ。
「……一番のケダモノはあなたじゃない…」
黙れ、堕天使めがっ!
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