ウェルヴィーア~邪神と戦えと異世界に放り込まれたオレ(♀)の苦労話をしようか
タカハシあん
第1話 異世界転生
ハイ、異世界転生です! 誰がなんと言おうと異世界転生なんですぅっ!
なに切れ気味に言ってんの?
そりゃ切れもするわ! 異世界転生だよ? 夢と希望の異世界転生だよ? 神様に世界を救ってと言われたらアガルでしょう。でも、『手のひらの創造魔法』なんて言う欠陥チートでサガッたよ。魔力が人並みでドン底よ!
それでも創意工夫でなんとかなる。これでも知恵は回るほうだ。余程の環境でなければイケる! 自分を鼓舞したよ。
でも、生まれた先に特典はありませんでした。それどころか減点でした。女の子に生まれちゃいました!
自分が生まれたところは街道沿いの町で、中心部から離れたところのボロい一軒家。約八畳間くらいで風呂もなければトイレもないと来たもんだ。唯一の自慢は川が近いこと。食えない魚が空きっ腹に響くぜ。
さあどうよ? これだけ聞いてまだ異世界転生に夢や希望を持つことはできるかい?
できると言うヤツは耳をかっぽじって聞きやがれ。その純な心を汚すがいい。リアルってもんを教えてやるわ!
うちは母子家庭。かーちゃん、ねーちゃん、オレの三人家族。とーちゃんは死んだとかーちゃんは言ってたが、ねーちゃんによれば女を作って出ていったらしい。
それがなに? と思うヤツは童貞クソ野郎だ。ファーなクーにユーしちまえや!
異世界転生っつたらヨーロッパ風なところだろうが。文明も遅れてるのがお約束だろうが。魔物とかいちゃったりするだろうが!
で、そんはところで生きることを想像してみろや。女子どもが生活することを考えろや。小さな畑しかない暮らしで生きていける知恵を見せてみろや。
どう考えても詰んでるだろう。終わってるだろう。そんなことはない。一発逆転ホームランはあるって言うなら示してみろや。
だが、人とは逞しいもの。追い詰められたらなんでもする生き物。うちのかーちゃんも頑張っちゃったわけよ。もっともありきたりな方向へとな……。
察しのいい君ならわかるだろう。わからないヤツは去れ。自分の殻にこもって楽しい夢だけ見ていろ。心が砕けそうな三歳児からの忠告だ。
二人の子どもをかかえて生きていく。女は弱し。されど母は強しとはよく言ったもので、我が母上様は夜の町に立ったわけですよ……。
街道沿いの町なので、小さいながらアハーンでウフーンな店はある。素人が専門職に勝てるワケもない。
「ちょいとそこのお兄さん。わたしと楽しいことしない?」
二人の子持ちの女にそう言って引っかかるバカは女を知らないか、金がないか、モテないかのどれかだ。
前世でもそうであるようにこの世界でも結構いたりするのだ。
狙い目は童貞だ。こいつらは見習いなのでアハーンでウフーンな店は利用できない。だが、その日の食事分くらいの駄賃は持っているようで、アハーンレベル3くらいで巻き上げることができるのだ。
前世で言ったら千円くらいだろう。だが、貧乏なおれたちには貴重な千円。それで三日分のパン(食品衛生法を無視したようなやつな)が買えるのだ。
街道沿いとは言え、毎日のように隊商が来るワケではない。冬ともなれば隊商は来ない。じゃあ、そんときはどうすると言ったら町のオヤジどもを相手にするワケだ。
こんな時代のこんな環境ではアハーンでウフーンが娯楽だ。毎日同じでは飽きてしまう。たまには違う味をつまみたいとなるワケよ。
二人の子持ちとは言え、母上様はまだ若い。利用者には猟師もいて、肉払いをするので体つきはまあいい(猟師談な)。
繁盛してるとは控え目に見ても言えないが、おれたちが辛うじて生きられるくらいには稼いではいるだろう。
そんなアハーンでウフーンを外で聞かされる子どものキモチになってみろよ。
「オレのかーちゃん体売ってんだ!」
と自慢気に言えるか? 言ったらいじめられっ子まっしぐらだわ。いや、ねーちゃんは言われたようで町から帰って来るといつも泣いてたわ。
マジクソ。異世界転生マジクソだわ!
だが、現状に文句を言ったところでよくはならない。前世では三十うん歳まで孤高に生きた男である。酸いも甘いもかみ分けて来たわ。それと同じくらい妄想もして来たけど!
クソがクソかクソが! ナメんじゃねーぞ異世界転生! 人はそんなに弱くねーんだよ! キレた人間がどれだけの力を発揮するか教えてやるわ!
見ていろ! オレはどん底異世界転生から這いあがってやる! 必ず前世と同じくらいの生活を手に入れてやる! 世界平和などどうでもいいわ!
そうよ。一発逆転ホームランな方法はないが手段はあるんだ。前世の記憶と経験があるんだ。こんなクソみたいな異世界転生に負けてらんねーんだよ!
オレよ求めよ! 勝ち抜けオレよ。素晴らしき異世界転生にするために!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます