導入フェイズ

GM:では、シナリオの導入をやっていきましょう。


 夕焼けに沈み始めるイースト・エンド。

 イースト・エンドはいわゆるロンドンのスラム街といったところ。治安は決してよくないが、独特の活気のある町。今はちょうど夕飯の買い物などで人がたくさん出ている時間帯です。


ヴァイオレット:スチームパンカーになってからまだそんなに経ってないから、物珍しくて周りをきょろきょろしてる。

圭斗:元お嬢様だったな、そういえば。

ヴァイオレット:今もお嬢様ですー!

GM:さて、イースト・エンドには自警団があるのですが、そのリーダーである“凍眼”ウィルとメンバーの若者たちが、武装してマーケット的なところを巡回しています。まあ、武装といっても木製の警棒とかですけど。ウィルさんは……さすがに蒸気拳銃を持ってるかな。

ヴァイオレット:“凍眼”ウィルはルールブックに載ってる公式NPCだね。

GM:こういう男性キャラクター大好きです。ちなみに、サンプルキャラクターの「元英雄の探偵」さんのイラストも大好きです(真顔)。

圭斗:だろうな(笑)。じゃあ、ウィルに声かけるわ。「よお、ウィル。……って、なんか物々しいな」

ヴァイオレット:「何かあったの?」

GM/ウィル:「ああ、お前らか。最近、不自然な失踪事件が増えていてな。巡回を強化しているんだ」

ヴァイオレット:「失踪事件?」

GM/ウィル:「残念ながらイースト・エンドで失踪なんて日常茶飯事なんだが、今回は妙でな。失踪した奴らのほとんどが『歌が聞こえる』と言い残して姿を消したそうだ」

圭斗:歌、ねぇ……?

ヴァイオレット:「じゃあ、ボクたちも手伝うよ。ほら、一応軍人の圭斗もいたほうがみんなも安心するでしょ?」

圭斗:「一応ってなんだよ」

ヴァイオレット:「事実でしょ?」

GM/ウィル:「助かる。人手はあるに越したことはないからな」。失踪事件は霧が濃い夜によく起こるようですね。

圭斗:ロンドンは霧の町だしな。まあ、この世界だと水蒸気の霧だけど。

GM:ということで時間は進んで、霧が立ち込める夜。先ほどの喧騒とは打って変わって、町は静まり返っています。ウィルさんが外に出ないように呼び掛けているみたいです。

ヴァイオレット:じゃあ、ボクは屋根の上をぴょんぴょんしながらパトロールしてるよ。演出だけどね!

GM:演出だからヨシ。

圭斗:サンプルキャラの「怪傑令嬢」は運動とか敏捷とか苦手だもんな。俺は普通に路地を行きながら警戒はしてるよ。

GM:では、圭斗の前にふらふらと歩く人影が現れる。イースト・エンドに住む労働者の男性です。けど、足取りは妙にしっかりしていて、どこかに向かおうという意志はあるみたいです。

圭斗:じゃあ、一応、声かけてみるか。「おい、こんな夜更けにどこ行くんだ?」

ヴァイオレット:職質だ(笑)。

GM:軍人の職質とか怖すぎるんですが……? 声をかけられても男性は振り返らずに、何かをぶつぶつ言っています。

圭斗:もう一回「おい」って言って近づいてみる。

GM:じゃあ、聞こえるかな。「ウタが……ウタが聞こエル」と繰り返しています。

ヴァイオレット:ウィルが言ってた通りだね。

圭斗:すげーその人の肩つかんで引き留めたいんだが。

GM:そうね……圭斗が男性を引き留めようとしたとき、ヴァイオレットの前にも人影が。

ヴァイオレット:なになにー?

GM:霧の中から現れたのは、シルクハットにペストマスク型呼吸補助機をつけた紳士です。

ヴァイオレット:ミスター・クロウだ!

圭斗:悪の秘密結社のあいつじゃねぇか。

GM:ミスター・クロウが「ここから先は立ち入り禁止ですよ、お嬢さん。そこの偉丈夫もね?」と言うと、霧の奥からアーマードリムっぽいスチームギアが出てきます。ミスター・クロウと労働者の男性を守ろうって意思を感じる。

圭斗:まずいな。

GM:まあ、演出なので好きにしてもらって構いませんが。

ヴァイオレット:……圭斗、下にいるんだよね?

圭斗:おう。

ヴァイオレット:じゃあ「着地まかせた!」って屋根から飛び降りたいんだけど、いい?

GM:ふぁ!?

圭斗:俺は赤い弓兵じゃねぇぞ。

ヴァイオレット:でも、圭斗って赤い髪じゃん。あ、判定いるなら振るよ?

GM:じゃあねぇ……今回は判定の練習ってことで、得意な能力値で振ってみようか。※《技能判定》ってやつね。失敗してもペナルティはないよ。


『スチームパンカーズ』の判定では、能力値+技能LV分のダイスを振り、5と6の出目の数を数えて成功数とします。

 また、6の出目があると[クリティカル]といって、6の出目の数だけ成功数に+1できます。

 逆に出目がすべて1のときは[ファンブル]といい、災厄表を2回振り、判定は必ず失敗となります。しかし、ダイスを振り直したときや出目を操作して出目が変更になった場合は無効化されます。


圭斗:なら、俺は【身体】の運動で6D。……[2,6,2,3,2,5]。5が1個と6が1個あるから、成功数は3か。

ヴァイオレット:【意志】の礼儀! 同じく6D! ……[6,5,4,1,4,6]だから成功数5!

