第2話 バルセロナの強さ

現在世界最強とも言われるバルセロナの強さとは何か?


それは彼らが理想とするサッカーが「現代サッカーの盲点」を突いている。

そしてそれを破壊する為に築き上げられたチームだからである。

彼らのやり方は独自の路線を突き進んでいる。

例えば「チャレンジ&カバー」という絶対的な守備のセオリーを

彼らは「食いつきパス」で逆手に取る



バルセロナの相手チームのDFはクサビと言われる縦パスが入った時にそのボールホルダーに対して当たりに行く。

その食い付かせ役にチャレンジした味方を

カバーする為にカバーリング役のDFを1枚充てる。

それがバルセロナの狙いでその事で浮いた選手、空いたスペースに彼らは3人目となる「受け手」を狙って送り込むのだ。

その展開が早いためにディフェンスは追いつけずに段々とスペースが空いていき、綻んでいくのである。



更に彼らは通称「ニセCF」「0トップ」と呼ばれる中盤に降りてくるCFを使って

DFラインという概念を脆弱なものにしていく。

3トップの両ウイングだけを前線に残し、CFが降りてくる事でバルセロナは中盤で数的優位をつくりだす。



基本的に4バックを取るとしてCBはマークする相手がいないという放置プレーにおかれるのである。

しかし両ウイングが前残りになっている為、DFラインはその高さに合わせて設定せざるを得ない。


CBの2人が仕事ができていない。

という事は必然的にピッチのどこかで

今度は枚数が足りていないエリア、付き切れていない事を意味し、バルセロナは必ずそこを起点にポゼッションを展開してしまう。




昨季、CL決勝でこの現代サッカーのセオリーを極限まで高め、前年度王者のスターメンバーを集めたミラノを破った。

それは「現代サッカーの敗北」であり、その限界を示した試合とも言えよう。



このバルセロナのサッカーに対し、どのチームはいまだに有効な「対抗策」「解決策」を見つけ出せていない。



ただ、対抗とまではいかないが「抵抗策」なら無い訳でもない。


それが同じリーグのライバルチームのマドリードのモウゼルを筆頭とする極限まで「受け」を洗練させたサッカーである。



彼らはバルセロナのパス回しに対して一切食いつかない事で抵抗を見せる。


バルセロナが行うDFラインのパス回しは一切放置。

その代わりバスを停めたように、バリケイドを創り出し、自陣のバイタルエリアは決して空け渡さないという構えだ。


つまりフィールドのほとんどはバルセロナに譲るが、そのバス停の一角は絶対に死守するという戦術である。




しかし、どんな戦術にもメリットとデメリットがある。

そのデメリットの一つ目がファウルトラブルである。



「受け」一辺倒な姿勢と「止めるエリア」が自陣バイタルエリアという

危険と隣り合わせの地域である事から、どうしても無理に止めに行くシーンが頻出してしまう。

そして彼らのパススピードはかなり早く小刻みなため、足がかかりやすくエリア内のファウルも必然的に多くなる。




そして、もう一つは得点機の喪失である。



ボールを奪うのが常に自陣の深いエリアとなれば、当然目指すべきバルセロナのゴールまでの距離はいつも遠く、守備に多くの人員を割いているため

得点を挙げるためには「ロングパスor電光石火のカウンター」「単独での長距離突破」といった極めて困難なミッションに挑まなければならない。



世界的FWであり、単独での突破ができゴールを脅かすブラジル代表のロナウドのような選手を抱えているチームならいざ知らず、

普通のチームであればこれはもう始めから「0-0狙い」になってしまう。



更に攻撃にかかる際に走る距離が長い事と

守備に追われる時間が長いため「体力の限界」「集中力の限界」という問題も出てくる。




このように現実的に考えれば今のところこの「抵抗策」ですら精一杯というのも仕方の無いぐらいのアンタッチャブルな存在となっている。


だが。


もし、この現状を踏まえた上で真っ向から反論する男がいるとしたら、

世界中を探してもこの男を置いて他にないだろう。





「彼らとの闘い方?

バルセロナに対してボールもフィールドも明け渡すことはしない。

それは私が手入れをする庭で

自分の管理下のように

おもちゃで芝を掘り遊ぶ我が子のようだ。

好き放題させていたら私の今までの苦労がたまったものでない。

彼らに勝ちたければ大人が庭を支配し、子どもから遊び道具を取り上げてしまうより他はない。

なぜなら私たちの敷地内で彼らの自由な行動をファンの人たちは許さないだろうからね」


そんなことを言う男が世界でただ1人だけいたのであった。

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