にゅうめんマン vs 悪の教団幹部(7)

その直後、根子丹はにゅうめんマンに猛烈な連続攻撃をしかけた。にゅうめんマンは顔や体を腕でかばいながら後ろへひいてやり過ごしたが、根子丹の猛攻を受けて、まったく平気というわけにはいかなかった。

《こちらも本気でかからないと危ないな。大きな怪我はさせたくないんだが》

 相手の動きが鈍った一瞬の隙を見て、にゅうめんマンは目にも止まらぬ反撃のストレートを放った。根子丹は何とか腕で受け止めたが打撃の威力にひるんだ。にゅうめんマンは相手に立ち直る暇を与えず、もう一撃強烈なストレートを見舞った。根子丹はどうにかまた腕で防いだが衝撃にたえきれず尻もちを突いた。


「確かにお前は強いが、シャカムニの加護を受けたにゅうめんマンにはかなわないのだ。今後市民に悪さをしないと約束して大人しく引き下がるなら、俺もこれ以上何もしないぞ」

 そう言ってにゅうめんマンは根子丹の説得を試みたが、そのとき、2人の戦いを見守っていた根子丹の弟子たちが急に窓の外を見てがやがやし始めた。

「おい。見ろよあれ」

「まじかよ……本物のマイケル・ジャクソンじゃないか」

 これを聞いて、わずかに注意をそらしたことがにゅうめんマンの失敗だった。その隙をついて根子丹がにゅうめんマンの腹にものすごいパンチをぶち込んだのだ。


「ぐふ!」

 なぐられたにゅうめんマンはあお向けに床に倒れた。根子丹は邪悪な笑みを顔に浮かべた。

「まんまと計略にかかったな。今のは、お前の注意をそらすためにあらかじめ弟子たちに指示しておいた演技だ。もしマイケルが外を歩いていたって市役所の4階からそれが分かるもんか。そもそもマイケルは何年も前にすでに死んでいるだろうが」

「うう……。畜生。それならなんで俺をだますのにマイケル・ジャクソンの名前を使ったんだ」

 痛みをこらえつつにゅうめんマンは言い返した。

「知れたことよ。俺がマイケルの大ファンだからだ」

「顔に似合わんミュージシャンのファンになりやがって……。もう怒ったぞ」


妙な言いがかりをつけてから、にゅうめんマンはゆらりと立ち上がった。にゅうめんマンは力が強いだけでなく超人的な打たれ強さも備えているのだ。根子丹はすぐさまにゅうめんマンに飛びかかったが、にゅうめんマンは冷静に相手の素早い動きをとらえて、胸に完璧なカウンターパンチを決めた。

「ぐぅ……」

 このカウンターの破壊力はすさまじく、根子丹はひざから床に崩れ落ちた。にゅうめんマンは倒れた根子丹の様子を注意深く見ていたが、立ち上がって反撃する気力はなさそうだった。


「……悔しいが、直接取っ組み合ってもお前にはかなわないようだな」

 床に伸びている根子丹がそう言った。意識ははっきりしているようだ。

「そのとおりだ。黙って引き下がっていれば痛い思いはしなくてすんだのに」

「何を言っている。戦いはまだ終わっちゃおらんよ」

「何だと。お前にこれ以上何ができる」

「今言ったように、直接なぐり合っても俺はお前にかなわない。そこで――」

「そこで?」

「しりとりで勝負だ」

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