GM:出目いいな、ヴァイオレット(笑)。

ヴァイオレット:えへへ、わーい!

 じゃあね、ミスター・クロウを見て一瞬固まっちゃうんだけど、くるっと背を向けて屋根から飛び降りる。「圭斗! 着地まかせた!」って受け止められる前提の体勢取りながら。

圭斗:躊躇ないのな、お前(笑)。まあ、軽く受け止めてミスター・クロウから距離を取ろう。「お前、後先考えずに行動すんなよ」

ヴァイオレット:「でも圭斗ってば、必ず助けてくれるよね」

圭斗:「危なっかしくてつい手が出ちまうんだよ」

GM:「いやはや、お転婆なお嬢さんですねぇ」ってミスター・クロウも屋根の上で苦笑しているよ(笑)。

圭斗:おい、言われてんぞ。

ヴァイオレット:あはは(笑)。

GM/ミスター・クロウ:「それにしても、お嬢さんは良き守護者ガーディアンをお持ちだ」

ヴァイオレット:「守護者じゃないよ。相棒バディだよ」

圭斗:「なら、もっと相方の都合を考えてほしいもんだ」

ヴァイオレット:てへ☆

圭斗:てへ、じゃねぇよ。じゃあ、俺もミスター・クロウになんか言っとくか。「わざわざお前が出てくるってことは、今回の黒幕はお前のお気に入りか?」って言いながらヴァイオレットをかばうように抱き寄せて、自分の蒸気刀の柄に手を添える。

ヴァイオレット:イケメンだぁ(笑)。

GM:なんだこのイケメン(真顔)。ミスター・クロウは「そうですよ? 今回の実験はとても面白い結果が出そうなのでね」と笑う。

圭斗:「お前らにとっては全部『実験』か。気に食わねぇな」

GM:「おお、怖い怖い。――ふふ、いいでしょう。今晩はこのあたりで」と言って、ミスター・クロウとスチームギア、それと労働者の男性は霧の中に消えて行きます。っていう感じで導入の演出は終了です。


 次は[抑圧]の処理です。

 抑圧はアビリティのコストとなります。

 プレイヤーはトランプの山札――『スチームパンカーズ』では[世界]と言いますが、3枚ずつ引いて表向きに置きます。


ヴァイオレット:スペードの2とハートのジャックと……あ、ジョーカー(笑)。

圭斗:スペードのA、ダイヤの2、ハートの7。


▶抑圧(トランプ)の種類

 黒のカード:[スチーム]

 赤のカード:[パンク]

 ジョーカー:[カラミティ]

 カラミティを引いた人は災厄表というものを振りますが、スチームかパンクの好きなほうとして使用可です。

 また、各アビリティの「X」は抑圧1枚~任意の枚数、「AP×n」は1枚~「現在の活劇フェイズの数×n」枚の意味です。

 抑圧に上限はなく、終了フェイズのときに抑圧が1枚以上残っていた場合、次のシナリオからPCを使用できなくなる可能性があります。


ヴァイオレット:え、こわ。

圭斗:悪落ちとかレヴォルトを失うとかあるな(ルールブックを見ながら)。

GM:さて、災厄表を振りましょうか、ヴァイオレットさん?(ニコニコ)

ヴァイオレット:こわいよ! ……えっと、43。

GM:『「敵役出現」。見知らぬ妨害者が現れた! 以降、[【反抗LV】の平均以下]のエネミーがそのフェイズに1人参加。戦闘不能にしない限り、メインを迎える度に実行を行い、活劇フェイズにも登場する』

ヴァイオレット:さっそく戦闘!?

圭斗:ホットスタートだな(笑)。

ヴァイオレット:戦闘ニガテなんだけどなぁ、ボク……。

GM:出目いいからいけるいける。

ヴァイオレット:えぇ……。え、敵は誰?

GM:そうねぇ……じゃあ、四足歩行のオオカミの形した警備機械にしよう。さっきの騒ぎを聞きつけたのか、霧の奥から機械のオオカミが唸りをあげて現れる。

 白兵、射撃、機甲、策略のどれかで振っていいよ。

ヴァイオレット:ワンコは好きだけどキミはやだ!(笑) 策略で振るから、7D! ……[2,2,6,6,4,6,5]! 成功数は7!

圭斗:まじで出目いいな(笑)

GM:えっ……一撃……じゃないわ、耐久値1残った。

ヴァイオレット:妖怪1足りない!(泣)

GM:いやでも、兵卒とか手下とかだと一撃で沈む成功数だよ? なんなの?

ヴァイオレット:うーん……これ、もう導入フェイズ終わるよね?

GM:はい。

ヴァイオレット:抑圧も配られてるから……5、6以外の出目を振り直すアビリティの※《スチームパンク》、使えるよね?

圭斗:あー。まあ、あと成功数1だしな。

GM:うーん……まあ、最初だしいっか。いいよね。でも、コストは消費してね。

ヴァイオレット:ありがとうGM! スチームのスペードの2とハートのJをコストにするから[循環]ってとこに置いてっと。3個振り直し! ……[3,2,5] 。よし出た!

圭斗:これで成功数は8。倒せたな。

GM:ヴァイオレットはとっさに策略を巡らせてオオカミ型警備兵を無力化した。ってところで、イベントの提示にいきまーす。


▶イベント1「失踪事件」

技能:諜報、知識

【耐久値】:2


▶イベント2「歌」

技能:諜報、統率

【耐久値】:2


残りイベント数:2

リミット:4

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