彼女的なカノジョに。~モブから始まる恋愛生活~
遥 かずら
第1話 モブ的なカノジョ
『せいくんを一目見た時から、可愛いって思っちゃいました。す、好きなんですっ! 名前を覚えてくれなくても、好きになってくださいっ!!』
『はっ……はぁぁぁぁぁぁ!?!?』
『初めましてと初めてなのでっ、モブで構わないですからっ! せいくんのカノジョにしてください!!』
『確かに初めまして……だけどさ、モブって……な、何で俺なの?』
『好きになるのに、理由なんて無いですっ。でもでも、今日はモブ女子扱いで全然構いません!!』
◇◇
【好き】とは何だろう……ふと考えた、その日、その時、その人の前で。
好きなものは無課金制ゲーム、負けの無い賭け、無糖の炭酸……どれもこれも好きに当てはまる。
俺が思う【好き】は、当然のことながら、楽しくて好き、イライラしないから好き、甘くないから好き……それぞれが異なりつつ、的を得た答えになっている【好き】だ。
クラスの女子はもちろんのこと、姉や母親に至るまで、道端に生えている花を見れば【可愛い】だとか、デザインや色合いが良さげなTシャツなんかに対しても、【好き】、【可愛い】を連発する。
だからだろうか、母親含む女子全般からの【可愛い】と【好き】に対して、俺は素直に受け止められない性格の男なのだ、と。
世界にはばたけ! 的な名前ではあるけど、俺の中の世界は学校の中と
無課金制バトルのいい所は、放置すればするだけ、戻った時の報酬がとても美味しいことだ。
そういう意味では、こちらが何かを求めて希望しなくても、向こう側から成長要素を促して来るという流れの中に身を置くのは、好きだと言える。
何もかもに興味を持ったことが無い、ありきたりな高校生活……それが俺の当たり前で、普通なこと。
だからだったと思う。
あんなことを言われたことに凄く動揺し、アホみたいな声を上げてしまったんだ、と。
見た目も頭脳も常に中間に位置していた1年時。
そんな俺はいつものように見知った顔、見知らぬ顔が集う2年の教室に入った。
その時、突然の告白劇が開始されたのを思い出す。
教室に入りざまで誰が同じクラスになったのかなんて、気にする余裕が無い時に、カノジョは俺に告白をして来たんだ。
見知った奴らと、一、二度は声をかけたことがある女子たちからは、冷やかしと羨望的な眼差しの両面で、しっかりと注目をされていた。
『今回は初心者なのでモブで、ごめんなさいですっ!』
『いや、まぁ……それでいいなら……』
大々的な告白を敢行して来たモブ女子は、言いたいことを言い放つとすぐに俺から距離を取って、よくある教室の風景に紛れ込んでしまった。
嘘だろ、もうどこにいるのか分かんねえよ。
名前も無ければ、ついさっき告白して来た女子の顔すら覚えがないなんて、そういう意味では名前って大事すぎる。
初めましてと初めてな俺に告白して、今日の手始めはモブ扱いとか、これは恋を始めようとしている?
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